なぜキャメロン・ディアスはいつも音痴なのか

◎今月のお仕事  ニール・ゲイマン作のアメコミ『サンドマン』(インターブックス)日本版に解説を書きました。
         『ぴあ』の映画オフシアター欄の隅っこでコラム連載(4/13発売号より)


3/30(月)
 GAGAで『ソフィー・マルソーのアンナ・カレーニナ』。なんかソフィー・マルソーの映画って全部「ソフィー・マルソーの〜」ってつけたくなるね。さすがソフィーで流産してもペイ中になってもあくまでも血色良くムチムチのアンナ・カレーニナなのであった。いきなりレヴィンの語る隠喩を映像化して崖からぶらさがってるところからはじまるのには参った。これって『キリマンジャロの雪』で本当にキリマンジャロの山頂で死んでる豹を写してみせたようなものかなあ。メタファーというものを理解できない映画作家。爽快であったぞよ。

 いっぺんうちに帰ってから9時、シネセゾンで『女は女である』。これってば昔、映画オタク生活を送っていた大学時代、見たかった映画ナンバー1のひとつであったことよ。でも今見るとハズカシイ。もうめちゃめちゃハズい映画でやんした。今のゴダールに見せてやりたいね、これ。椅子に縛りつけて目を無理矢理開かせて、目薬さしながら。でもまあ、誰でも20代はアンナ・カリーナに恋をするもんだからしょうがないか。

 ところで今ぼくは自分の映画人生を総括しようとしているのだが、その過程でライナー・ヴェルナー・ファスビンダーのビデオを見直しているところである。そうするともう人間の支配欲とか名誉欲とかサディズムとかマゾヒズムとか見栄とか追従とか、そういう人間として生きる上での嫌なことばかりを考えることになる。であるので、渋谷系とかのポップでハッピーな人生を送っている脳天気な奴等を見ると絞め殺したくなるのである。まあいつものことなんだけどね。で、『女は女である』のはじまる前に『カドリーユ』という映画の予告編をやっていた。

ヴァレリーの存在はもう異彩放ちっぱなしで、やっぱり少し妙でそして本当に愛しいんです。そんな彼女に甘い夢を見てる今日この頃のボクなのです
                           −−カジヒデキ

 殺す。この「カジヒデキ」って奴。


3/31(火)
 ヤマハホールで『普通じゃない』。ダニー・ボイルの渡米第一作。キャメロン・ディアスの魅力全開!みたいなアイドル映画でした。ユアン・マクレガーの方は情けなさ全開!でディアスちゃんの引き立て役に徹してるんだけどこれが本当に情けないんだよ。でもしょうがないんだ。なんせディアスって美人で金持ちでスタイルが良くて頭が切れて口がたって拳銃の腕もバツグンって役ですから。笑っちゃうよね。でもいいんだよ、アイドル映画だから。なーんて言ってますがぼくも好きです、ディアスちゃん(笑)。それにしてもどうしていつも音痴なのか。あとこの監督は足フェチだね、絶対。

 ヘラルドに行って『ピンク・フラミンゴ』のリバイバル上映について相談。また字幕監修を押しつけられてしまったよお。ポスター案など見せていただいて無責任な意見を言ったりとか。


4/1(水)
 結婚記念日。でも妻は実家に帰ってしまった。ので一人寂しく自炊とか。
4/2(木)
 インターブックスから『サンドマン』(ニール・ゲイマン)日本版送ってくる。ぼくは解説を書いています。本当のことを言うと1巻は絵的にちょっと劣るんであまりお勧めしたくはない(良くなってくるのは2巻以降)んだけど、それでも買う価値は十二分にある。買いなさい。
4/3(金)
 青山霊園でケイブルホーグの花見。ケイブルホーグの花見はいつも雨の日に挙行されることで有名だ。で、さすがにひどいどしゃぶりの中で花見をするのが何年か続いたので、ちょっぴり学習して今年は「雨天中止」になった。その知らせを聞いたとき、ぼくは絶対に雨は降らず、でも死ぬほど寒い日になるだろうと思った。で、今日だけど、あんまり寒いんで焚き火して暖をとっていました。アカデミー賞を11個とった外資系映画会社のボーナスの噂など聞き、終電で帰宅。
4/4(土)
 仕事。眠い。
4/5(日)
 仕事を片づける。花見もできやしねえ。合間になぜか出てきたJohn Normanの"Captive of Gor"を斜め読みとか。これ、今はもうすっかり忘れ去られたゴル・シリーズの第7巻。どういう話かと言いますと、この宇宙のどこかに地球とよく似ているけど地球じゃない「反地球」ゴルがある。そこは男はみんな野蛮人で、女はみんな奴隷なのだ! 地球から連れ去られた高慢なOLが野蛮人に調教されて奴隷の悦びを教え込まれるという長編調教SF(まあSFなところは全然ないんですけど)シリーズの傑作?である。アメリカでは女性団体の猛攻撃をくらって、しおしおになってしまったんだが、日本ならこんなの全然オッケーなのになあ。不遇だなあ。今何をやってるんでしょうねえ……と思ってウェブを探してゴル雑誌発見。
 で、ゴル・シリーズって全然セックス描写がないんで、これが逆に不気味なんだよね。たぶん子供向け小説の縛りだと思うんだけど、かえって本物な感じがしちゃうのだ。
4/6(月)
 ヘラルドで『チェイシング・エイミー』。コミコンで芽生える愛(笑)。なんかヲタク心をグサグサ突き刺す設定だなあ。真の意味でのヲタクのラブストーリーというのはこれがはじめてではなかろうか(たとえば『シザーハンズ』とかヲタク性をメタファーに使うものはあったわけだが)。泣けるなあ、もう。とりあえず堺は必見、と言っておこう。でも宣伝コピーは「ちょっと大胆な女の子と、不思議な男の子のラブストーリー」だって。それは違うだろう。どうも宣伝部とか字幕の人とかは「コミコン」というのがどういうものなのかまったくわかんなかったみたいなんですが、ま、どうでもいいんだよどうせ、そんなことは。ケッ。
4/7(火)
 松竹でラース・フォン・トリアーのTVシリーズ『キングダム2』。5時間の長尺だが、校正がたまってたりするんでとりあえず前半だけ見て帰る。後半は来週じゃ。それにしても驚いたのは松竹の警備体制。受け付けで試写状を見せて番号を控えられたうえで「試写会入場証」とかを渡されてやっと中に入れるのだ。そのうち写真入りIDがないと入れてくれなくなるんじゃないか?「あなたは『オースチン・パワーズ』の試写にもう3度も来ていますね。なんの用があるんですか?」とか言われたりして……それにしても松竹はいったい何をそんなに恐がっているんだろうか。
 映画はウド・キアの顔をした赤ん坊がママのおっぱいにむしゃぶりつくシーンがあまりにも気色悪かった。でも『奇跡の海』できゃっきゃ言ってる「普通の」映画評論家はこんなの見に来ないんだよね。ロボトミーされた女の子が「ウワウワ」とか言ってるし。
4/8(水)
 1時、TCCで『ユナイテッド・トラッシュ』。クリストフ・シュリンゲンズィッヒの大バカ映画。ドイツがアフリカに派兵したPKO部隊が極悪のかぎりをつくし、隊長の妻が現地の黒人の子を産むんだがその子が改造されてロケットの動力になりホワイトハウスを爆撃するというお話。何がなんだかわかりませんが、見てもやっぱりわかりません。でもバカはバカでもここまで徹底すればそれはそれでひとつの世界だ。誰が見ても絶対的に悪趣味で、絶対に良識の側に回収できないところが凄すぎる。『ピンク・フラミンゴ』が最初登場したときってこんな感じだったんではなかろうか。にしても二日連続でウド・キアの顔見るとゲップが。

 終わってから中原昌也村崎百郎、SVの編集者などと飯。なんかヴォイスで「空港特集」とかするんで、そのコメントを中原くんから取ることになっていたらしい。ぼくも飯につられてついていって、よくわからないコメントを取られる。でもメインのはずだった中原くんは「空港……空港……清水クーコ……」とか言ってるだけなのだった。   


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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / yanasita@gol.com