あらすじ
東京都下のある中学校の生徒1クラスの全ての男子が廃墟にろう城した!少年達は解放区をつくり、大人たちへの抵抗を試みた。7日間の ささやかな抵抗。翻弄される大人たち。彼らはろう城の最終日、大きな花火を打ち上げる。
感想
映画「ぼくらの七日間戦争」のモデルというか、それの小説版ですね。角川文庫の社長、角川春樹氏は「メディアミックス」だかなんだか で小説と映画を同時進行させて発表して、社会現象を巻き起こそうと試みました。その試みは見事に成功し、この作品もその中のひとつとして 大きな話題を呼びました。
小説の中の「舞台」はなんと、東京都足立区の北千住付近のようです。東京の下町は、多種多様な住民が住み、さながら「人種のるつぼ」と 化していますが、この小説もそうです。そういえば「金八先生」の舞台もこの近くです。本当に目と鼻の先。だから、私は「ぼくらの〜」と 「金八先生〜」が結構かぶります。
少年達が工場の廃墟にろう城すると、ある大人は「昔を思い出し」て体が熱くたぎります。つまりは60年安保。私は安保闘争だとか、 そういうのはよくわかりません。祖父の世代は安保の頃は既にいい大人になっていたし、両親の世代はまだ子供の頃でした。つまり私なんか は、イデオロギーだとか、アイデンティティだとか、そんな価値観をよくわからないで育ってきました。没主義、没思想、没個性の世代 なんですよね。で、彼らは今までまっさらなキャンパスに、自由気ままに絵を書いてきましたが、思春期になって突然この「感覚」に 目覚めてしまいます。自分がこれから、みんなと違う世界へと歩いていく、それに気がつくのが彼らくらいの年齢なんですよね。 そんな「個性」への目覚めと、そのまま大人になることへと漠然とした不安。このまま大人になってしまっていいものか?子供の心を 失わないように、子供の心をもったまま大人になりたい…そんな思いが、彼らを強行へと駆り立て、ろう城事件を起してしまうのかなと。
この小説、昔読んだときは面白かったと思いました。今読んだら、なんだか物足りない。やっぱり、私も大人になったんですね。彼らの 気持ちはわからんでもないけど、大人の世界はそんなに単純でなくて、やっぱり複雑。それでも生きていかなければならない不条理を、 子供達は薄々感じているのかいないのか、そういったものへのささやかな抵抗として、こういう爽快なストーリーとなったんでしょうね。
正直、子供向け小説であることは否めません。大人が読むと物足りないと思うと思いますが、純粋にこの冒険活劇を楽しんだらよいと思います。
子供の頃にもっていたワクワクするような思い、そんな悪戯心を思い出させてくれる小説です。