青の炎


タイトル:青の炎
作者:貴志祐介
出版元:角川文庫
発行日:1999年15月5日
形式、ページ数:文庫、487ページ
難解度:★★
ためになる度:★★
感動出来る度:★★★★
面白さ度:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

あらすじ

 高校2年生の櫛森秀一は、自宅のガレージを自ら改造したり、バイトで貯めたお金でロードバイクを買ったり、充実した日々を送っていた。 しかしそんな平和な日々に突如として悪夢が訪れた。過去母親が結婚していた相手、曾根が現れ、我が家に居座り始めたのだ。曾根は母のみ ならず、中学生の妹まで手を出そうとしているようだ。秀一は家族を守るため、曾根を完全犯罪によりこの世から「強制終了」させてしまおう と画策する。

感想

   読み始めてすぐに「これは面白い!!」と物語の世界に没入してしまいました。冒頭から巻末まで、480ページ以上にも及ぶ長編ですが、 もうあっという間でした。最初、曾根との見えないバトルがあり、その後別のバトルがあります。その中で根底にあるのは、主人公の秀一が 自らの罪の意識との葛藤や闘い。読んでいる方もどんどん感情移入していって、秀一と同じ思いにさいなまれます。

 この小説は「倒叙推理小説」というジャンルに入るようです。通常の推理小説は事件があり、その謎を解いていくものですが、倒叙小説の 場合は、犯人の視点からスタートし、犯罪を計画し、遂行し、それが露呈しないように注意を払う。そういうものなんだそうです。またこの ようなジャンルの常として、犯行は必ず明るみに出るというものでもあるようです。主人公である犯人が、一体どうして犯罪を計画したのか? またそんな犯罪をどのようにして行うのか?第三者(脇役)はどうやってその犯罪を暴いていくのか?自ら犯した犯罪が暴かれていく中で、 主人公はどんな思いをしていくのか?そういう心理描写が特に丁寧に描かれるのが倒叙小説なんだそうです。

 この小説には数多くの実在する地名が登場します。またインターネットを駆使して、情報を得るなどのシーンもあります。そういう面が、 なんともいえず感情移入をさらに高めさせてくれます。そういう物語を更生する際のリアリティを追及する姿勢が、この作品を名作たら しめているのではと思われます。ひとつ疑問と言うか不満があるのは、主人公以外の人間の心理描写が微妙に少ない事。母の心理、妹の 心理、ガールフレンドの心理、最後に曾根や石岡、他の同級生、刑事や先生の心理などが、もうちょっと加わればもっと感情移入できた かなという気もします。

 私はこの小説を読んだあと、他人を絞殺する夢を見ました。むちゃくちゃ怖かった。小説でもあるとおり、人を殺した事の恐怖は、自分が 殺人者であるという事実が一生付きまとってしまうという所だと思います。自分がした事をたまに後悔する事は誰しもあると思いますが、 それがこと殺人と言う行為であった場合、その後悔の念はどれほどの事か・・・。

 ラストはこんな展開になって欲しくなかった。彼は家族を想うばかり、こういう選択を採ったのでしょうが、だからこそ違う選択肢を 採って欲しかった。ラストばかりではなく、最初から彼は間違った選択をしてしまっていたと思います。悲しい小説ですが、名作ではあります。

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