あらすじ
17歳の女子高校生である「あたし」は、2歳年上の知的障害をもつ兄と肉体的な関係を持っている。そんな彼女はテレファックスという 名の買春をしている。錯綜する性と、破壊されていく家庭。そんな中、彼女は自分の出生の秘密を知り、また兄の子を妊娠してしまう。
感想
この作品は、桜井亜美という人のデビュー小説とのことですが、最初っからこの人、すんごい作品を書いてます。あまりにも飛ばしすぎ な性行為描写。村上龍の「トパーズ」や、馳星周の「M」を彷彿とさせる、東京に生きる若い女の売春行為(彼女の年齢では”買春”が妥当 でしょうが)というのが、ここまでさらっと書かれていいのだろうかという疑問が湧いてきます。私からは、かなり近いけどどうしようもなく 遠い世界です。
売春行為をしていて、更に兄と肉体関係にあるという、凄まじい少女。しかし彼女は自己を喪失しているのか、感情が希薄で読み手から みるとあまり何を考えているのかが分かりません。わからないというのは、もしかしたら大人の目線からの感想なのかもしれません。彼女は どうも人を信じられない、親を信じられず、社会を信じられず、大人を信じられない。だから思考はとことんまでマイナスで、生きる希望 のようなものはあんまりないようです。それが若者の平均値なら、私も多少身に覚えはありますが・・・。
彼女は感情が希薄だけど、兄を愛する気持があって、とある中年男に深い情を抱いたりする。つまりは、彼女は愛情に飢えていて、真実 に飢えているんだろうなということ。真実と言うか、正直な本当の気持ちを曝け出して欲しいという思いが実はあったようです。そういう ところなんかも、どうも現代の若者が持つ喪失感というものを見事に映し出しています。その点で、私はかなり共感しました。ただし、彼女 のようになんかなりたいとも思わないし、彼女のような喪失した人間ではないなと、自分では思っています。共通するのは、体の中からどう 頑張ってもマイナスのオーラが抜けないところですかね。
売春したり、近親相姦やったり、家庭不和があったり、暴行されたりととにかく暴力的な、倫理的に反するような出来事ばかりが起こってきますが、 それは現代に生きる10代の少女が日々晒されている現実なのかもしれません。その現実に目を背けると、真実が見えてこなくなってしまい ます。もう10年前の作品なのに、その世界観はまったく色褪せないで、渋谷だのの情景なんかあまりにも今日的で、ちょっと驚きの一言 です。丁度ルーズソックスが全盛の時代、女子高校生が世界を引っ張っていった時代の、一番勢いのある年代を鋭く描写した危険な小説 でした。この作品は、決してフィクションではなくて、ノンフィクションの寄せ集めである事を先ず理解しないと、ちゃんとこの作品を 楽しむ事が出来ないかもしれません。