呪怨


タイトル:呪怨
作者:大石圭
出版元:角川ホラー文庫
発行日:2003年1月20日
形式、ページ数:文庫、314ページ
難解度:★★
ためになる度:★
感動出来る度:★
面白さ度:★★★★
おすすめ度:★★

あらすじ

 とある家に、伽椰子(かやこ)という主婦がいた。伽椰子は夫である剛雄との間に一子をもうけていた。子供は俊雄といった。剛雄はもう1人 子供が欲しかった。しかしなかなかできなかった。病院に行って調べてもらうと、剛夫は子供を作る事が困難な体だった。「では俊雄は誰の子だ?」 疑惑が剛雄の心の中に沸き起こる。家に帰り、妻の日記を発見すると、驚くべき内容が書いてあった。妻を詰問し、拷問を加える剛雄。 伽椰子は剛雄に殺されてしまう。伽椰子の呪い、怨念が、呪怨となってこの家に憑り憑いた。

感想

 この小説、ひたすら暗いです。昔「仄暗い水の底から」という小説を読んだ事がありますが、そんなレベルを遥に凌駕した、もう暗すぎる 程に暗い小説です。というか、伽椰子の精神が暗すぎる。彼女は生前から、内向的で内気な女性で、好きな人を目の前にしても何もできない ような、そんな女性でした。それだけなら普通ですが、彼女は執着的な性格で、好きな人にストーカーまがいの行動を取ってしまう。どうも 余裕のない人に特有の、自分の存在価値を見出せない、それでいて自分が傷つくのを特に恐れる。しかし好きな人やものができるとそれに 固執してしまう。そういう女性でした。

 そういう暗い人間の心理を、巧みに表現していて、恐怖をより引き立たせています。そういう表現力的な部分はよろしい。しかし、元々 暗すぎる小説なので、正直読んでいる方は「はぁ…くらいよぉ」となってしまうんですね。恐怖というよりも、なんだか悲しくなってきて しまいます。

 物語は、なんだか奇をてらったようで、というよりもこの小説、元々映画の書き下ろしなので、映画的手法がかなり用いられているようです。 映画版は、なんだか物語が二重三重に入り組んでいて、誰がどうなっていて、どの事件が一番古くて、新しいのかわからないんですよね。 小説版は一応時系列になっています。その点は読みやすいです。

 ”恐怖”というよりも”呪怨”の方が強い。つまりは、怖いというよりも、恨み節を延々と見せ付けられるような感じです。被害者達は、 みんなささやかな幸せをもった善良な人たち。それを理不尽な呪怨が木っ端微塵に打ち砕く。その様が私にとっては恐怖でした。ジェーソン だとか、キョンシーだとかのような見た目の恐怖とも、ヒッチコックだとか、ジョーズの時のスピルバーグのような心理的な恐怖とも違う、 底知れぬ人間への恨み、その底知れぬ暗さが何より怖かったですね。

 正直、精神衛生上あんまりよい影響を与えない小説です。ホラーと割り切って読めばそれなりに面白いのでしょうが、これを「人間の心の ドラマだ」として見ると、どうも後味が悪いです。という訳で、オススメ度はちょっと低めにしています。

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