そらまめモンスター


©ならぢゆん 1998


あかちゃんなんかうまない
(どうして?)
うみたくないもーん
きもちわるいもーん

きっぱりと悪気のない幼女の声にぎくりとさせられたのは朝の通勤電車の中でした。振り向くと小学校の一年生くらいの女の子と、その手をしっかりと握って立つ母親の姿がありました。折しも僕は片岡直子の「赤ちゃんの子宮」を読んでいたところ。最終連を引いてみます。

やがてその子宮にも浮かぶ赤ん坊
赤ん坊にもうずくまるそらまめ
そらまめにも赤ん坊
赤ん坊にもそらまめ
そらまめ
発芽する
約束されて

定期検診でのことでしょうか。子宮の中の胎児を映した超音波エコー画像には、胎児の中にうずくまる「そらまめ」のような子宮が映っていました。その姿に片岡直子は連綿と引継がれてゆく生命の不思議を感受しました。でも、あの幼い女の子にとっては、神秘的な生命の鎖の連らなりも却って「きもちわるい」ものと見えたのでしょう。私を鎖に繋がないで――あたかも女として生まれてきたことに異議を申し立てているようで、僕には痛ましく思えたのです。

もし片岡さんがこの文章を読んだなら、きっと僕の曖昧な感傷をアマイアマイと一蹴することでしよう。女に生まれてきたことを幾ら居心地悪く思っていても、それでもきっと「そらまめ」を発芽させずにはいられないのだと。だからこそ「約束」なのだと。「赤ちゃんの子宮」は1996年H氏賞受賞詩集『産後思春期症候群』(書肆山田, 1995)所収。アブナイ魅力を発するこの詩集は小悪魔がリボンをかけて差し出したバクダンといった趣きがあります。片岡直子の作品はインターネットでも読むことができます。===>Cyber Poetry Magazine「O2X」



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