ドリューとギャロ

◎今月のお仕事 『ジェフリー・ダーマー/死体しか愛せなかった男』(ブライアン・マスターズ 原書房)発売中。


4/16(金)
 どうも心の方面が不調なので、楽しくなれる映画を見に行こうと思った。で、試写でドリュー・バリモア主演の『25年目のキス』見る。高校時代モテなかった女の子が、大人になってから記者として高校に潜入取材する。で、かなわなかった楽しい高校時代をとりもどして大暴れ……するはずだったんだけど、これがなんとも。いじめられっ子は高校に戻ってもやっぱりいじめられっ子のままで、人気者は一日で人気者になれるし(でも高校出たらただのボンクラだし)、いじめられっ子も人気者になったらすぐ過去のことは忘れてしまう。ものすごく暗い話だった。『ウェルカム・ドールハウス』みたいだ。どっと落ち込む。
 で、『星ぼしの荒野から』(ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア)読んでたんだが、これがまた暗い。このころのティプトリーって無意味に攻撃的に暗い。あああ。

 夜、北海道自転車旅行から無事生還した平野勝之監督の慰労会。「行く前はみんなやらせてくれるようなこと言ってたのに、帰ってきたらみんな冷たい!」と嘆く平野監督を慰めるための会。なのにいるのは男ばっかり(笑)。いや、林由美香は来てたけど。当然ながらV&R系の監督はみんな来てた。あと、珍しいところでは庵野秀明の顔も。ぼくは日本のエロ業界を取材したいというダクタリ・ロレンツ(『ネクロマンティック』の主演男優)を連れてって、適当に紹介してやりました。
 そこにいた女の子から「柳下さん、一時期(あたしの)アイドルだったんですよ」と言われる。なんでそのときに言わないんだよ! じゃなくて、なんで過去形なんだよ! なんか悲しいなあ。


4/17(土)
 原書房からアン・ルール『テッド・バンディ』送ってくる。この人のことは、ぼくは実録殺人界のパトリシア・コーンウェルと呼んでおります。でもこの本だけは例外的におもしろい。バンディ本の決定版。

 夕方、馬場に出かけてユタ。高橋良平から『メイキング・オブ2001年宇宙の旅』の原書を借りる。理由はいわずもがな。


4/18(日)
 おうちでちょっと仕事。夜はサッカー三昧。ワールド・ユース 日本VSメキシコ インド人もびっくりの完勝。今日はほとんどのシュートが枠に飛んでいたし、きっちり守ってカウンターみたいなことやってたし。先方がシュートをはずしてくれたラッキーはあったとはいえ、こんなに安心して見られた試合も久しぶりだなあ。個人的には小笠原くんのさばきが良かったですね。あと、高原くんはこのトーナメントのあいだにぐんぐん良くなって、MVPをあげてもいいくらいじゃないかな。
4/19(月)
 帝国ホテルでドリュー・バリモアの記者会見。ふだんはこんなもん行かないが、まあドリューとなれば話は別だぜ。ド・リ・ュー! 刺青見せて〜!

 広い会場は超満員(隣ではソニーのDVDの発表会をやっていた)。ドリューはお下げに白いぞろっとしたワンピースという格好で、どうも『エバー・アフター』をイメージしたものらしい。可愛かった。映画よりずっと良かった。天使の笑顔。でも人生経験は裏表やってます、みたいな。
 ずっと手を挙げてたんだけど、司会(クロ)には指名してもらえず。やはり不穏なものを感じられてしまったか。


4/20(火)
『奇跡の輝き』(リチャード・マシスン 創元推理文庫)送ってくる。

 夜、トランス・カフェでヴィンセント・ギャロのウェルカム・パーティ。秘宝の大矢くん、川勝正幸らと談笑する。ギャロ様は愛妻と一緒に奥のVIPルームに陣取っていて、そこに下々のものが行列を作って参拝にいくという格好。なぜか要らんと言ったのに参拝の列に並ばされる。途中、手持ちぶさたでそこらにあったマイクをつかみ、歌を唄っていたのは中原昌也だ。いや、オレが「歌っていいよ」って言ったんだけどさ。
 なんかアホらしくなってきたんで川勝、中原と抜けだし、ほか2名でXPに行って馬鹿話する。話題は中原のお誕生会とか。みんなすっかりギャロのことなど忘れて談笑していたのであった。


4/21(水)
 朝、中原から電話。
「すごいですねえデンバーの銃撃事件。ひどい話ですよねえ。しかも“レインコート・マフィア”って名乗ってたんでしょ。すごすぎる、“レインコート・マフィア”。しかもニュースのアナウンサー、『黒人やスポーツ選手などのマイノリティを狙ってた』って言ってましたよ。スポーツ選手ってマイノリティなのかー。あと『ゴシック音楽聞いてた』ってなんですかゴシック音楽って。いやーひどいなー」
 ってあんたがいちばん楽しそうなんですけど。それにしても“ゴシック音楽”の謎は残る。やはりグレゴリオ聖歌とかそういうのなのか(笑)。

 ワールド・ユース 準決勝 うーんいい響きだ。準決勝。なんか最後の方、主審がヒステリックになってるのがちょっと困ったもんでした。MVPは本山くんかな? あの調子で90分間プレイできればもう無敵だと思う。CNNのサッカー・ニュースでは永井くんの得点が"tacky feint"って評されていて笑った。それにしてもスコールズが決勝出場停止とは痛すぎるが、稲本が万全でプレイできればなんとかなるか(って試合が混ざってるような)。


4/22(木)
 五反田イマジカで『ヴァイラス』試写。製作ゲイル・アン・ハード、監督ジョン・ブルーノ。フィル・ティペット、スティーヴ・ジョンソンをはじめ超豪華SFX面子集結(みんな仕事なくてたいへんなんだねえ)のダメ映画。ま、わかってたんですけど。それにしてもドナルド・サザーランドのやる気のなさは素晴らしかった。表情を作ろうとすらしない。ただ立ってるだけ。あと、女はしっかり脱ぐように(ジョアンナ・パクラ限定)。

 終わったあと、高橋良平に誘われ、石上三登志先生と飲む。話は最近の誤訳とか映画界のゴシップとか、いつもやってるようなネタなんだけど、この二人だとさすがにスケールがでかーい。「ポケミス100番台の……」とか「手塚治虫は……」とか「『惑星大戦争』で東宝に呼ばれたら……」とかそんなの。ひたすらかしこまって話を拝聴する。

『禁じられた愛』(メアリー・ルトゥルノー&ヴィリ・ファラウ 日本文芸社)買う。生徒の子供をはらんで逮捕された中学教師の書いた本。いや、こういうのって見つけたときに買っとかないとなくなっちゃうからねえ。それにしても原著がどういう本なのか全然わからんのが不気味(フランスで出たものらしいんだが)


4/24(土)
 なぜか豪雨の中、与野まで出かける。彩の国さいたま芸術劇場で『笑う男』。1927年ユニバーサルの無声映画である。監督パウル・レニ。これ、幻の傑作と言われている怪奇映画。で、人さらい団に売り飛ばされ、口の両端を切られて笑った顔にされてしまった貴族の息子の物語である。彼はナチュラル・ピエロとして人気者になるっつーわけで、これ、バットマンの仇敵ジョーカーの元ネタとされてるんですね。だから前から見たかったのだ。
 彼に欲情する女侯爵が出てくるんだが、これがオルガ・バクラノヴァ。『フリークス』でも小人を誘惑していた。なんかしらんがフリークに欲情する女らしい。いやあ深いよこれ。ヴィクトル・ユーゴーってあなどれないなあ。

 雨の中新宿に戻る。ヴィンセント・ギャロくんがレコード漁りをしたいからというんで、川勝正幸さんと西新宿のレコード屋をちょい案内することになったのだ。一応4時半集合のはずだったんだが、5時過ぎに新宿に行ってもギャロの姿はない。なんか所沢のヴィンテージ・オーディオ屋につかまっているらしい。5時半ごろあらわれたんでとりあえずビデオ・マーケットへ連れていく。「ビデオは7000本持ってるよ。アーチ・ホール・ジュニアの『サディスト』って見た? あれは大傑作だよ。なんせヴィルモス・ジグモンドの初撮影作品だからな。お、ここにあるじゃん。んーここはいい店だなあ」これだけのことを3秒で言う。どこにいってもこの手の蘊蓄が飛び出すわけで、もうまるっきり映画と同じである。で、ギャロは何も買わなかったんだけど、出がけに店員が川勝さんに「セルジュ・ゲンズブールの出てるビデオありますが」いやあ案内人がつかまってちゃしょうがない。ちなみにぼくもシャノン・ドハティのサイン入りヌード写真買っちゃいましたが(笑)。

 その後ギャロはエアーズでプログレのブート・ビデオ、新宿レコードで探していたビニール盤を買って(合間に蘊蓄を垂れまくって)ご満悦。こっちはすっかり疲れちまったが。悲惨なのは朝8時からオーディオ屋に付き合わされていた奥さん(新婚)であろう。うんざりを通り越して気持ち悪そうだった。トホホ。

 ワールド・ユース 決勝 まあ、試合開始前にすでに終わっていたような。本山くんと遠藤くんのコンディションがあんなに悪くなければ、もうちょっと抵抗できたかもと思うが。稲本くんが万全ならOMFやFWのチェイシングももちょっと楽だったはずだから、怪我の影響が最後の最後で出たって感じ。ま、この敵はオリンピックでってことで。


4/25(日)
 選挙に行きました。
4/26(月)
 渋谷で『エバー・アフター』を見る。試写にいきそびれたので。やっぱいいなあドリューは。ドリュー・バリモアが出てればあとはなんでもいいです。オレ的には。ナチュラル・ボーン・スターだと思う。しかし『乙女の祈り』のブスの方(メラニー・リンスキー)がいじわる継姉の一人だったのには笑いました。やっぱりブスの役。あとリチャード・オブライエンが悪役だったり、パパがジェローン・クラッベだったり、脇が無意味に豪華であった。

 その後ジョイシネマで『隣人は静かに笑う』。これは中原昌也からの強烈なプッシュがあったから。「柳下さん見てないんですか? ダメですよ見なくちゃあれ本当にすごいんだから」じゃあ劇場行くよ、って言ったら「え、試写で見なくちゃダメですよあんな映画お金払っちゃ」って勧めてんのか止めてんのかどっちなんだよ!
 で、見たんだけど参りましたよ。いやマジで凄い映画だった。後半の畳み掛けるような展開はちょっと予断を許さないっていうか。思わずパンフ買おうかとか思ったけど、500円もしてバカバカしいからやめた。何も予備知識を与えない方がいいだろうから何も書きません。みんな見に行ってください。でも、1000円以上払っちゃダメだよ。いやそれにしても登場人物ただ一人として何を考えてるのかわからない映画だったことだなあ。


4/27(火)
 いい天気だったな。
4/28(水)
 ところで、コロラド乱射事件についてはここをチェックしておくといいらしいぞ。でも訳はでたらめだから、英語ページを見る方がいいかも(訳しなおせってか?)

 夜、『オフィス・キラー』試写のため恵比寿ガーデンシネマへ。「アンタイトルド・フィルム・スティル」(映画のスチル風の自画像)とか撮ってた写真家シンディ・シャーマン初監督作で、ジャンル・ホラー。なんというか、予想どおりの行動である。で、中身も予想どおりなんだけど、ある意味で予想を超えていた。つまり、シャーマンの悪趣味さ/心の病はオレの予想をはるかに越えるほど深かったのだ。気持ちわりい。なんかひさしぶりに、すげえ嫌な気持ちになる映画を見た。もちろんベスト10級。


4/29(木)
 日本のエロ業界に生きる女の子を取材したいというダクタリ(4/16参照)につきあう。つーか、何人がぼくの友達を紹介した手前、責任を持たなきゃなんなかったっていうんですか? でウンチ業界のアイドルとコアマガジンの女の子と原宿の駅前で待ち合わせて、代々木公園でピクニック。なぜ? まあドイツのTV局の考えることですから。中身はわりとどうでもいいインタビューだったが、まあ11PMみたいな番組らしいからな……

 その後例によってタワーを覗いてきたんだけど、イタリアのMAXって雑誌でキャメロン・ディアスが脱いでるよ! おい、どーすんだよ! ってとりあえず買うんですけど。さあ見ろ

太田出版より『わたしが死んでもいい理由』(美智子交合)送ってくる。ドクター・キリコの本だね。


4/30(金)
 ヘラルドで『ペイバック』試写。ご存じのとおりリチャード・スタークの『悪党パーカー/人狩り』の映画化である。でもパーカーじゃないんだよね(ウェストレイクは映画化権は売っても、“パーカー”というキャラクターの使用権は売らないらしい)。一応パーカーなんで非情なギャングなんだけど、女とのからみだけが妙に甘いせいで、なんか主人公が二重人格者みたいである。女との絡みがなかったらそんなにひどくなかったろうと思うんだが。いや、実際この監督、なかなか才能あると思う。デボラ・アンガーなんかすごく良かったもんな。安い感じが。

 ちょっと喫茶店で仕事してからシネパトスで『ユー・ガット・メール』を見る。なんで? いやまあこれも仕事っすよ。見ての感想ですが、いや、びっくりしたよオレは。なにがって、メグ・ライアンくん、きみそんなことでいいわけ?
 話が見えない人のためにちょっと説明しよう。メグがやっているのは親子二代つづいた童話専門書店である。店は小さいが、いろいろ工夫して老舗の味だ。しかし、そこにトム・ハンクス率いる新刊本が3割引きの量販店が進出してくるわけだ。で、ライアン二等兵の物量作戦の前にメグは敢えなく沈没。店は閉店。でも、メグ・ライアンは「まーそれでもいいか」てんでハンクスとくっついてしまうわけだ。そんなのありか!? もうなんだか夢も希望もない感じでした。ま、どうせみんなマクドナルドを食って、キングとクーンツだけ読んで、『アルマゲドン』と『タイタニック』を見てればそれで満足なんだから、それでいいんだよね。バーンズ&ノーブル協賛映画。    


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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / yanasita@gol.com