セックス禁止

◎今月のお仕事 処女映画評論集『愛は死より冷たい』(洋泉社)絶賛発売中!
        『殺す』(J・G・バラード 東京創元社)で解説         


10/24(土)
 渋谷東急で英国映画祭のハマー・ホラー特集。『ドラキュラ・血のしたたり』『フランケンシュタインの逆襲』他一本。『ドラキュラ・血のしたたり』のあまりのエロさに胸を打たれる。カーンシュタインとまぐわうミラーカが手を伸ばし、燭台をまさぐるとか。露骨なシンボリズムが素敵だ。

『クラックアップ』(ハーモニー・コリン 山形浩生+渡辺佐智江訳 ロッキン・オン)送られてくる。なんか、あまり面白いとは思えないのよこういう本。訳ももひとつなのね。こういう本は、もちょっと詩的に訳さないと意味がないと思うんだが、山形くんってとことん散文な人だからなあ。


10/25(日)
 あまりにいい天気なので妻と代々木公園に散歩に出かける。ぼーっとひなたぼっこしながら『スノウクラッシュ』を読んでいたんだが、ふと目をあげると全裸で日光浴している男がいる(中田眼鏡かけてたり)。ケツの穴まで覗いてしまった。その向かいに背広で正座しているおっさんがいたのもいとおかし。
10/26(月)
 また駅前の中古ビデオ屋で『新デモンズ』(ルチオ・フルチ)と『死霊の鏡ブギーマン』(ウリ・ロメル)を保護。なんかすっかり罠にはまってるような気がする。ああいうところに一本だけあるときって、つい「ま、一本ぐらいならフルチもいいよな」とか思って買ってしまうわけである。しばらくしてから行ってまた出てくると「こないだも買ったしな……」で、3本目からはもう保護が義務となる。これが最初から3本並んでれば手出ししないのになー。やっぱ罠だなー。

 ウリ・ロメルは最近中原が「ウリ・ロメルすごいですよー。見ないとダメですよー」とうるさいのでつい。完全に罠にはまっている。買ってばかりではなんなんで、とりあえず『死霊の鏡』見る。たしかに凄いかもしれない。まったく要約不能な映画。トホホホ。

 夜アジア・ユースVS韓国。メンバーがな。なんで高原に固執するか。大敗しないかぎり準決進出決定という時点で、まず控えメンバーを先発させ(小笠原、中田、飯尾、古賀)、体調不良の選手を休ませる(石川、高原)ことを考えないか? なんか中途半端に選手を入れ替える感じがどうも嫌である。どうせスロースターターなんだから、前半は新鮮なメンバーでがっちり守らせた方がいいでしょ。ま、あと2試合つきあってはみますが。


10/27(火)
 旭屋で『ウォッチメン』(アラン・ムーア&デイヴ・ギボンズ メディアワークス)購入。4000円にはびっくりしたね。翻訳はちょっと味のない感じで不満。なんかこれだとロールシャッハが普通の人間みたいなんだよな。まあ、ぼくが翻訳に味をつけすぎるのかもしれないが。とりあえずみんな買ってから文句を言うこと。出ただけで今年度ベスト1級の作品であるのは間違いないのだから。
10/28(水)
 松竹で『ゴールデンボーイ』試写。ブライアン・シンガー監督。大いに期待はずれ、というのは原作と違って全然人が死なないから。主人公とナチ老人のホモセクシャル的な愛憎映画だった。だから、それなりに興味深いものではある。ただ、原作の面白い部分はほとんど残ってないってだけだ。

 終わってから中原昌也、アイカワタケシ、松竹富士のHらとちょっと食事。もっぱらぼくと中原でくっちゃべっていたような。


10/29(木)
『パートナー』(ジョン・グリシャム 白石朗訳 新潮社)届く。一部翻訳家の友人とは訳書交換、というかエール交換をしあっているのだが、マジメに仕事をしている人相手だと、なんか本をもらってばかりで全然送るものがない。白石先生からは大変な額の貿易黒字を得ているのだが、はていったいどうしたら収支が均衡するのかしら。

『スノウ・クラッシュ』読了。「ウィルス思考は撲滅可能です−−たとえばナチズム、ベルボトム、バート・シンプソンTシャツがそうでした」ちなみにNgという名字は実在する。奴隷ビデオ制作者レナード・レイクの相棒がチャールズ・Ngという名前だった。「イング」と発音するらしいよ。おもしろかったけど、古本屋に叩き売ってしまってもかまわない本だな。

アジア・ユースVSサウジアラビア。要するにこのチームは必ず2点は取られるのだね。つまり3点取れるかどうかが勝敗の分かれ目ってことで。こうなったら韓国をグズグズにして10点くらい取ってやれ!


10/30(金)
 ブエナに『6デイズ/7ナイツ』を見に行ったが、15分前なのに満員で追い返される。なんで!? ABCで『ムーチョ・モージョ』(ジョー・ランズデール 角川文庫)と筒井康隆の文庫を買って一旦帰宅。

 11時からシネセゾン渋谷で中原昌也とトークショー(『キッスで殺せ/ディレクターズ・カット』公開前夜オールナイト)。例によってダラダラ適当に、とりとめもなく喋る。中原相手だといつもこんな感じ。終わってから例によって飲みに行く。鳥竹ではナベちゃんの話とか。その後中原と二人で〈八月の鯨〉。ここは映画のタイトルがついたドリンクを出すところで、有名映画の他にも適当なタイトルを注文するとオリジナル・カクテルを作ってくれたりする。ぼくは〈エヴァンゲリオン〉(笑)、中原は〈エマニエル夫人〉。しばらくくだらない話で盛り上がっているうち、『ハロルドとモード』の話になる。「いや、あの二人セックスしてるのが凄いよねー」とか話してたら、いきなりウェイターから「すいません、他のお客さんもいらっしゃるんで、セックスとかそういう話はご遠慮願います」と釘を刺されてしまった! 何言ってやがる! そんなこと言うんだったら『セックスと嘘とビデオテープ』注文するぞ!  『エマニエル夫人』はどうなってるんだよ! むかついたんでさっさと帰る。


10/31(土)
 アジア・ユース決勝。いちばんわからんのは、ストッパーとGKが弱くって、強力なサイドアタッカーがいるというのに4バックのラインディフェンスを敷くところだな。普通そういう状況なら3-6-1とかにしないか?「ロングボールに弱い」とか言ってるけど、ああいう陣形敷くならロングボールは全部オフサイドにしなきゃ! 例によって2点取られて負ける。
11/1(日)
 10時半から渋谷エルミタージュで『ホールド・ユー・タイト』TIFFで上映されたスタンリー・クァンの最新作。なんか自主映画になってました。引っ越しのシーンが結構いい感じで、旦那はレコードの片づけを延々やってて、引っ越してからはコンピュータのセッティングしかやらない。ゴミだしも奥さんにやらせたりして。で、当然ながらワイフの方は若いツバメを作ったりするわけです。「いやーなんか身に沁みるなあ」って言ったら妻は「そう?」と当惑顔。これ、喜ぶべきことなのかどうか。いずれ、ゲイじゃない妻にはあの寂漠とした感じがつかめなかったみたいよ。

 2時からブエナビスタ試写室で関西テレビの収録。三留まゆみ、秋本鉄次、塩田時敏というメンバーで『アルマゲドン』『6デイズ/7ナイツ』中心に(だってブエナ提供だし)正月映画の話と今年のベスト1とか。まあ中身は適当に言いたいことを言ってきましたが(「どういう客層に勧めますか?」と振られたんで、「勧めません!」と答えてしまった。たぶん切られると思うけど)、手際がいろいろ気持ち悪くてちょっと気分が萎えた。次に話があっても出演しないでしょう。関西ローカルで11月中に放映されるらしいよ。


11/2(月)
 5時半からキャピトル東急で『GQ』用にブライアン・シンガーのインタビュー。10分前に着いたらすでに前のインタビューは終了して、こちらを待ちかまえる状態になっていて大いに焦る。で、シンガー本人がわりと身も蓋もない人で会話の接ぎ穂がない(何を聞いてもイエスかノーの返事しか返ってこない)し、セクシャリティに関する質問禁止だったりで、どうも隔靴掻痒なインタビューになってしまった。しかも焦ってたもんで『Xメン』のこと聞くの忘れた!(のちに配給会社から取材したところによると、ウルヴァリン役はブルース・ウィリスらしい……ファンの人、お悔やみ申し上げます)。ちなみにもらった『GQ』には拙著の書評が載っている。

……映画評ではないものの、出色は100ページを費やした「映画評論家緊張日記」。今はなき情報誌「シティロード」連載の松沢呉一日記、浪花の街での廃盤レコード探しの日々を綴る戸川昌士「猟盤日記」とならぶ平成三大日記と呼びたい。

 ちょっと誉めすぎでしょう。

『悪魔の帰還』(森園みるく村崎百郎 太田出版 ¥1300)届いている。なんかペヨトルの本みたいだ。ちなみにこの本にはぼくもゲスト出演している−−というか、無理矢理出されてる。だいぶお耽美に美化されてるからいいけど(笑)。ちなみにぼくはこんなしゃべり方はしません、と思う。580円くらいで出ると良かったかなあ。


11/3(火)
 なんか、一歩も家の外に出ないまま一日が終わってしまった。雑用を黙々とこなす。『ルーツ・オブNYパンク』(クリントン・ヘイリン シンコーミュージック)読む。レスター・バングズを引用するのは失敗である。だって、バングスの文章の方が全然格好いいんだもん。フレッド・スミスがブロンディからテレヴィジョンに引き抜かれた話があって、それが「大失敗だった」って言うんだけど、なんか違うんじぇねーのそれ。そりゃブロンディの方がずっと売れたのはたしかだろうけどさ。
11/4(水)
『ワイルド・マン・ブルース』について『Escquire』に書いた短評をチラシの裏に使わせてくれ、と連絡。「ことアレンに限っては、現実の方がはるかに芸術よりおもしろいのだ」って部分を、というのだが、これって文脈をはずした引用じゃないのかな? ま、いーんですけど。
11/5(木)
 ユーロスペースに『狂わせたいの』を見に行く。したら5分前だというのに行列が階段の下までできている大混雑。なんでこんなに大ヒット!? 当然のごとく立ち見で、しかも座るスペースもないので壁際に突っ立って見ていた。まあ60分の映画で良かったよ。あれで『タイタニック』を見た日にゃあなあ。それでも見ている最中ふと睡魔に襲われ、膝かっくんして前に座っている人の背中をけ飛ばしてしまうこと数回。トホホ。映画はほとんどどうでもいい感じで、面白くなったのはキララちゃんが出てきてからでした。そこら辺でようやく映画のリズムに体が入った感じがする。でもその途端に終わっちゃうのね。
11/6(金)
 早起きしてオーチャードホールでTIFF『レクイエム』。アラン・タネールの新作である。BOXのO氏他業界人多数(らしい−−ぼくは全然目が覚めておらずまわりを見ている余裕はなかった)。途中ちょっと寝たけど、別に幻想味があるからどうってわけでもなくて、普通の映画だった。どうも編集が間違ってるような気がする。ラフ・カットを見せられてるみたいなんだよな。芝居の動きだしが残っているような感じなのだ。公開されるときは2時間くらいになるんじゃねーの?

 109の近くの韓国料理屋に入ったら四方田犬彦がいた。四方田先生はカップルがいても女の方しか見えない人なので(笑)、こっちもそのつもりなのだが、いきなり「本読みましたよ」と言われてびっくり。でもほとんど社交辞令みたいなもんで、あとは妻と話してただけ。フィルムセンターに行こうかとも思っていたのだが、疲れたんで寝る。もう最近疲れてばっか。


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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / yanasita@gol.com