夜汽車


初出:ニフティサーブ.詩のフォーラム.詩の投稿室.#16163.1996.6.19 / ©ならぢゆん 1996


思い出の数なら
きっと僕だって負けないさ
失ったものの数も
孤独の鋭さも

   君を乗せた列車は君の終着駅に向かう
   (おそらくそこは
    雪に抱かれた静かな町)
   車窓に夜の海が広がる
   果てしなく暗く
   そして突き刺さるような漁火
   君は決してその風景をわすれない
   わすれることができない

負けるわけがないよ
罪の深さだって
臆病さだって
思いのほか
驕慢なところも
きっと

   僕の乗った列車も僕の終着駅に向かっている
   そこに何があるのか僕にはわからない
   車窓に星空が広がる
   そして黒い鳥が視界を横切る
   僕は決してその風景をわすれない
   わすれることができない

二台の夜汽車がすれ違う
ほんの数秒の間に
僕等は視線を絡ませよう
君の見たものと
僕の見たものを
そっと交換しよう

   きっと僕は君の視線をわすれない
   わすれられない

朝日が昇ると僕は
大きく窓を開け放ち
煙草にぽっと火をつける
そして君の視線を
感じなおしてみる
その行く先を
谷間の小さな空に
思い描いてみるのだ



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