血と骨(上)


タイトル:血と骨(上)
作者:梁石日(ヤン・ソギル)
出版元:幻冬舎文庫
発行日:2001年4月25日
形式、ページ数:文庫、466ページ
難解度:★★
ためになる度:★★★
感動出来る度:★★
面白さ度:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

あらすじ

 朝鮮から渡航してきた巨漢の男、金俊平は、その魁偉な要望と巨体、筋骨隆々の体と凶暴な性格から、人々から畏れられていた。極道をも 畏れる無頼漢な朝鮮人は、大阪鶴橋のかまぼこ工場で住み込みで働いていたが、酒を飲んでは暴れて問題を起こしていた。ある時同僚が 囲っていた女郎を抱きに飛田新地へ出向き、そこでその女郎、八重に惚れてしまう。金を積んで見受けしたが、八重に騙されて逃げられて しまう。その後職場が変わり、飲み屋を営む英姫を凌辱し、自らの女にして居座ってしまう。振り回され、傷つけられる周囲の人々。金俊平 の圧倒的な暴力の前に、皆人生を狂わされ、絶望してしまうのであった。

感想

 肉を喰いたくなる小説――――それが、この小説を読んだ私の第一印象でした。朝鮮人が大阪の長屋で営む生活。この生活風景は、私の 中に新鮮な響きを持って受け入れられました。豚の腸詰めだとか、ドブログだとかを飲み食いしたくなりました。そういう生活観が漂う 小説は、なんだか肉感的で好きです。恋を謳った青春ドラマみたいな小説は、私には似合いません。ファンタジーなんかも、あんまり似合い ません。このドロドロした、人間の欲望の根源のような物語が、私には面白い。

 1930年代から始まり、上巻では1945年8月15日で終わります。つまり、金俊平が日本に渡ってきて数年後のかまぼこ工場での日々から、 英姫を強引に娶って、それから子供が何人か生まれ、死んでいって、夫の暴力から逃げる英姫。親友の高信義もハラハラして金俊平の 動向を見守る。この小説、場面場面によって主人公が微妙に変わっていくのですが、一貫しているのが「金俊平を中心にしている」という 点。彼がいなければ、周りのみんなの生活は確実に違ったものになっています。それがこんな人生になっているのは、彼がいるから。

 私はこういう、無頼漢な大男の伝説的な物語が好きです。というか、男はみんな憧れると思います。敵なしの巨艦。容赦しない暴力。 暴力描写もかなりのリアリティがあり、また性行為のシーンのリアルさも、夢見る少女とかが読んだら気分悪くなってしまう程のリアリティ。 それにしても人の耳を食いちぎったり、女を逆さ釣りして肉を包丁で削いで食べてしまうシーンなど、ちょっとグロテスク過ぎです。

 ポンポン人が登場して、ポンポン子供が生まれていく様も、見方によっては分かりにくいと取る向きもありますが、強力な性欲の持ち主 である金俊平に羨望のまなざしを傾け、血縁の因縁の強さを感じるにつけ、鈴木光司の「父性」とも似たような、それでいて全く逆の 「暴力親父」の姿というのが、また面白かったりしました。

 この小説、私の中でベスト3に確実に入ります。今までに読んだ、少しの本の中でのことですから、それはたかが知れてますが、とにかく 面白い!一気に読了して、下巻を読みたくなります。

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