あらすじ
テニスボーイは横浜市の北西、東急田園都市線沿線の土地成金の息子。彼は鉄道開発の為、親の土地を電鉄会社に売ったお金でステーキ ハウスを経営し、妻子もいる30歳の青年実業家だった。彼の趣味はテニスで、テニスに命をかけていた。仕事のことはおざなりで、テニス にだけ愛情を注いできた。ある日、CFの撮影のために出会ったモデル、吉野愛子を口説き落とす。彼は彼女を愛し、テニスを愛し、妻子を それなりに愛した。順風満帆に見えたテニスボーイだが、泥沼のように愛人にはまり、溺れてしまう。
感想
テニスボーイは最初、ベンツを乗り回し、親の土地を売ったお金で労せずに大金を手にしたいやな奴だと思ったのですが、彼はそんな人生 に人生の悦びを見出せずにいました。彼は妻子がいるのにもかかわらず愛人にのめり込み、自分を見失っていきます。その様が、バブル前夜の 狂乱と混ぜあわさって、なんだか前衛的な小説のように見えます。村上龍の作品は、下品で意味がよくわからない作品が多いのですが、 この作品は比較的意味がわかるというか、ちゃんと意味がわかりました。
小説の中に「東急田園都市線」という固有名詞は1回も出てきませんが、田園都市線沿線に住んでいた(4ヶ月だけね)、この土地が田園 都市線の沿線である事はすぐにわかりました。溝の口だとか、横浜市の北西部だとか、そういうところから一目瞭然なんですけどね。でも この土地を開発する時に、なるほどかなりの数の土地成金が現れたのは想像に難くなく、テニスボーイはそんな一人なんだなぁ〜としみじみ。
87年の小説ですが、ベンツを乗り回して、高級ホテルで愛人と密会。また高層ビルでのディナーなど、バブリーな都会的な生活感という ものがよく表現されてます。筆者はテニス狂らしくて、そんなテニスへの愛情が、この小説を生み出したようです。人生の全てにやる気が ないようなテニスボーイですが、唯一テニスにだけは死に物狂いに近いほどの純粋さでもって望んでいる。ならばそれだけで十分じゃないか と私は思ったのですが、実はそうではないようです。その辺りは、彼にしかわからないことなんでしょうね。
下品な表現や、よくわからない表現がそれなりに出てきますが、全体的にはオシャレで、恋愛の悲哀というものを的確に表現されていて、 私としては面白かったです。ちなみに、この作品は上巻なので、下巻になって多少展開します。何故上下巻に分かれているか、それは上巻 の最後を見ればわかります。結局のところ、この小説は「愛人と私」みたいな小説なんですよね。それはちょっとだけ、モラルに反して いますが、そんなこと気にしていたらこの小説は読めません。
村上龍を読むのであれば、これはオススメの中のひとつです。この小説、恋愛小説でありながら、実は経済小説めいた部分もあって、
経済小説っ子の私はちょっとそれが面白い。ただし、テニスのところは筆者の独りよがりが続きますので、それは難点ですね。一人で暴走
するなよぉ〜とつっこんでやりたくなります。