本誌初出 / ©ならぢゆん 1998
わたしと
そのとなりの若いおんなと
そのとなりの中年おとこと
そのとなりの
車窓ガラスに映る姿は
みなすっかり
透き通ってしまって
黒い景色が容易に
突き抜けてゆく
雪が見たい
闇夜に沈まぬ薄明るい雪
に覆われた街が
熟睡する老母の森が
田畑が
山脈が見たい
唐突に激しい警笛
停車駅の向かいのホームから
男がふる
一層おぼろなわたしを貫き
線路の上に積もる
わたしと
そのとなりの若いおんなと
そのとなりの中年おとこと
そのとなりの
轢死体のある景色が通過してゆく
雪が見たい
夥しい雪片を
吸い尽してゆく夜の海が
見たい
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