あらすじ
札幌の女子高校生、ホタルは15歳。彼女は16歳になる誕生日に自らの命を絶つ事を決めていた。最後の半年間、東京で過すホタルは、 「MEDA」という非合法組織と関る事になる。やがてその組織のリーダーと自分との関係を知ることになる。数奇な運命に翻弄される ホタルだが、16歳の誕生日まであと少しのところまで来ていた・・・。
感想
桜井亜美女史の作品を読むのはこれが二度目ですが、なるほど彼女のスタイルというものがわかってきました。彼女のスタイルは、自分 とその周囲の人たちの現状を、鋭い洞察力で描写する作風を取っています。それは作家にとってはごく当たり前な行為なのですが、彼女の 場合は作家と呼ばれる人たちがあまり棲むことのない世界の住人であったがために、その作品は大きな新鮮味を読者にもたらせてくれます。
15歳という、まだ人生の酸いも甘いも知らない年齢にして自殺を決めているという少女は、最後の半年間で様々な経験をします。読んで いくと、彼女は微妙に成長していきます。自分ではそれが成長だとは思っていないのかもしれないけれど、彼女は成長している。暴力に次ぐ 暴力というのは、都会に住む若い女性にとっては必然なのかもしれませんが、それにしても暴力的で、思わず目を背けたくなってしまう ような事ばかりです。
だからこそ、少女達は感情を希薄にして、暴力に晒される自らの身体を守っているのかもしれません。何かにのめりこむ事もなく、ただ 享楽的な人生を過す。それがどんなに退屈で、死ぬほどの苦痛である事を彼女達は知っているけれど、かといってそんな甘くけだるい世界 からは逃れられない。蟻地獄にはまってしまった少女達は、更なる地獄へと旅立っていきます。
物語は短く、またもうちょっと肉付けしがほうが面白いのに・・・と思うところも多々あるのですが、しかし短い物語の中に、十分すぎる ほどの濃密な世界が流れています。村上龍のデビュー作と同じように、その表層的な出来事は相当にぶっとんでいて、先ず読者はそこに騙され てしまいます。しかしその奥底には、傷つき易い少年少女たちの叫びが聞こえてきて、これまた現代をかなり鋭く描写しています。そういう ところに、同じ傷つき易い若者である私は共感したんでしょうね。
作品としては短過ぎるというのがまずあって、また出来事が衝撃的過ぎて、しかもそれについてフォローがなされないままにただ垂れ流す ような感があるので、あんまりオススメできない部分もあります。個人的には、この物語から更にイメージを膨らませていけそうな、そういう 可能性を見出しました。彼女の作品、今後も大注目です。