すごいぞ行け行けソローキン

◎今月のお仕事 『子供の森・完結編』(もりしげ オークラ出版)に解説を書きました。子供は読まないように。犯罪だから。
        〈メンズクラブ〉12/10売号よりファビュラス・バーカー・ボーイズ連載。いつまで続くか?(笑)


12/11(土)
 チャンピオンシップ第二戦。清水がすばらしい戦いを見せるもPK負け。あまりにあまりな結末だったが、それがフットボールなのだよ、諸君。浦和降格決定戦ではひたすらベンチの福田を追いつづけた泣かせのNHKディレクターは、今度はひたすら祈る澤登をアップ。ああ、泣けた。
 それにしても澤登のFKはすばらしかった。あのシチュエーション(失点した上、味方が一人退場になった直後)であのシュートを決められるというのは本当に……たとえ小野や俊輔が澤登や名波に倍する才能を持っていようとも、あそこで決められるかどうかはまったく別の問題なのだ(名波で思い出すのは1ストステージの鹿島戦、FK一本で負けゲームをひっくり返して鹿島に引導をわたした)。まちがいなく、今年のJリーグで最高のゴールだった。
12/12(日)
 ソローキンの『愛』読んでいる。中原昌也からの強力なプッシュを受けて読みはじめたんだけど……こりゃいったい……中原が絶賛するのも当然っていうか、いやほとんど中原の小説そっくりっていうか。ともかくメチャメチャに破壊された小説で、白痴のようなスカトロ・ギャグが炸裂する。いやあびっくりだよ。何がってこの人、ソヴィエトじゃ大芸術家らしいのがさ。中原も共産党公認になればプロレタリア芸術家かな?
12/13(月)

 私にとってジョイスとシェフツォーフ、ナボコフとどこかの住宅運営事務所の広告との間に根本的な違いなどありません。どのテクストにも私は魅力を見つけることができるのです。もっとも魅力的に見えるのは、まだ文学に取り込まれていない未開拓の領域、つまり、官僚的、役所的言語、精神病患者達の言語、その書法ですね。私はソビエト期の文献をたいへん面白く読んでいるんです……私たちはまだ社会主義リアリズムを美学的に自立した運動とは意識していませんが、いずれはそれらすべてが見直される時がくると思いますね

  −−V・ソローキン『麻薬としてのテクスト』(強調引用者)

 すごい、すごいぞソローキン。ここなんかほとんどJ・G・バラードではないか。こんなすごい作家がいたとは。世界はまだまだ広い。オレは本当に無知だ。

『日曜日の恋人たち』試写。麻薬中毒で死んだ娘(エロディ・ブシェーズ)をモルグの従業員(ジャン=マルク・バール)が死姦するんだけど、その途端に娘は甦ってバールと付き合おうとする。でもバールは他人と関係を結ぶことができず、自傷したり恋人の人妻にSMしたりするだけ。だからそういうときは『ファイト・クラブ』するんだってばよ。フランス人はごたくばっかで全然実行しないからかったるくっていけねーや。

『新教養主義宣言』山形浩生 晶文社)、『ブンガクだJ!』(永江朗 イーハトーヴ)いただく。ありがとうございます。あと『めぐみ、お母さんがきっと助けてあげる』(横田早紀江 草思社)、『蜜の味』(叶恭子 幻冬舎)を買った。仕事仕事。どっちもジャケ買いだけど、特に『めぐみ、お母さんが〜』の表紙はすごい。


12/14(火)
 秘宝に遊びに行き、写真を置いてくる。なんかみんな忙しそうで、あまり相手にしてくれなかった……ってそんなに暇なのか? オレ?
12/15(水)
 ブエナビスタで『救命士』(Bringing out the Dead)。しかしひでえタイトルつけるなあ。監督マーティン・スコセッシ、脚本ポール・シュレーダーなので当然地獄のようなNY。フッカーとジャンキーとホームレスしかいない。さすがにリアリティないと思ったのか「舞台は90年代はじめ」と断り書きをいれていた。いやそれでもリアリティないと思うが。
 それはともかくムチャムチャおもしろくって、最初から最後まで笑いとおしだった。スコセッシって二本に一本は傑作を作るねえ。終わってから中原昌也らとWAVEをちょっと漁り、ちょっとお茶。

 その後渋谷のスペイン料理屋で江戸木純、編集者T、あと映画会社二人(一応仮名になっているが、業界的にはほとんど意味ないと言われているくらい周知の悪友)で忘年会。もう最初から最後まで業界裏話が飛び交う危険きわまりない宴会になってしまったのでその内容は一言も書けない。聞きたければそれなりの貢ぎ物を持ってきたまい。
 江戸木「オレ、インド政府から表彰くらいされてもいいと思うんだよな」。なんでも日本からの観光客が5倍くらいに増えたらしい。インド人なら勲章もらってるよね。ガンジー賞とか。知らんけど。


12/16(木)
 午後、秘密の試写。腰抜かした。いやあ凄すぎる。何も書けないのが残念。

 SFMのベスト送る。例によって海外のみ。締め切り間際に一位が見つかってよかった。

  1. 『愛』ウラジミール・ソローキン 国書刊行会
  2. 『ウォッチメン』アラン・ムーア&デイヴ・ギボンズ メディアワークス
  3. 『オイスター・ボーイの憂鬱な死』ティム・バートン 河出書房新社
  4. 『殺す』J・G・バラード 東京創元社
  5. 『星々の荒野から』ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア 早川書房

 我ながら殺伐としたタイトルが並んだもんだ。


12/17(金)
 本郷三丁目の日活まで歩き、黒沢清の『カリスマ』を見る……終わったあと思わず深く考えこんでしまった。またしても大変な映画を見てしまったなあ。しばらく考えて意味はわかったが、「わかったけど、(評論する上での)問題はそこから始まるんだよなあ」と言ったら、妻に「そのセリフ、映画の中にあった」と指摘される。ますますもって黒沢清恐るべしである。ちなみに妻の方は洞口依子状態だったらしい。

 3時半から美学校で三輪ひとみ主演の『発狂する唇』。もう三輪ファン必見! ひとみの魅力爆発で、なんせ歌あり踊りありカンフーありレイプあり死姦ありバンバン。ともかく騙されたと思って見とけ。『Dead or Alive』を見た人が三池監督に対して感じたことを、今度は誰もが高橋洋(脚本)に対して感じることだろう。つうか、どうなってんの日本映画は!? それにしても三輪姉妹はこの業界にどんな印象を抱いているんだろう。一度じっくり聞いてみたいもんだ。

 最近すごい映画ばっか見てる。一本見るだけでお腹いっぱい。


12/18(土)
 アテネ・フランセで映画忘年会。本当は映画つきなんだけど、たらたらしてたら時間に間に合わなくなってしまい、忘年会から参加する。『シベ超2』のプロデューサーになってしまった(笑)アルゴのH氏から内情を取材したりとか。あとは気鋭の映画評論家常石史子嬢としばらく談笑。なんか雲行きが怪しくなってきたので退散しましたが。

 ユタにまわってみらい子とちょっと話す。まあそういうことらしいです。

 これでまだ終わりじゃなくて、現在下北沢のシネマ下北沢で上映中の大木裕之『心の中』の上映記念オールナイト・イベントに出演するため、下北に出かける。問題はトークショーが夜中2時前からはじまるということだ。1時過ぎにでかけてロビーで酒をかっくらってたらすっかりできあがってしまった。大木は完全天然の人なんで、適当に喋らせておいて適時突っ込みを入れればいいんでトーク自体は楽なんだが、なんせ酔っぱらってるもんで時間のコントロールができなくて(巻きも入らないし)、気づいたら30分の予定が1時間近く喋っていた。ははは。最初はタクシーで帰るつもりだったが、質疑応答が終わったらもう3時半とかだったんで、そのまま『心の中』主演の阿部くんらと喋って、山形のおネエから地酒をふるまわれ(大木に映画祭でナンパされたらしい。酒は美味だった)始発で帰宅。


12/19(日)
 天皇杯を横目に原稿。

『裏モノの神様』(唐沢俊一 イースト・プレス)届く。P.199より

送ってもらった柳下毅一郎氏の鬼畜映画エッセイ『愛は死より冷たい』……書き込まれている材料は無茶苦茶にいいくせに、文章が相変わらず下手なので、読後の満足感は、イマイチ。

 引用部分のあとを読むかぎり、まあ悪意はないんだろう。だが、悪意がなけりゃ何を言っても許されると思ったらおおまちがいだ。てめえなんぞに上手いの下手のと言われる筋合いはねえよ。おまえ、何様だ? 谷崎か?
 だいたい「鬼畜映画エッセイ」なんて書いてやがる。何も読めてない証拠じゃないか。オレは裏モノとか鬼畜系なんぞと名乗ったことは一度もない。昔からずっと文学者だよ。


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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / kiichiro.yanashita@nifty.com