生きるも地獄、死ぬも地獄

◎今月のお仕事 コリン・マッケンジー物語』(デレク・スミシー パンドラ)9/25発売。特殊翻訳稼業の神髄を見せてやるぜ。


9/17(金)
 川喜多ビルに出かけて石井輝男の『地獄』見る……いやー参った。スゴすぎる。製作過程の噂が伝わってきて、尋常じゃないことはわかっていたのだが、それにしても……ほとんど素人同然(つうか素人そのもの)の女優が片っ端から服を剥かれる一方で、原口智生のメイクだけはやたら力が入っていてスプラッタ度のみ異常に高い。エロと残酷……ってなーんだ、いつもの石井輝男か。
 ラスト、閻魔大王に「これからは怪しげな宗教なんかに騙されず、清らかな気持ちで永遠なるものに祈りを捧げるのです」と諭されたリカちゃん(素人)は夕陽を見ながら裸になって祈りを捧げるのだが……それ思いっきり怪しげな宗教にハマってるんですけど。

 ま、石井ファンは必見でしょう(つーか、石井ファンはほっといても見るんだけどさ)。


9/18(土)
 本日のJリーグは好カードが多く、テレビにかじりつく一日。

『月光の囁き#4』(喜国雅彦 小学館文庫)いただく。あれ? 3巻ってもう出てたんだっけか? なぜか3巻のみいただいていないことが判明。買いに行く(笑)。

 夜中、フジで放映のペルージャVSカリアリ見る。中田! FKも凄かったけどスルーパスも完璧だったし、他に点になってもおかしくないシュートが2本くらいあった。どうしたんだろう。イタリアに行ってからいちばん切れていたような気がする。


9/19(日)
 とろとろと仕事する。
9/20(月)
『危ない1号#4 青山正明全仕事』買う。「誰もがもう絶対に出ないだろうと思っていた」って副題がついてるけど、これは「危ない1号」にかかるのかな。それとも「青山正明」の方だろうか?

『地の果てのダンス』(清野栄一 メディアワークス)送ってくる(読みません)。あと『この映画がすごい!#11』も(いりません)。


9/21(火)
 東和まで『シックス・センス』見に行くが満員で入れず。やれやれ。しょうがないので喫茶店に行ってワープロを叩く。隣のおばさんたちの会話。

「……精神病院行ったの?」
「ううん。なんか病気。ヘルペスだって」
「あらいやだ、うつるのよあれ」

などなど。


9/22(水)
 東和で『シックス・センス』に再挑戦。なるほど! なんであんなに試写室が混んでるのかやっとわかったよ。いや、これって再見したくなる映画だったんだね。これが映画館なら1回半くらい見ていくところなのだが……こういう映画が増えたのってやっぱビデオ時代だからかねえ。タランティーノ症候群、というか。
 なかなか良くできていた。謎のインド人は伊達ではない。

 その後『コリン・マッケンジー物語』の見本を受け取り、それを持って乱歩賞パーティに行く。例によってとりあえず食欲を満たし、あとは見知った顔を見つけて雑談。もっぱら喜国さんとサッカーの話をしていた。レッズ・ファンには辛い日々がつづくよ。その後堺とお茶をしにいくが、そう言えばこないだもそんなことをしていたような。


9/23(木)
 シアター・アプルの〈コロンビア映画75周年とかタイトルついてるけど要するにソニーがDVDのマスター用に旧作に字幕入れたんでついでに上映してみました映画祭〉で『スミス都へ行く』を見る。これ、映画としてはひどく出来が悪いと思う(たとえば『オペラ・ハット』の方が全然いい。『群衆』とか)んだよね。いくらなんでも最後自白はないだろう、とかいろいろあるんだけど、逆に言うとそれがキャプラの確信の強さなのかもしれない。昔は燃えたもんである。まあクリントンくんとオブチくんに見せてあげるといいと思う。

 その後は妻につきあって新宿を放浪していました。本当にこういうことになると妻の人は元気だなあ。


9/24(金)
 『危ない1号#4』送ってくる。やはりダブったか。

 台風が来なかったのでBOX東中野へ出かけて平野勝之自転車三部作完結編『白theWhite』を見る。かなり気合い入れていったけど場内は空席もちらほら。おかしい。中身は真っ当だった。すごい真っ当な極地冒険ドキュメンタリー。平野らしいものを期待していくとちょっと肩すかしかもしれぬ(北に行くにつれ、つまらぬギャグを入れる余地がどんどんなくなっていくのである)。サロベツ原野のあたりは本当に凄かった。


9/25(土)
 昼過ぎにまたしてもBOXへ出かけ、『コリン・マッケンジー/もう一人のグリフィス』のトーク。しかし! 着いてからびっくりしたのだがてっきり二本立てだと思っていた『コリン・マッケンジー』と『知ったこっちゃない』は入れ替えなのだった。そんなのありかよ!? しかもトークは『知ったこっちゃない』の前。オレ、てっきり『コリン・マッケンジー』の方だと思って、コリン・マッケンジーとピーター・ジャクソンの話ばっかりしちゃった。いずれにしても入りは大層悪く、前途があやぶまれてとても悲しいことである。
 終わったあと中原昌也やパンドラ御一行様、山崎さんらと昼間っからワインで酒盛りする。あまりにも愉快な話題が飛び交っていたがそれをここで書けないのはまったく残念なことだ。いや書くと中原の人間性が疑われそうなんで(オレじゃないよ、オレじゃあ)……

 その後秋葉原に出かけてマクロヴィジョン・キャンセラーなど購入。


9/26(日)
 神保町まで出かける。『伽藍とバザール』(エリック・レイモンド 山形浩生訳 光芒社)、『記録を残さなかった男の歴史』(アラン・コルバン 藤原書店)買う。
9/27(月)
 なんかなー。このところゲームやったりしてロクに仕事してない。ちょっと反省。どうも集中力に欠けてるね。

 夜、オリンピック予選壮行試合 日本VS韓国。あんなに弱気な韓国チームははじめて見た。後半、全然攻めてこないんだもの。体力的にしんどかったのかもしれないが、それにしても……
 後半、中村が入ってからは全然リズムが違った。なんか解説者もポジションのことばっかり言うんだけど、そんなのどうでもいいと思うんだけどなあ。問題は視野が広くて長くて正確なパスを通せる選手がいるかどうかで、小笠原も稲本もいまだ単独でそれができるレベルではないっていうことだよね。


9/28(火)
『伽藍とバザール』読む。「魔法のおなべ」の中で、Red Hatやなんかがスター・プログラマを雇うことについて書いてある(P.194)。

 Red Hat/VA/O'Reilly とその顧客・開発者との関係は、製造業企業の場合とはかなりちがう。それはむしろ、知識集約型のサービス産業に典型的な特徴を持っている。技術産業の外を見てみると、こうしたパターンは(たとえば)法律事務所や医者や大学なんかで見られる。

 これ、レイモンドがアメリカ人で、スポーツ・ファンじゃない(たぶん)から出てこなかったんだけど、もっと適切な例があるよね。そう、フットボール・チームのスポンサー企業とサポーターだ(こればっか)。つまり三菱は浦和レッズに出資していることによってなんら直接的な利益を得ているわけではないけれど、でもサポーターは決して日産やトヨタの車は買わないだろう。サポーターは、自分の愛する(コミットする)チームに出資している企業は“正しい”企業だと知ることができる。これが逆説的に聞こえるのは、日本の場合スポンサー企業の方がフットボール・チームより先にあったからだ。でも一度ファンになってしまえばそんなことは関係ないよね。
 もちろんRed HatはLinuxコミュニティから得ている利益の一部をコミュニティに還元することで、一方的な収奪者というイメージをやわらげようとしているのだ、とも考えられる。いずれにしてもその企業が“正しい”方が、みんな金を払いやすいだろうということだ。


9/29(水)
 美学校で『ラヴ・ゴッド』見る。なんかNYインディーズの期待株らしいよ……とどうも投げ遣りなのはビデオ撮影だったからだ。デジカムはやめい! つーか、デジカム使ってもいいけど、映画と名乗らないでくれる? 頼むから。ちなみに主演は『トロメオ&ジュリエット』のガキらしいぞ。

 その後ジャームッシュの新作『ゴースト・ドッグ』。ジャームッシュの黒沢リスペクト作品。こいつは笑った。メチャクチャおもしろいです。ジャームッシュってすごく打率がいいと思うんだけど、その割にはもひとつ話題になんないような気がするのはなんでざんしょ。やはり初打席で代打逆転サヨナラ満塁ホームランを打ってしまったもんで、みんなそれを期待しちゃうってことなのかなあ。で、大振りして三振をつづけるレオ・カラックスとか妙に褒めちゃったりとかして。でもカラックスは腰が入ってないから当たっても外野まで飛ばないよ。


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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / yanasita@gol.com