猛き風に告げよ


タイトル:猛き風に告げよ
作者:夢枕獏
出版元:集英社文庫
発行日:1990年12月20日
形式、ページ数:文庫、258ページ
難解度:★★
ためになる度:★★
感動出来る度:★★
面白さ度:★★★
おすすめ度:★★

あらすじ

 プロレス団体、UWFを大好きな筆者による、UWF観と、そんな著者による格闘技を追い求める漂流の旅。職人レスラーとの対話、 天才といわれたタイガーマスクの素顔、神様との出会い、タイのキックボクシングの道場でひたすら強さへと突き進む少年との出会い。

感想

 私はプロレス大好きで、プロレスと関係のあるものなら、相撲でも柔道でも、K−1でも見ます。相撲はそれほどでもないですが、プロレス に関しては一家言あり、やっぱり他のプロレスファンとは「価値観の上で」なにかと対立をしてしまう真性プロレスファンであります。

 そんな私が、あんまり好きじゃない団体、UWFに魅せられた作者のお話ですが、彼のUWFへの愛情、猪木への愛情、プロレスへの 愛情をみていると、そんなに嫌な気がしませんでした。論拠に乏しい部分なんかもありましたが、UWFとは?というものを、禅問答のように に迷宮回廊に陥りながら、懸命に答えを探っていく作者。その愛情を、人生の訓として、私生活への戒めにまで昇華させてゆく様は、なるほど 彼の誠実さと、ほとばしり過ぎて危険な域に達してしまった事をよく表現しています。

 ある種暴露本のようなところもあり、作家ならではの謎かけ的な部分もあります。彼は恐らく「猪木vsホーガン」の第一回IWGP 決戦の、あの結末の真相を知っていたのでしょうね。1980年代当時において、あの結末を知っているというのは、それはあれが茶番である ことを皆が知っていたのか、それでいて騙されたフリをしていたのか?その直後に坂口征二が「人間不信」に陥った内幕から推測していたのか などなど、当時がどうなのかは良く知りませんが、彼はプロレスに紛れもなく八百長めいたものがあることを知って、それでもプロレスを 愛していました。筋金入りです。

 プロレスを知らない人がこの本を読んでも、なにも面白くないと思います。更に、プロレスをよく知らない人や、文学的感性に乏しいプロレス ファンがみても、ちょっと分かりにくいかもしれません。彼のUWF感、プロレス感にはある種の感銘を受けましたが、私的には同意しかねる 部分もあります。愛情が濃すぎるが故の、盲目的な部分が見られるからです。カール・ゴッチ論にそれが如実に表れてました。

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