いさぎよいモンスター


©ならぢゆん 1998


わたしはわたしを 十全に燃やしつくしたのです
朗らかに歌いながら砂漠に捨てに行ってください

新川和江『火へのオード18』第T章より。終(つい)の日に遺体を焼く火が用意されているなら、今すぐ小分けして毎日一つづつ欲しい、「わたし」はそう願いました。その火の熱く燃える力を借りて、「肌いちめんに花を咲かせ」、「お恵みの豊かさを布れて」まわり、「潮路に行き悩む船たちを照」らすと言うのです。そして「彼方の岸 見えない岸辺」を「見とどけ」た後はもう遺体を焼く火は残っていない。それでいいのだと「わたし」は言います。「十全に燃やしつく」すことこそ「わたし」の願うところ。骸(むくろ)など砂漠にでも捨ててしまえばいい。こんな潔い生き方ができたらと私も思います。

『火へのオード18』は火の諸相、そして火に照らされてある人の生の諸相を描き印象的な作品です。『続・新川和江詩集』(現代詩文庫132, 思潮社, 1995)所収。



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