東京国辱映画祭日記

◎今月のお仕事 コリン・マッケンジー物語』(デレク・スミシー パンドラ)発売中。特殊翻訳稼業の神髄を見せてやるぜ。
        〈CREA〉1999/12号でFBB(けっ)


11/1(月)
 暇だったので(じゃないけど)新しい号を取りがてら『秘宝』編集部に出かける。で、映画祭の話とか。「来年はもうねーよ」とかそういう話。なお、今度の号、立ち上がりは好調だそうで、やはり表紙の力か? これからは毎号文子ちゃんのコスプレ表紙か? やれやれ。
11/2(火)
 国際映画祭でブレッソンの『抵抗』見る。まあブレッソン特集全部見直しても良かったんだけど、そこまで暇もないんで、じゃあ一本……やはり『抵抗』かなあ。もう結末まで全部わかってるのに、それでも興奮してしまう。あのサスペンス、なんなんだろうね。やはり、ブレッソンは最高のアクション監督だ。
11/3(水)
 サンフランシスコから『Japan Edge』って日本のオタク・カルチャー本の著者パトリックが来ている、というので新宿まで。とりあえずLos Apsonとビデマに連れていってあげる。ヤクザ映画のファンで、『わが逃亡とSEXの日々』(安藤昇)が最愛の映画だと言うパトリックくんは中古ビデオの山を見て狂喜していましたが……「どれがいい?」って聞かれたけど、いや、全然オレなんかよりよく見てるんですけど(笑)。オレは基本的には東映系の人間ではないのである。新東宝ならいくらでも答えられるんですけどね。

 飯食ってしばらく話したのち、昭和館に行くといいよ、と教えてあげて別れる。「ガイジンが一人で行っても大丈夫か?」と聞かれたが……知らない(笑)。


11/4(木)
 昼、POPEYEの正月映画特集だかの取材があって『シュリ』のことを適当にしゃべくる。

 その後映画祭でアルトゥーロ・リプステンの『大佐に手紙は来ない』。ぼくは原作でてきとうにイメージを補足しながら見ていたんでまずまずだったが、素で見た妻はちょい辛かったらしい。サルマ・ハエックが出ている。


11/5(金)
 朝からシアター・コクーンでブリジット・リン(林青霞)の初期作品を二本見る。『古鏡幽魂』は『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』そっくりの話。これがオリジナルかな。『窓の外』では高校生役。林青霞って玲瓏たる美人ってイメージがあったんだけど、このころはまるっきり美少女アイドルだった。『古鏡幽魂』なんかキャピキャピ。
 笑ったのは『窓の外』で高校出てから結婚したりするんだけど、年をとるにつれて化粧が濃くなってものすごいブスになっていくのである。素顔はあんなにきれいなのに。

 6時半からパンテオンでリンチの『ストレイト・ストーリー』。秘宝のタノベくんが中原昌也とつるんで来ていた。タノベくん、手になんかできものができたらしく、「いやあ“シェイプ・オブ・レイジ”そっくりなんですよー」とか恐いことを言っている。そうすっとあれか、このあとはブルードが産まれちゃって、海を渡ってコロラドまで町山を殺しに行くのだろうか。恐いよー。
 あ、映画の方はそんなに恐くなかった(あたりまえだ)。すっごくリンチ的な作品だと思う。

 映画が終わるとすぐアップリンク・ファクトリーに走って、9時からデヴィッド・クローネンバーグのドキュメンタリーのためのトーク。30分ひとりべしゃりと言われてどうなることかと思ったが、だらだら喋っていたら終わって良かった良かった。


11/6(土)
 昼間はちょっとだけ仕事をしてシドニー五輪予選VSカザフスタン たいへんイライラする試合だった。「ひらせー 決めろー ぼけー」とか怒鳴っていたので、妻が横にいれば「うるさい!」と一喝されていたところである(どうもこれを予測していたものか、妻は遊びに行ってしまった)。で、試合は中村くん獅子奮迅の大活躍。中村くんみたいな選手をボランチにおいとけると、本当に展開が広くなるよねえ。ヒデは疲れていたのか、細かいミスが多かった。
11/7(日)
 LAの友人、トッシュ・バーマンと瑪瑙ルンナ(ゴーゴーガール)が来ているので、一緒に秋葉原に出かける。ま、庭だからな。『とらのあな』でオタクたちの姿を見せてあげて、「ほら、これがオタクの臭いだよ」と言ったら「うーん、Smell of Passion」だね。だって。
 その後、そういう香水作ったらいいんじゃないか、とか言って盛り上がる。しばらく買い物にいそしんだのち、大久保で飯を食い、以前から抱えている共同ひみつプロジェクトの相談をちょっとだけ進める。また一歩、野望の実現に近づいた!

 ところで掲示板がすごく楽しいことになっているので、見ていない人はチェックしておくとよろしいかと思います。


11/8(月)
 徳間ホールに『アメリカン・ヒストリーX』を見にいく。エドワード・ノートンがネオナチのカリスマ・リーダーになるんだが、ほとんどトラヴィスくん。目が完全にイッちゃってて凄かった。その弟がエドワード・ファーロング。『ペッカー』と続けて見るとあまりの落差に唖然である。あと『ファイト・クラブ』も併映にいい感じだ。

 終わってからPSCのIとお茶する。最近の大林映画に力兄イが出たときの話とかそういうの。安いギャラで出てくれるあたりは侠気なんだけど、できあがった映画見たら『ミナミの帝王』と演技一緒やん!とかそういうの。


11/9(火)
 図書館に出かけ、本を数冊借りる。最近凝っている斎藤美奈子とか。
11/10(水)
 神保町に寄るついでに秘宝編集部へ。雑誌や家から発掘された謎の8ミリを寄贈する(ほとんどただゴミを捨ててるだけ、とも)。例によってしばらくくだらない話とか企画の相談とかする。

 その後神保町で『回文遊び大事典』など購入。 


11/11(木)
 ぴあ試写室で大木裕之の新作『心の中』見る。高知の普通の主婦の人がプロデューサーとかいう作品である。なんだか『ウォーホルEPI』みたいな映画だった(笑)。

 その後新装なったソニー試写室に出かけてハリソン・フォードの『ランダム・ハーツ』。なんでこんな映画を見に来たかというと、これがサイテーと評判を聞いたからだ。そう、今年も毎年この時期に待っているダメ映画落ち穂拾いがはじまってしまったのである。あああ、仕事とはいえ辛いぜ。
 で、中身はただのダメ映画だった。ロマンチック・ストーリーのはずなんだが、フォードがキチガイにしか見えないのである。もひとつはじけとらんなあ。それにしても、ソニー試写室はすげえ豪華だった。なんつーか、アメリカ標準。

 その後渋谷に急ぎ、A社のHと会って食事。Hは夜っぴて芸者をあげての大騒ぎが待っているようなので、早々に切り上げる(嘘)。


11/12(金)
 ダメ映画征伐活動は続く。妻からは「なんでお金払ってわざわざつまらない映画見に行くの?」などと無理解な言葉を投げかけられる。オレだってわかんないよ! でも、誰かがやらなきゃならないんだよ! それが男の道なんだ!

 さて、今日はまずマリオンで『梟の城』。場内は満員である。中身はなんてことはないただのダメ映画だけど、何がダメって主役の中井貴一がいちばんバカだ。腕はたつのかもしれないが、頭が弱すぎる。すぐ他人の口車に乗って、命乞いされると「そーかもしれない」と許してしまうのである。
 鶴田真由はペイ中だし。どう見ても服部半蔵がいちばん強いんだから、あんなヤク中夫婦はさっさと殺しちまえ!

 その足で丸の内東映の『ドリームメイカー』へ。行ったら劇場が変わってシャンゼリゼになっていた。劇場へのドアを開けると、場内空っぽ! まさかたった一人で映画を見ることになるのか? さすがに開演前にはもう3組6人入ってきたが、それでも7人。なるほどSPEEDが解散するわけである
 お笑いポイントはラストのディスコ・パーティに集中している。だいたい、この話時代いつなんだ? 80年代? でもレニクラのLP借りてる奴がいたしなあ。

 なんかすさんだ気持ちで帰ってきたら、駅張りのポスターに「しあわせは/じぶんの/こころがきめる/みつを」と言われてしまった。そうか。ひとは/こうやって/いやされていくんだなあ/きいちろを。


11/13(土)
 門前仲町の門仲天井ホールへ。ここ、“謝P祭”と題して土日ぶっつづけ48時間とかのピアノ演奏会があって、その中で妻が弾くことになったのである。出番は土曜深夜終電直前、というわけで8時ごろに門仲へ出かける。檻のような飲み屋で飯を食って、12時前に演奏。ローレル&ハーディと『アンダルシアの犬』。

 その後朝まで演奏を聴いていくという妻を残し、さっさと家に帰って録画しといたオリンピック予選の最終戦を見る。いやあ、北嶋くんダサダサ。 


Back to INDEX Diary INDEX

Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / yanasita@gol.com