白旗上げたよ

◎今月のお仕事  『バットマン:ダークナイト・リターンズ』(フランク・ミラー 小学館プロダクション)出てます。
         『オースチン・パワーズ』完全攻略本(青山出版社)が平積みに。       


5/25(月)
 そろそろ試写にも行かないといけないかなーと思ったんで3時半に松竹、ウェス・クレイヴンの『ウィッシュマスター』。と思ったら、これウェス・クレイヴンでもなんでもないやんか。クレイヴンって製作総指揮やってるだけなの。ひでえなあ、宣伝で騙されることはあっても、試写状で騙されたのははじめてだ。そこまでして試写会に人を入れてどうする。よくわからんわ。映画は「猿の手」のバリエーションながら、あんな簡単に負けてええんか?ってくらいあっけないオチ。あれなら「さっさと宝石に帰れ」って言えば良かったんじゃないの? 最初から。
5/26(火)
 とろとろと仕事している。なんもなし。
5/27(水)
 ルータの設定についてちょっと悩んでいたんだが、なんかつまらない悩みだったことが判明。晴れてダイアルアップサーバを立ち上げる。そして夜、密かにHotLine Serverを立ち上げ、どこかの誰かとメッセージ交換をしていたと思いなせえ。で、変なニックネームを使っていたら、その意味がわかった人がいて。
「ん、これ知ってるのね」
「ハハ ぼくも柳下さんとか好きですから」
 ぎゃーやられた! 悪いことはできねえ。そのまましらばっくれてても良かったんだけど、それも嫌だったんで白状してきました。恐ろしいことだねえ。相手の人も絶句してたけど。というわけで今後は細々とサーバ運営することにしました。いやあ、やっぱ行くとこに行くと有名人なのね、オレも。
5/28(木)
 1時。東映で『不夜城』。金城人気だかなんだかで超満員である。日本資本の香港映画っていう理想的なかたちなんだけど、ちょっと監督の選択をまちがえてるのでは、という気がする。つうか、あんな話なの? オレ原作読んでない(許せ、バンドー)んだけど、評判を聞くかぎりもっとハードボイルドなんだと思ったんだが。まあ金城武では無理か。実際、たぶんこの映画の2番目の問題は主役二人で、金城はしょうがないんだけど(金城みたいな映画スターがいただけでも奇跡だ)、ヒロインがなあ。葉月が降板したのがくれぐれも悔やまれることであるよ。葉月はぴったりだったと思うぞ、この役には。ちなみに1番目の問題点は上映時間。香港映画なんだから87分にしろ。
 ちなみに椎名キッペイはなかなかよかったんじゃないかと思う。なんか村崎百郎みたいだったけれども(笑)

 江戸木と会うが挨拶もそこそこに六本木のGAGAへ急ぐ。したらまた満員で追い返されちまったよ! もう知るかこんな会社。


5/29(金)
 徳間ホールでコーエン兄弟の『ビッグ・リボウスキ』。惜しい。惜しいというのは最後の最後に「人生ってのはこんなもんなのさ」って講釈を垂れるオヤジが出てきて、あれがすべてを台無しにしてる。あれさえなくて、まるっきり無意味なままで終わってれば結構好きだったのに。まあでも『ファーゴ』よりは野心のない分好きかも知れない。ジュリアン・ムーアが電話を受けたとたんにゲラゲラ笑い出して、デュードがいたたまれなくところがたまらん。
 字幕:戸田奈津子。と見ただけでチェックをはじめてしまうぼくであったが、一番不思議だったのはdudeが“デューデュ”と表記されていたことだ。なんか意味あるの? 女王様のなさることは下々の者にははかりしれぬ。あと重箱の隅をひとつつついておけば、ヴェトナムの激戦地は“ケイ・サン”ではなくケサンでしょう。

 終わってその足で急ぎ飯田橋のフランス料理屋へ。『火星夜想曲』の翻訳者であらせられる古沢嘉通先生がバベル翻訳新人賞を受賞なさったということで、そのお祝いである。早川・創元、扶桑社の編集者や翻訳家連中ら約30名が集まっておいわい。詳しくは大森望かなんかがレポートするからいいよね。ぼくはもっぱらSFオンライン組やさいとうよしことお喋りしていました。古沢先生はフランス優勝予想とのことだが、ぼくはFWに決定力のないチームはトーナメントを勝ち上がれないと思います。というわけでぼくの優勝予想はイングランド。頼むぜシアラー。


5/30(土)
 ビデオの修理を引き取りに広小路まで行くついでがあったので秋葉原へ。中古ビデオを漁っていたら、昔デルモンテが書いていた屑ビデオ評300本の中でいちばん気になっていた映画のひとつ『死霊の暗殺者エルスカン』があった。ビデオは……『死霊の暗殺エトルスカン』タイトルから違ってるやんけ! で、買って見てデルモンテの映評とつきあわせ……るわけねーだろ。そんなもんに1000円も払えるかい。結局アベル・フェラーラの『ドリラー・キラー』とジェス・フランコの『フェイスレス』を買って帰った。どっちもくだらないのは知ってるんですが、つい母性本能が働いて保護してしまうんだよなあ、こういうのを見かけると。
5/31(日)
 毎年恒例の佐川さん主催のピクニック。今年も晴れである。なぜかこのピクニックの日はいつも晴天だ。日頃の行いがいいのか? 誰の? 去年はすさまじい人出だったのだが、今年は佐川さんが××と絶縁したとかあったらしくてかなりこじんまりとした感じになっている。まあ思うんですけど、佐川さんと喧嘩するような人は佐川さんとつきあう資格はないね。いや、どっちがいい悪いの問題じゃなく(ここんとこ理解できない人もいるようなのだが)。
 根本敬、佐藤寿保、睦月影郎、鈴木邦男といった常連はまあいつも通りの世界をくりひろげておりましたが、初顔で来ていた新藤兼人の孫娘(Fカップ)が人気を集めていたことである。まあFカップだし……あと自殺未遂200回をほこる15歳女子高生(幼稚園のころから庵野ファン)。ちなみに神様監督・監督役根本敬・主演奥崎の超問題作『神様の愛い奴』は6月から移転する新装ロフト・プラスワンで公開されるそうです。6/17にはトークショーつきプレミア上映があるらしいけど、で、完成したの?って聞いたら
「できてるわけがないでしょう! まあ神様の思し召しですから
だって。
6/1(月)
 UIPで『トルーマン・ショー』。ジム・キャリー初のシリアス・ドラマ。ところでUIPが作ったティーザー・ビラは「パラマウント映画が今年最高の批評を獲得した作品!/トルーマンは誰でしょう…?」とか書いてあるだけの露骨になんの情報も戦略もないチラシ。それでもチラシを印刷してしまうところがUIPだが。中身は生まれてからずっとテレビ・ショーの中で生きてきた男がある日ふと現実に気づく、というお話。ティム・バートン系の郊外恐怖に満ちているが、ワン・アイデアで終わってしまったかなあ。終わったあとエスクァイアのTとお茶。もうこれからは奢ってもらえないのね。
6/2(火)
 渋谷で木村氏と打ち合わせ。ボルチモアの写真受け取る。など。
6/3(水)
 本を立ち読みに行ったらめくらの行列とすれ違った。前の人の肩に手をやって、電車ごっこしながら歩いていた(ぢるぢる日記みたいになってしまった)。
6/4(木)
 東陽町の試験場に免許の再交付で出かける。渡米中、気づくと免許がなくなっていたのだった(笑)。免許書不携帯で運転していたような……ヤバかったな。
 帰りに木場の現代美術館に寄って森村泰正展。まあ今更って感じで、まあコンセプチュアル・アートって落ちの割れてるミステリみたいな感じがする。実物見たからって別に嬉しくないよってとこがね。〈家族の肖像〉シリーズで「妻」にだけやたら力が入ってたなあとかその程度。モリクラマシーンは45分待ちだし(当然無視)。

 帰ると『真夜中のサヴァナ』(ジョン・ベレント)が届いている。あーもう一日早く送ってきてくれていればダブらなかったのに。まあ文庫だから被害は少ない(っていっても最近買うのは文庫だけだ)。『死の泉』(皆川博子 早川書房)読む。これも図書館。なんで今更読んでいるのかというとこういう本だとは知らなかったからなのだ。こんな本だと知ってればどっかで書評したのになあ(ちなみに知らない人のために書いておくとナチスの優性人種製造計画がらみでマッド・サイエンティストがシャム双子を製造したりする話)。早く教えてよもう。ミステリ系の書評を読まないオレが悪いのか? でもやっぱり「自分の面白かった本」を教えてくれるよりは「柳下向けの本」を教えてくれる友達が欲しいなあ。ぼくぐらい趣味のはっきりしてる人間も少ないんだしさあ。


6/5(金)
 ヘラルドで打ち合わせ。それくらい。
6/6(土)
 東大SF研の新歓コンパのため渋谷へ。今年入学した新入生は1980年生まれである! というわけでさっそく一人つかまえて「特撮番組と言えば?」(ダイナマン)「アニメと言えば?」(『ナディア』)とか質問攻勢でジェネレーション・ギャップごっこをする。なんせ「物心着いたときにはドイツはひとつだった」という人たちである。一筋縄ではいかん。入学前から『危ない1号』を読んでいて「柳下さんってSF研の人だったんですか!?」とのたもうた新人さんがいるというんでつかまえて話をしてみたら、彼は“宝島”というのは『宝島30』のことだと思っていた! つまりサブカル雑誌としての『宝島』をまったく知らなかったのだ。これはちょっとショックだったね。もう一軒行って12時前には帰る。
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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / yanasita@gol.com