あらすじ
東京三菱銀行に勤める、旧東銀出身の銀行員が、日本の銀行の悪習、また旧三菱銀行の悪習を白日の元に晒し、激烈な大批判を繰り広げる。
感想
この本が出版されたのは1998年の8月のことでした。この2年前、三菱銀行と東京銀行は、組織の三菱と言われている、三菱銀行に半ば 吸収されるような形で合併(表向きは対等合併)しました。作者はどうやら、旧東銀側の人間で、東銀の自由で国際競争力のある行風に馴染んで いて、旧三菱銀行のスタイルが、どうも日本の悪しき習慣の見本のような気がしてならないと思っているようです。
前半はひたすら日本的銀行スタイルの批判に終始します。護送船団方式と呼ばれ、国内の殆どの銀行が大蔵省によって手厚く保護されていた 頃。MOF担とよばれる、大蔵省へのスパイ&御用聞きが銀行員のトップエリートであった時代。そんな日本スタイルに嫌気がさしている 筆者によって、もうこれでもかと批判を繰り返します。
筆者は、国内では外国に強い東京銀行の行員であったので、なるほど外国的な経営にはなれているようです。小粒でピリリと辛い、優良行 であった東京銀行。しかし、組織の三菱といわれ、旧態依然とした行風を持つ三菱銀行と合併して、数の論理で旧東京銀行の行員は辛い目 にあわされているようです。大きいものと小さいものが合わさったときは、やっぱりどんな世界でも大きいものが有利になるのは当然です。 三菱銀行というのは、旧財閥系の銀行であり、金曜会などに代表される、系列の横の企業とのつながりが非常に強固な銀行。座っていても そのグループ企業内から仕事が回ってくるという、非常に恵まれた環境下にあります。また古い歴史がそうさせるのか、行風も猛烈社員が 多く、また官僚的でお堅い行風であると、筆者は説いています。
日本の銀行、とりわけ三菱銀行というのは、どうやら1つの仕事をこなすのにも幾つもの部署で協議を行い、なかなか先に進めないそうです。 ハンコを沢山貰わないと仕事が進まない、それが旧三菱、またこれまでの日本の組織の現状で、それでは国際競争に勝つことは出来ないと 筆者は力説していました。そういえば、最近も東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)不祥事が発覚しました。これはある行員が、個人で働 いた悪行であるようですが、それをチェックするために、これだけハンコを必要とするシステムが出来上がったのに、それが上手く機能し ないというのは、本末転倒も甚だしいところです。
企業の風土というものは、そうそう簡単には変えることが出来ません。自分が今まで馴染んできたもの、生き方をいきなり変えろといわれても、 簡単には変えられないのと同じです。筆者は、それでも改革を断行しないと、東京三菱銀行というものは消えてなくなってしまうと、危機感 を煽っています。8年後の2006年、東京三菱銀行はUFJ銀行と合併して、預金高世界最大のスーパービックバンクとなりました。 不良債権の処理も進み、今世紀最大の含み益をもたらしているようです。それからすると、筆者が懸念した問題はスムーズに解決したように 思われますが、さて実態はどうか?表面的な面では大成功したかに見えますが、内部ではどうなのかは、それは内部を見てみないと分かりませんね。