初出:埼玉県立春日部高等学校文芸部.KYLEE-DANCE.創刊号.1980
原題:この赤いのは血なんだ
©ならぢゆん 1980
ああ血だ、この赤いのは血なんだ、のんきなペンキなんかじゃなく動物が生きるために使用すべき血液なんだ、それがむやみやたらと流され無差別に流されありあらゆる時代にありとあらゆる戦場に流され、泥に混じり糞尿に混じって草を枯らし土を腐敗させ、しかもそれはひげをそってて想われニキビにかみそりがひっかかったのではなくゴール前でスライディングタックルしてすりむいたのでもなく、銃弾や爆風や放射線や爪や牙や角や妙な形の脳みそや薮睨みの眼球が皮膚を破り心臓を押しつぶし胃腸肝臓膀胱をひっかきまわしてぐにゃぐにゃにして流れた血なんだ、それがマラリア色の難民の眼の中にべっとりと流れ込んでしみてしみて眼をこすりつつ台風一過の青空と自衛隊の軍用飛行機を眺めて平和な反戦デーだと思う心にぽとりと滴り、いもりの黒い影がアジア中をうろつきまわる、血だ、この赤いのは血が流れ流されどくどくあふれふきだし恋人達を黙らせ愛撫される乳房を痩せさせ俺のノートを下手な文字で汚し、それでもまだ飽きたらずに流れあふれて人と人の腹の中のサナダムシと人の足の下の地面を醜く一色に染めて殺し殺され滅んでいくものの泣き声を軍靴の音でかき消してしまうのはこの赤いねばねばした血液なんだ
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