あらすじ
高校2年生の千津子、中学2年生の実加。二人の姉妹は、背が低いけどスポーツ万能で明るい出来るお姉さんと、ひょろっと背が高いが、 痩せてどこか内向的なところがある妹。二人は仲良しで、同じ私立の学園に通い、同じピアノ教室にも通っている。ある日、通学中に姉が 事故に巻き込まれて亡くなってしまう。その後、実加は姉とともに通っていたピアノ教室へと向かう道すがら、暴漢に襲われそうになるが、 突然頭の中に姉の声がこだまする。死んだ姉は、実加の心の中で生きていたのだ。
感想
赤川次郎氏の作風は、現代的で軽いノリの作風で、それが現代人の心を深く掴んで話さない原因だと、この本の解説では述べられていました。 なるほど確かに、氏の作品は湿っぽいところがなく、いつも明るく元気な少女が、困難に立ち向かっていって成長していくという話が多い ような気がします。この「ふたり」でも、よく出来た姉を亡くした妹が、姉の亡霊と一緒に少しずつ成長していく物語で、妹は最初暗かった のにちょっとずつ明るくなっていって、学校行事に恋に家庭内でのトラブルに、様々な出来事を通じて成長していきます。姉の助言を借り ながら。
これまで赤川次郎と言う人のこと、実はちょこっとこばかにしていたと言うか、所詮は子供向けな軽い話ばかりなんでしょ〜とたかをくくって いたのですが、そんなことはない非常に深い、それでいて面白くて感動的で、ある意味他の”深い”とされている作家の作品よりも、ずっと 深い作品を書いている人なんじゃないかと思いました。ちょっと前に会社の後輩と本屋に行ったときの話ですが、彼は「赤川次郎ばっかり 読む人は、ほんとに赤川次郎ばっかり読みますよね」と言っていました。なるほどそれも分かる。赤川次郎という人の作品は、どの作品も カラッと明るくて、どんな作品を読んでみても読了後の爽快感を感じさせてくれます。精神的に健全な作品を書く作家だなという感じです。
物語は、千津子が交通事故に巻き込まれて亡くなってしまうところから始まります。しっかり者でよく出来た姉、背は低いけど、かわいい タイプで人気も高かった姉。その姉がトラックの車体に挟まれて亡くなるシーンが、私の最初の涙腺刺激ポイントでした。電車内だったので こらえましたが、一人で読んでいたら泣いてしまったかもしれません。妹思いで家族思いの姉。本当によく出来たお姉さんでした。
私はそこで姉は全く出てこなくなると思っていたのですが、あとですぐ、姉が亡霊となって妹に取り憑く(!)ということを知り、かなり 驚きでした。よくよく考えてみれば、タイトルが「ふたり」なのですから、例え亡くなっても姉がいなくなる事はないということに気がつけば 良かったと少々・・・。
実加が暴漢に襲われるところは、ちょっと嫌な気分でしたねやっぱり。女性にとって、いや男性にとっても、自分の存在を脅かす脅威という ものにたいして、声を出す事も出来ないくらいの恐怖を感じるというのが、このシーンから良く伝わってきました。ただしおかげで姉が 妹の心の中に取り付いていることを知った訳で、実加でなくても「暴漢に襲われて良かったのかも!?」と思ってしまいます。
実加って、意外とちゃっかり者というか、そういう等身大なキャラクターが結構魅力的だったりします。姉の力を借りなくても、彼女は そのうちその魅力を引き出せるようになっていって、スターのような人気は出なくても、その魅力を分かってくれる人が出てくるんじゃないか ななんて、そんな風に見てしまいました。実加はその後、同級生の兄といういかにもな人物と付き合うことになるのですが、それが彼氏 彼女という関係ではなく、それこそ手をつなぐ事すら恥ずかしいというくらいの、純情な付き合いをしていくのですが、そのあたりがまた 好印象を与えてくれます。
誰にでも読みやすいし、誰でも共感できる非常によい本です。中高生の読書感想文に最適なんじゃないかなと。