ジェフリー・ダーマー Jefferey H. Dahmer


  1991年5月のこと。ミルウォーキーの黒人街でラオス移民の少年が保護された。半狂乱になって、裸で通りを走っていたのだ。少年の道案内で、警察は界隈に住む唯一の白人、ジェフリー・ダーマー宅に行った。ハンサムなジェフリーは、落ち着き払って「ボーイフレンド同士のいざこざで、彼はちょっと興奮しただけなんです」と語った。警官は納得し、少年をダーマーに引き渡した。寝室の中を覗いてみれば、事情は違ったのかもしれないのだが! その後、少年の姿を見た者はいない。
 7月になって、また同様の事件が起きた。パトカーが巡回中、手首から手錠をぶらさげた黒人少年を見つけたのだ。少年は肉切り包丁で殺すと脅かされた、と語った。少年の指示に従い、パトカーが行ったのはまたしてもダーマーの家だった。ダーマーは従順に警官の指図に従い、扉を開けた。中はひどい臭いだった。寝室から肉切り包丁が見つかった。床にはポラロイド写真が散乱している。ホモ行為をしている男の写真。それに切り刻まれた死体写真。警官ミューラーは、その写真が自分の立って いるまさにその場で撮られたものであることに気づき、慄然とした。
 ミューラーは台所に行った。それまでおとなしかったダーマーが、突然暴れ出した。冷蔵庫の扉を開けると、そこに会ったのは人間の頭だった。大捜索の結果、出るわ出るわ、家からは全部で11人分のバラバラ死体が出てきた。鍋からはきれいに洗った手が、冷凍庫からは頭が3つ、さらに頭蓋骨が5つ、箱に入れてファイル・キャビネットにしまってあった。酸を入れた工業用ポリバケツからは3体の死体が見つかった。死体は電ノコを使ってバラバラにしていたらしい。例のラオス人ももちろん死体になっていた。
 ダーマーはミルウォーキーやシカゴのゲイ・バーやゲイ・サウナで相手を物色し、家に誘いこんではハルシオン入りドリンクで犠牲者をノックアウトした。あとは無抵抗の相手を絞殺し、死体とセックスその他いろんな遊びをする。ダーマーは別に人を殺したかったわけではない。ただ、無抵抗な相手でないとセックスできなかっただけなのだ。無抵抗なゾンビーを作り出すべく、一度など、犠牲者の額にドリルで穴を開け、ロボトミー手術を試みたことさえある。残念ながら手術は失敗し、相手は本物の死体になってしまった。
 ダーマーの家には食べ物らしきものはなかった。ダーマーは、もっぱら経済的な問題から、死体を食べることにしたのだ。無駄にしちゃあ、もったいないからねえ。頭蓋骨はきれいに洗って、黒いテーブルに飾って祭壇にする予定だった。ダーマーの犠牲者は15人に及んだ。

●ダーマーの愛犬
●逮捕されたダーマー


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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / kiichiro.yanashita@nifty.com