ゴジラ対ジョン・ウォーターズ

◎今月のお仕事  『バットマン:ダークナイト・リターンズ』(フランク・ミラー 小学館プロダクション) 5/27発売予定       


5/13(水)
 12時発の飛行機でシカゴへ……飛ぶはずだったんだが、成田へ着いてみると飛行機が欠航になっている。どういうこっちゃねん! 気がつくと3時間後のSF便に乗ることになっているではないか。SFで乗り継いで最終目的地のボルチモア到着は夜の7時過ぎになってしまう。もういきなり出鼻をくじかれている感じである。ボルチモアでは夜についていきなり運転だ。こりゃマズイね。こんなことなら無理矢理徹夜とかしないで、前日ちゃんと寝ておけばよかった。なんせ機内では寝ているつもりだったから読む本すら持ってきていない。

 BWIで車を借り、フリーウェイを時速40マイルのおばあちゃん運転しながらかろうじてホテルにたどりつく(途中、縁石に乗り上げてバックしようとしてパトカーに止められたが、こっちがあんまり情けなかったもんで勘弁してくれた)。疲労困憊。もう外に食べに行く気力もなく寝る。


5/14(木)
 8時過ぎにホテルを出発。来た道を戻ってボルチモアのダウンタウンへ。シラキュースからグレイハウンド・バスでやってくる町山を迎えに行くのだ。町山は夜行バスで9時間かけて移動、とかなり悲惨なことになっている。まあいい年をした大人がやることじゃないね。ダウンタウンまで30分。感動の再会を果たすと、とりあえずということで朝飯も食わずにディヴァインが犬の糞を食った場所へ直行する。残念ながらクソは用意できなかったので、プレッツェルをクソに見立てて頬張り、記念撮影

 あわててホテルに戻り、NYから来るカメラマンと合流。すぐにディヴァインのお墓参りに出かける。場所はボルチモアの北、ホテルの近く。ちっちゃな墓地なのでじきに見つかった。なんと墓石には真っ赤なルージュのキスマークがついていました。

 そのまま迎えのバンに乗ってジョン・ウォーターズ邸へ。もちろん住所や外観については極秘事項なのでここに書くわけにはいきませんが、ボルチモア北の閑静な高級住宅地です。ウォーターズ、だいぶブルジョアな感じ。およそ1時間半にわたりたっぷりくだらない話を聞かせてくれました。この顛末は現在進行中の極秘プロジェクト(ってバレバレですな)にて発表されることでしょう。ウンコ食べに行ったって言ったらメチャクチャ受けて、ウォーターズったらその場でパット・モーランに電話して「今ぼくの翻訳者が来てるんだけどさ、なんか君の昔の家の前に行ってきたんだってさ!」とか言ってました。あと家の中を案内してくれたんですが、見るもの全部なんだかわかる(「あ、これはひょっとしてテックス・ワトソンからプレゼントされたおもちゃですね」とか)んでウォーターズに受けまくり。生きててよかった。

 マーブル夫婦が住んでいたところに寄って帰宅。飯食って寝る。


5/15(金)
 朝飯はじゃあってんでまたダウンタウンまで移動し、『ダイナー』の舞台になったアメリカン・ダイナーで食べる。本当はきれいなボルチモアも見ておくつもりでここに来たはずなんだけど、なんだか貧乏黒人がいっぱいいてどこに行っても暗黒面。

 そのままドライヴでフィラデルフィアに向かう。フリーウェイを飛ばすことおよそ2時間で古都フィラデルフィアへ。とりあえずということで予約していたモーテルに向かうが、言われた住所にあったのは看板も出てない朽ち果てた建物で、仕事もなさそうなホワイト・トラッシュどもがひなたぼっこをしている。あまりのヤバさに即座に逃げ出し、ビジター・センターで紹介されたホテルに泊まることにした。ここはベッドルームとリビング、キチネットまでついたスイートで89ドルという異様な安さ。やっぱり首吊りがあったとかそういうことでしょうか? 残念ながら何も見られなかったけど。

 ところで、この日ぼくはMutter Museumを訪れるということもあってRe/Search特製のチンポ・ピアスTシャツを着てたんですが、それを町山が嫌がる嫌がる「俺までゲイだと思われるじゃねーかよ」とか言うんだけど、まったくホモフォビアな奴は困るよなあ。あまりうるさいんでホテルでシャワーを浴びてシャツを換える、とかしてたら美術館に行く時間がなくなっちゃった。しょうがないから(いや、しょうがなかったんですよ、あくまでも)アメリカ版アンミラとも言われている巨乳ファミレス「フーターズ」へ出かけてウェイトレスを堪能……したようなしなかったような。そしてその後は(検閲されてしまったんで以後不明)


5/16(土)
 朝一でフィラデルフィア美術館へ。と言っても時間がないので見たのはデュシャンの展示だけ。ブラックもセザンヌもゴッホもピカソも見向きもしない。ものすごく贅沢ですな。噂のデュシャン最後の作品をたっぷり覗く。それから重い荷物を背負って駅へ行き、アムトラックでNYに向かう。特急で1時間半。日本なら通勤圏と言われそうなところだ。重たい荷物をひきずって歩くのもいい加減疲れたんで、E51のホテルにチェックインしてからまた地下鉄でコニーアイランドへと向かう。ビレッジ・ボイスをひろう暇もなかった。もう飛びまわってますね。結局コニーアイランドに着いたのが3時半ごろ。たったひとつ残ったフリークショー(出し物は10個ぐらいあるんだけど、そのうち7個くらいを一人でやってる。どうもマニアの人らしい)を覗き、チンケなお化け屋敷で歓声をあげる。土曜日なので寂れはてたコニーアイランドも結構な人手である。貧乏なエスニックの親子が来て歓声をあげてるのを見ると、もうこうなんと申しますか……こういう人にとってはディズニーランドは本当に夢の国だろうなあ。「見てよ、パパ、ゴミが落ちてないよ!」「うーんひびの入ってない舗装なんて初めてみた」とかね。

 マンハッタンに戻り、町山妻と落ち合ってチャイナタウンで食事。ソフトシェルがうまかった(ちょっと塩っぱかったけど)。その後ボイスの広告につられて"Let's Kill All the Lawers"という映画を見に行く。「弁護士が世の中に不和をまき散らしている!」という宗教を奉じるニューエイジ系姉ちゃんが弁護士を誘惑しては殺していくブラック・コメディ……と書くとおもしろそうなんだけど、まるっきり学生映画でした。疲労も重なって結構寝る。


5/17(日)
 日曜日なので教会へ……じゃなくてお墓へ行く。最近墓参りばっかりしてますね、どうも。
 またしても地下鉄に一時間乗り、クイーンズのSt.Johns Cemetryへ。ここにはマフィア近代化の礎を築いたラッキー・ルチアーノの墓があるのだった。とりあえずお参りしておけばいいことがあるかもしれない。マシンガンで撃たれても死なないとか。他にもここには“ボスの中のボス”ことヴィトー・ジェノヴェーゼの墓もある。ところが地下鉄駅からおよそ20分歩いてついた墓地は途方もない広さだった。ディヴァインの墓みたいなのを想像してたら大間違い。とりあえず目抜き通りにある大きな墓のみチェックすることにした。しばらく歩くと"luciano"名の大きな墓を発見! ここだーとさっそくお参りする。しかしよく中を見るとそこはDr.Lucianoの墓だった(笑)。きっと今頃墓の中でもだえていることだろう。「ヤクザと一緒にすんな!」とか言って。

 お参りもほどほどにしてまたマンハッタンに戻ってくると、3時から49丁目の劇場でクエンティン・タランティーノが出演している芝居『暗くなるまで待って』のマチネー公演。芝居の評判はさんざんだが、タランティーノ人気のおかげで劇場は超満員。タランティーノくん劇評はさんざんでしたが、そんなに言われるほどひどいとは思わなかった。だって、演技する場面ほとんどないんだもん。最初から最後までアーとかウーとかうなってるだけなんだよお。まあ評価すべきポイントもほとんどなかったですが、それならあいこでしょう、ってよくわかんないけど。終わったあとは劇場外でサインに応じるサービスぶりでした。

 その後は海から6時間というド田舎に住む町山夫妻のリクエストに応じて日本食を食いに行く。なんかNYに来るたびに日本食レストランに来ているような気がするんですが気のせいでしょうか? NY在住の翻訳家梅沢葉子様も加えてあやしい寿司を食いまくる。


5/18(月)
 今日で町山はシラキュースに帰るというのでとりあえず打ち合わせをしたりする(なんの?)その後はいつものように本屋をまわり、イーストヴィッレジで本とビデオを大量購入。"Boogie Nights"のシナリオ・ブック他。多数なれどそんなに嬉しいものはなかったな(ならなんで買ってしまうんでしょうかねえ)。

 夜、ロウアーイーストに住むカメラマンのところへ行ってボルチモアの写真を受け取り、食事。飯を食ったのはソーホーの料理屋デ、タイビーフンとベトナムの生春巻きとインドネシアのカレーが出てくる謎めいた店。「何これ?」って聞いたら「パン・アジアン」だって。最近流行ってるらしい。

 10時からアンジェリカで"The Butcher Boy"。ニール・ジョーダンの新作で、バッタ人間に侵略されていると思いこんで近所のババアを虐殺する電波系ハイパーアクティブ悪ガキの話。アイリッシュなまりがきつくて何いってんだか全然わかんなかったけど、それでも十分おもしろかった。電波受けるところの描写が妙にチープなのにひかれる……のは『乙女の祈り』と一緒かも。


5/19(火)
 なんか後で話を聞くと昨日その気になればマジソン・スクエア・ガーデンでのプレミアにもいけたらしいんだが(なんかパニックになってるのは東宝だけで、アメリカ人は全然盛り上がってないというありがちなお話)、結局連絡つかずで駄目だったらしい。まあ、自分で金払って見ればいいことよ。え? もちろん『ゴジラ』の話よ。今日は先行スニーク・プレビュー、とはいっても最近ではすっかり興業日程に組み入れられているような感じである。とりあえず、朝一でMuseum of American Folk Artに出かける。灯台元暗しという奴だ。以前からずーっと探していたHenry Dargerの画集がここにあるのを今日はじめて知ったのだ。あわてて出かけてミュージアムショップをチェック。かなり汚れた本だが、まあ一期一会……と思いながら購入する。$60……はいいんだが、NADIFFに注文してある分がもし入荷したらどうしよう……まあなんとか……なるかな? ちなみにヘンリー・ダーガーというのはシカゴの病院で掃除婦をしていた知恵遅れの老人で、まるっきり無害な男だとみんな思っていたら、死後チンポのある少女が虐殺される一大ファンタジー叙事詩を書き続けていたことが判明してみんなを驚かせたという奴である。オレ的には今いちばん興味のあるアーティスト。読みたかったその歴史の一端を読めて満足じゃ。

 ビレッジをうろついて鞄を購入。まだ買い物するつもりだったが、いささか疲れたので早めにリンカーン・スクエアのバーンズ&ノーブルへ行き、カフェで原稿を書く。なんか日本人をやたらと見かけるんだけど……これは早めに劇場に連れてこられたものの行き場がなくて困っているゴジラ組ではなかろうか? とりあえず6時半くらいになったんで劇場へ。ロビーでばったり堺三保と出くわす。ところで堺はまるっきりの偶然だと思っていたようだが、ぼくは日本からのゴジラ組がここに来るのは知っていたわけで、その点ではなかば確信犯なのだった。で、まあ映画なんですが……とりあえずエスクァイアに書いた奴を再録しとくか。あとTVBros.、ぴあ、SFオンラインなど持っているありとあらゆる媒体で原稿を書いた。元は取ったかな。終わったあと堺、ぴあのY、映画ライターのKと会食。おしゃれな店だったが、ぼくはフォクシー・ブラウンTシャツというなんかこう嫌な感じなのであった。


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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / yanasita@gol.com