19歳−一家四人惨殺犯の告白


タイトル:19歳
作者:永瀬隼介
出版元:角川文庫
発行日:2004年8月25日
形式、ページ数:文庫、236ページ
難解度:★★
ためになる度:★
感動出来る度:×
面白さ度:★★
おすすめ度:★

あらすじ

 1992年に市川市のマンションで一家4人が惨殺された事件。この事件を起した犯人の生い立ちから事件の詳細、犯人の深層心理、 死刑判決までを描く。

感想

   とにかく、むっちゃくちゃ重いです。重くて重くて、読了後スッキリした気分になれる人って皆無だとおもいます。これほどの狂気、 凶悪な殺人犯なんて、そうそういないです。ちょっと辛すぎです。。。。。

 この本を読んだ後、ちょこっとネットで検索しました。すると、2ちゃんねるのスレにたどり着いたのですが、やはり多くの人がこの 事件に対して嫌悪感をもっている事がわかりました。それと、意外と知名度の低い事件だったなということも。最初、事件当初は犯人の少年 に乱暴され、家族を目の前で殺された少女は共犯者として報道されていたらしいです。記者の解釈では、これだけ酷い目にあって、それでも 犯人とずっと一緒にいて、しかも一緒にホテルまで行っている(もちろん、犯人に脅迫されて)事に対して、釈然としないものがあったようです。 事件前に、犯人に強姦されていて、それでいてその事件があまり大事になっていない(家族に話して通報するとか)ことが、実は犯人と共犯? という解釈に向かわせたようです。

 犯人の生い立ち、少年時代などの記述は非常に詳細で、実際に犯人に会って、何度も何度もリスニングを重ねた結晶が、これほどのものを 作り上げたんだろうと。それと、犯人の少年の知能の高さ、少年の記憶力は素晴らしく、少年時代に住んでいた土地の地理もほぼ完璧で、 また19歳にしてフィリピン人女性と結婚する手続きをとる行動力なども、もしこれがプラスに作用すれば、今ごろ社会の第一線で活躍 できていたのに・・・と思うと、なんともやるせない気持ちになります。

 千葉県の市川市というのは、私の住む柏市からすぐで、しかも犯人が少年時代をすごした葛飾区青砥地区や、江東区越中島、犯人の祖父 が経営していたうなぎ屋や、犯人がフィリピン人女性と住んでいた船橋市などなど、本当に私の生活圏で起こった事件ということで、衝撃 は更に強いものになっていました。というよりも、そういう背景があったからこそ、この本を手にとったと言えるのかもしれません。自分の 住む土地のすぐそばで起こった事件、これは一体なんだ?という思いが、この本を手にとらせた要因であることは間違いないです。

 私はよく、こういう事件を起した犯人と比べて、さてどうなんだろう?と思うことがあります。彼らと私の決定的な違いはなにか?なぜ 彼らは犯罪を犯してしまい、私はなにも(軽犯罪を除く)起こさないのか?恐るべき猟奇殺人を起こす犯人と、善良な一般市民の間にある 溝というものが、どのあたりにあるのだろうかと考えると、生まれる前の要因(この事件の場合、犯人の母が流産予防薬を乱用したという 説)もあり、また生まれてからの要因(父親の暴力、母親の過剰な監視と、希薄な愛情表現)がやっぱり大きいようです。

 「すべてをなかったことにしたい」とか「事件を起したのは親のせい」とか「あの女(被害者の少女)は俺と一番近くにいたのに、 なんで取材を受けないんだ」などなど、自分勝手で全てを人のせいにする性格は、ちょっとどうしようもないです。ただ、よくよく考えて みると、そういうところ自分にもあるなと、自分の年齢や住んでいるところとの類似点も含めて考えてみると、やっぱり複雑な思いにかられて しまいます。ただ「この犯人は鬼畜だ」とだけ考えるというよりも「この犯人の気持になって」考えてみると、なんだか自分の中の闇を 垣間見るような、そんな感じにもなりました。

 被害者で唯一生き残った少女は、家族の郷里に引越し、そこで大学に入り、結婚して、今は海外で幸せに暮らしているようです。事件に 関った全ての人(作者自身も、犯人との接見をするうちに強いストレス状態となり、駅のホームで昏倒。地面に顔面を強打してアゴや歯が ボロボロになってしまったそうです)が不幸になった中で、一番不幸になったはずの少女が、すこしでも幸せになれれば、それが唯一とも いえる救いかなと、それだけが救いという、本当に救いのない話です。  

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