あらすじ
吉野愛子と別れたテニスボーイは、仕事で訪れたサイパンで、今度は22歳の処女、本井可奈子と知り合う。またしても彼は愛人にのめり 込んでしまうが、今度はもうちょっと上手く愛人との関係を保っていた。仕事も軌道に乗り、3店あったステーキ店は5店に、またサイパン にステーキレストランを出店する事になった。子供への愛情も芽生え、順風満帆な生活を送っていたが、本井可奈子は遂に・・・。
感想
この小説は上下巻に分かれていますが、なぜかといえば、それは「愛人が違うから」です。最初は吉野愛子、次に本井可奈子。奥さんは ないがしろにされてしまっていますが、それはそれでいいみたいです。テニスボーイは、最初は盲目的に愛に飛びつき、次はその失敗だか 経験だかを踏まえて、成長した愛人との逢瀬を楽しんでいます。しかし!本井可奈子との愛は終盤、やっぱり恐れていた事体に陥ってしまい ます。これは型どおりの流れではありますが、なんだか妙にリアルでした。あぁ〜なるほどやっぱりそうなるかぁ〜と。
「老人と海」と同じように、ひたすらテニスボーイの一人称が続き、他の人は他人としてあんまり物語には介入してきません。テニスボーイ の心の変化と、愛人との逢瀬、テニスへの愛情、それだけが続いていく小説です。それがある意味では平坦でつまらないような印象を与え ますが、テニスボーイの苦悩する姿が、そういう退屈を退屈でないものにしてくれました。それにしても、テニスボーイはなんてプレイボーイ なんでしょうねぇ。。。バブル前夜の、軽い男って感じですね。乗っている車は重いのに。
私が好きなのは、ヤマザキという元極道のオッサンとの関係。彼はテニスボーイが営むステーキハウスのシェフとして存在しているキャラ ですが、テニスボーイの側近であり、彼のことを良く理解する理解者であり、年上なのに舎弟なんですね。彼は最初、スワッピング大好きで 四六時中セックスの話ばかりしているキャラだったのですが、彼の中の何かが変化していって、スワッピングを止めてしまいます。彼も そういう意味では実は成長しているんですね。ん〜成長というか、成長を伴わない変化といった方が良いのかも。
殆どスポットライトを浴びてこないですが、経済小説としての側面、それが私には面白かった。ステーキハウスを大きくしていって、更に 店舗を増やし、ブ牛評という組合を組織して、サイパンにも出店をする。ブラジルに肉の買い付けの交渉をしにいったりなど、ある意味では この小説は経済小説になってしまいます。高杉良がこのテーマを小説化させるとしたら、それは完全なる経済小説になってしまいますね。 私が小説にするとしたら、どうなっていたろう・・・とか思ってみたりしました。
面白いかどうかで言えば、ちょっと難しいところです。深いテーマがあるような気がしますが、それが何かといえば、実はそんなに深い
テーマではないような気もしてきます。それは筆者の作風のなせる業なんでしょう。とにかくテニスの記述が、独り歩きしてしまうところは
ありますが、こういう小説は結構新しくて、なんだか悪く無かったです。初心者で読むような小説じゃないかもしれませんが、一度読んで
みても良いかも。