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100m (WR 9.78)
世界記録保持者のモンゴメリー(米)は、ドーピング疑惑がかけられたことが影響したのか絶不調。全米の選考会で漏れてしまった。ディフェンディングチャンピオンのグリーン(米)、今季ランキング1位、9秒88のクロフォード(米)、直近2レースでグリーンを破ったパウエル(ジャマイカ)の三つ巴の争いになりそう。このところの成績からするとパウエルに勢いがあるが、グリーンは97年の世界選手権で初タイトルを取って以来、五輪を含めて世界大会4連勝と、大試合には滅法強い。今のグリーンにかつてのような絶対的なアドバンテージはないが、過去2年間の不調から脱し、大試合での経験豊富なグリーンとした。末續(日本)は、この種目ではファイナリストになればよくやったと言えるのではないか?この種目は200mに比べて層が厚く、メダルは現実問題、かなり厳しいと思う。個人的には、昨年世界選手権を制した、カリブの小国、セントクリストファー・ネビスのコリンズに今回も勝ってもらって、ぜひ国家を聞かせてもらいたいのだが・・・。昨年は本命不在の大混戦で皆が固くなって、記録が伸びない中勝利をさらっていった感じだが、今年は大試合で経験豊富なグリーンがいるから、その展開はないか?
200m (WR 19.32)
シドニー五輪チャンピオンで地元ギリシャの英雄ケンデリスが薬物検査を受けなかったため、五輪に出場せず、汚れた英雄になる可能性が高い。4月に17歳にして19秒93の記録を出した超ジュニアのボルト(ジャマイカ)は、その後脚を故障した模様。となると、19秒88の今季世界最高を出し、全米も制したクロフォード(米)が最有力だろう。全米でクロフォードと0.02秒差で2位に入ったガトリン(米)も有力候補。
400m (WR 43.18)
MJ(マイケル・ジョンソン)が抜けた後、主役不在の大混戦が続いているこの種目だが、今年も飛び抜けた主役はいない。その中で好調なのが、グレナダのフランシクで、今季コンスタントに各レース勝っている。ランキング1位は、44秒37で全米を制したアメリカでは珍しい白人スプリンターのウォリナーでMJの大学の後輩でMJのコーチを受けている。この2人の対決になりそうだが、コンスタントさを買って、フランシクとした。
800m (WR 1:41.11)
この種目も400mと同じで抜け出す存在がおらず、混戦模様。この中でリードしているのは、昨年ランキング1位で、今季も8月始めのチューリッヒで1分43秒06のランキング1位のタイムをマークし、強豪を破ったブンゲイ(ケニア)だろう。対抗は、昨年の世界選手権銀のボルザコフスキー(ロシア)か?ボルザコフスキーは序盤は後方待機で、終盤の爆発力で勝利をもぎ取るレース展開をし、一時は将来第一人者なりそうな雰囲気も漂わせていたが、最近は勝ったり負けたりで、どうも伸び悩んでいる様子。この種目は、1分42〜43秒の比較的速い展開になると、持ちタイムが反映される結果が出る傾向があるが、1分45秒を越えるような遅い展開になると終盤まで集団が崩れずに来るので、ポケットされたり、外側に大きく膨らんだりと、走力以外のポジショニングも大変重要になり、思わぬ結果になることがある。2000年シドニー五輪もそんなケースで、良いポジションにいた、この時代に持ちタイムわずか1分44秒22に過ぎない(約40年前に大活躍したスネル(ニュージーランド)の1分44秒3とほとんど変わらない。しかもスネルの時代は土のトラック!)シューマン(独)が、最後の直線でスルスルと抜け出し、外側から大きく膨らんで猛追してきた世界記録保持者のキプケテル(デンマーク)を0.06秒差でかわして1分45秒08で金メダルをさらってしまった。キプケテルにはもう全盛期の力はなく優勝はちょっと厳しいかもしれないが、レース展開のまずさで金メダルを逃したシドニー五輪とは逆に、レース展開に助けられて悲願の金メダルが転がり込んでくるかもしれない。
1500m (WR 3:26.00)
欧州では、この種目こそ花形種目である。その種目で、1997年以来世界の1500m界を支配し続けていて、IAAFのホームページでも、この種目で、H・エリオット(豪)、S・コー(英)と並んで偉大な選手の一人と紹介されているほどのエルゲルージ(モロッコ)であるが、1996年五輪では当時の王者モルセリ(アルジェリア)とラスト1周手前での接触転倒、2000年五輪では1000mの世界記録保持者ゲニ(ケニア)に最後かわされ銀メダル、未だ金メダルはない。今年は悲願の金メダルを得るための大事な年であるが、7月はじめのローマではまさかの8位惨敗。アレルギーによる呼吸障害が出て、練習に支障をきたしていたとのこと。その後、呼吸障害は問題なくなったとのことだが、8月の五輪直前のチューリッヒでは、B・ラガト(ケニア)に3分27秒40対3分27秒64で敗北。しかし、昨年のベストよりは速い。ラガト(ケニア)は速いペースでは強いが、遅いペースだと結構負けたりする。この2人ともラストにあまり切れがある方ではないので、速い展開を望むだろう。(エルゲルージは、またモロッコ人のペースメーカーを使うのか?)速い展開になればこの2人のどちらか。まだエルゲルージが完全に戻りきってないとみて、ラガトとする。エルゲルージも雪辱したいだろうが、昨年EPO検査で濡れ衣を着せられ、世界選手権出場をフイにしたラガトもまた雪辱に燃えているだろう。また、遅い展開になると、ローマでこの2人を破って優勝したモロッコからバーレーンに国選変更したラムジあたりに勝利をさらわれる可能性もある。
5000m (WR 12:37.35)
今季この種目で12分37秒35世界新を出したベケレ(エチオピア)は、当初10000m1本に絞るとも伝えられていたが、どうやらこの種目にも出場する模様。10000mと合わせて2冠となれば、1980年五輪で、母国の大先輩イフターが達成して以来の長距離2冠となる。もっとも1972年から1980年まで3大会連続で長距離2冠が達成されたのをはじめ、昔は長距離2冠は何ら珍しいことではなかった。ゲブレシラシエ(エチオピア)などは、当然2冠を狙えたが狙わなかったのをはじめ、力がありながら両種目にエントリーする有力選手がいなかったのが原因。ベケレは世界クロカンの3年連続2冠などの成績からもわかるように、現在の長距離総合力では力は一歩抜けている。当然優勝候補最有力。ただ、昨年の世界選手権で、ベケレとエルゲルージをラスト勝負で破って優勝したまだ19歳のキプチョゲ(ケニア)は、今年自己記録を12分46秒53の世界歴代3位にまで伸ばしており、10000mほどベケレが優勢とは言えない。エルゲルージ(モロッコ)はこの種目にもエントリーしているようだが、呼吸障害があったというし、この種目のトレーニングを十分積めているのだろうか?
ラスト勝負になれば、昨年のようにラスト600mから出ずに自分のスプリントに自信を持って最後の300mあたりまで我慢するならば、エルゲルージにも十分勝機がある。
10000m (WR 26:20.31)
この種目では、残念ながら昨年の世界選手権でベケレ(エチオピア)の勝利で、ゲブレシラシエ(エチオピア)との新旧対決に決着がついたと言える。更に今年はベケレが26分20秒31とゲブレシラシエの世界記録を更新してダブルパンチを見舞わせた。余程のことがない限り、ベケレの勝利は動かないだろう。これに26分39秒69をマークしたシヒネを加えたエチオピアのメンバーには、ケニア勢は歯が立ちそうもない。昨年の世界選手権に続き、今回も同じメンバーでのエチオピアトリオのメダル独占が濃厚。
マラソン (WR 2:04:55)
この種目には、五輪10000mで過去96年、00年と2大会連続銀のテルガト(ケニア)が、2時間04分55秒のマラソン世界記録保持者として出場する。テルガトの今までの成績を鑑みて、思い起こさずにいられないのが、1956年メルボルン五輪のマラソンで優勝したミムン(仏)である。ミムンは、48年、52年五輪10000mで、共に当時の偉大な長距離走者ザトペックに続いて2位であり、更に50年欧州選手権でもザトペックに続いて2位であった(50年欧州選手権、52年五輪では、5000mでもザトペックに続く2位)。テルガトも2回の五輪と2回の世界選手権の10000mで、これまた現代の偉大な長距離走者ゲブレシラシエ(エチオピア)に続いて2位であり、一人の偉大な選手の陰に隠れてトラックで万年2位だったという状況が非常に酷似している。しかし、ミムンは56年五輪で種目を変えてついに世界の頂点に立った。果たして今回、テルガトによりミムンの再現がなるのであろうか?
非常に楽しみである。ただ現状としては、テルガトは2001年にマラソンに転向してからどちらかというと勝負弱い面を多く見せてきており、今回どうであろうか?
強みとしては、そのスピードと共に、種目が違うとはいえ大試合では失敗したことがないという絶妙のピーキングであろう。なんだかテルガトのことばかり述べてしまったが、アップダウンが厳しいコースに高温下といった条件の上、女子に比べて格段に層が暑い男子、正直どんな結果になるか全く予想できないというのが本音である。日本勢も、有力どころのひとつと思われるスペイン勢あたりともそれ程タイム差はないのだから、入賞の可能性は十分ある。メダルは厳しいかもしれないが、あり得ないとも言えない。
110mH (WR 12.91)
この種目は、未だにA・ジョンソン(米)が第1人者であるが、昨年の世界選手権で、東洋人としては初めてメダルを取った劉翔(中国)が更に力をつけ、13秒06と今季ランキング1位のジョンソンと1/100秒差であり、レースでもジョンソンと大接戦を演じている。劉翔(中国)は、順当に行けば、東洋人として五輪初のメダルは取れそうだ。果たして男子トラック種目で、東洋人初の金メダルなるか?
勢いを買って劉翔とした。
400mH (WR 46.78)
この種目はサンチェス(ドミニカ)、この人に決まり。途中、ハードルを引っ掛けない限りまず優勝は揺るがない。為末(日本)は、銅メダルを取った01年世界選手権前と似た状態とのことで、この種目は意外と層が薄いので、決勝進出は十分可能だろう。
3000mSC (WR 7:55.28)
昨年は、ケニアからカタールに国籍変更したシャヒーンが、1988年以来の母国ケニアの連勝をストップさせたが、五輪では出場にストップがかかり、出場できない。今季ランキング1位で唯一8分を切っているポール・コエチ(ケニア)も、ケニアの選考に漏れ出場できない。キプルト(ケニア)が8分5秒52で出場者中今季トップであるが、ケニア選考会1位で、各大会でシャヒーンについで2位に入っているE・ケンボイ(ケニア)とした。ただ、ケニア勢も今回はあまり持ちタイムは良くないので、他国にも付け入る隙はありそう。昨年23年ぶりに日本記録を更新して8分18秒93をマークし、この種目としては31年ぶりの世界大会決勝進出を果たした岩水は、今年はまだ8分27秒46にとどまっている。現状では決勝進出は厳しいが、昨年と同じぐらいの記録を出せば、十分決勝進出は可能だ。
ハンマー投げ (WR 86.74)
今季、室伏広治(日本)のランキングは82m88でランキング4位。1位は84m46を投げた、昨年の世界選手権覇者のティホン(ベラルーシ)。確かに昨年室伏が投げた自己記録は84m86で、未だに現役世界最高記録保持者であるが、今季83m以上を3回も投げているティホン相手に優勝はかなり厳しいのではないか?
安定して6本をコンスタントに投げる力なら、室伏は世界でも群を抜いているが、成績は、あくまでも1本でも一番良い記録を投げたものが上になるので、現状ではティホンに分がありそう。昨年は優勝に室伏を挙げたが、今年はティホンとした。室伏は、油断はできないが、安定度からいってメダルを取る確率はかなり高いだろう。 |
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Women
100m (WR 10.49)
前回は、2位に0.37秒もの大差をつけて圧勝したM・ジョーンズ(米)という絶対的存在がいたため、この種目の予想はおどろくほど楽だったが、今回ドーピング騒動に巻き込まれたためか絶不調で、米予選会落ちしてしまった。今回はジョーンズ不在で、それに代わる存在もおらず、まさに大混戦で全く予想がつかない。この中で、タイムで目立つのは今季10秒77をマークした新星ラロワ(ブルガリア)で、2位のアーロン(仏)に0.18秒もの大差をつけている。ただ今季のセカンドベストが11秒06で、アーロンにも直接対決で破れており、どうも一発屋臭い。ただ、このタイムをマークしたことも事実なので、もしはまれば本番で素晴らしい走りをする可能性もある。ここでは若い爆発力にかけて、ラロワにする。
200m (WR 21.34)
この種目も前回五輪の覇者M・ジョーンズ(米)の不調による不在で大混戦。ランキング1位はV・キャンベル(ジャマイカ)の22秒18だが、2位以下に大きな差はない。ランキング2位のは、昨年17歳ながら高地記録であるもののジュニア世界新を出して話題になったフェリックス(米)。今季は、全米選考会を制して22秒28をマークした。昨年の世界選手権もそうだったが、結果的に薬物違反で金メダルを剥奪されたものの、全米を制したホワイトがその勢いで世界選手権も制してしまった。そういう意味では、主役不在の混戦のときは、全米選考会を勝ち抜く経験が大きな武器となるのかもしれない。ということで、勢いがありそうだということで、フェリックスにした。
400m (47.60)
昨年は無敗のゲバラ(メキシコ)の独壇場だったが、今年はその立場をウィリアムズ-ダーリング(バハマ)にその座を奪われてしまったみたいだ。ウィリアムズ-ダーリングは今季ランキングトップの49秒15をマークしただけでなく、連戦連勝、五輪直近のチューリッヒでもゲバラに勝っている。ゲバラは今季50秒を1回切っただけで、この劣勢を盛り返すのは厳しいのではないか?
順当にいけば、ウィリアムズ-ダーリングが勝つのではないかと思う。
800m (WR 1:53.28)
2000年代に入ってから、ずっと第一人者の座を守りつづけていて、ここ2年負けのなかったムトラ(モザンビーク)に土がついた。今季のランキングも1分57秒台の4位と、タイムもあまり良くない。しかし、1敗したとはいえ、それ以外は負けていないのだから、やはり第一人者であることは間違いないだろう。ムトラの上にいる3人は全員ロシア勢だが、トップのアンドリアノワの記録も1分56秒23と、取り立てて良いタイムであるわけでもない。2000年シドニー五輪以来世界大会で勝ち続けているムトラが経験を生かして、やはり順当に勝つのではないだろうか?
ただ、1990年代後半のムトラはキロット(キューバ)に簡単にひねられ続けていた脆い時期もあったし、最近の大試合を見ても、例えばM・ジョンソンとその他の選手のような絶対的な差が、他の選手とあるようには思えない。どちらかというと経験と顔で勝ってきているようにも思える。だから、ムトラといえども絶対ではなく、他の選手にも十分つけ込む隙はあるだろう。あと、女子のこの種目、日本から40年ぶりに出場する杉森美保は、日本人女子としては大偉業になる2分突破に挑む。この種目、予選では前半スローで後半グーンと上がるペースになりがちで、中々記録を狙うのは難しいとは思うが、日本選手権では終始独走で、誰の力も借りずに2分00秒46を出せたのだから、1周目57〜59秒で入る展開になり、後半競り合う相手がいれば、1分台を出せる可能性は大きいのではないか?
ちまたでは男子平泳ぎの北島康介の金メダルなどの騒ぎの影に隠れてしまうとは思うが、もし達成したら日本スポーツ界での大偉業だと思う。ぜひとも達成してもらいたい。
1500m (WR 3:50.46)
昨年3分55秒台を2回出し、優勝候補筆頭と思われたアイハン(トルコ)にドーピング隠蔽工作が発覚し、不出場。そんな中、01年世界選手権5000m覇者で、長距離走者と思われていたO・エゴロワ(ロシア)が連戦連勝で、一躍本命に躍り出た。しかし、ここではあえて今季5000mで世界新を出した新鋭アベイレゲッセ(トルコ)を挙げたい。アベイレゲッセの本命は当然5000mであろうが、1500mでもただ一人の3分台である3分58秒28をマークしており、2位のエゴロワを3秒近く引き離している。5000mとの日程の兼ね合いもあろうが、5000mの決勝が行われた翌日から1500mの予選が始まり、本命の5000mには支障をきたさない。5000mで勝って勢いに乗ったアベイレゲッセが1500mも取るとみたい。もしアベイレゲッセが勝てば、アイハンがトルコへもたらしてくれると大いに期待されていた金メダルを、元々エチオピア出身とはいえ、アベイレゲッセが代わりにトルコへもたらしてくれることになる。
5000m (WR 14:24.68)
なんと、昨年の持ちタイムが14分53秒56のランキング15位に過ぎず、ほとんど無名(厳密にいうと、昨年の世界選手権5位で、アスレチックファイナルも勝ったので、無名とは言えない)に近い存在だったエチオピア出身で現在トルコの新鋭アベイレゲッセが、今回の五輪では大本命に躍り出た。いろいろな五輪陸上予想を見ても、アベイレゲッセを優勝とする予想が圧倒的に多い。今まで実績を残した選手ならともかく、今季に入って急成長した選手でここまで評価を得る例も珍しい。世界新記録14分24秒68というタイムを出したこともさることながら、このレースで昨年世界選手権の覇者ティルネッシュ・ディババをはじめ、長距離王国エチオピアの有力どころをまとめて6秒以上の大差をつけて破ったというのが、大きいのではないだろうか?
という筆者もやはりアベイレゲッセを挙げる。しかし、現在女子では紛れもない世界一の長距離王国エチオピアの誇るトップ選手達が、まとめてエチオピア出身で現在他国所属となっている選手に完敗したというのも皮肉である。気になるのは、7月以降レースに出ている気配がないこと。故障をしていなければいいのだが。昨年18歳ながら世界選手権を制したT・デババは、今年も14分30秒88と自己ベストを着実に伸ばしている。ただ、そのとき世界新を出したアベイレゲッセに6秒差で完敗してしまったので印象が薄い。しかし、昨年よりも力がアップしているようなので、勝機はあるだろう。また、スローペースになり、今年37歳ながら世界クロカンショートの部で3連覇し、世界選手権3位のマサイ(ケニア)あたりが絡んでくると面白い。
10000m (WR 29分31秒78)
昨年の世界選手権の覇者のアデレ(エチオピア)は、体調が上がらず欠場の報が入ってきた。アデレ欠場の報を知った後にこの予想をするので、なにか後だしジャンケンのようで少々後ろめたい(筆者も、アデレ欠場を知らなければ、優勝はアデレにするつもりだったので)気もするが、知ってしまったものはしょうがない。もう出ないことが確定してしまった選手を優勝予想に挙げるわけにはいかない。こうなると、俄然注目を集めるのが、マラソンの世界記録保持者のラドクリフの動向である。ラドクリフは五輪に向けてマラソンを目指したトレーニングを積んできて、マラソンに出場することが濃厚とされたが、最大の難敵アデレ欠場の報を聞き、10000mにも勝機が十分にあると判断してこの種目に出場してくることも十分考えられる。ただし10000mは走った後のダメージが大きいマラソンの5日後に行われるので、10000mに万全を期すためにマラソンを欠場してこの種目に賭けてくるのか、それともマラソンを走った後に更にこの種目にもチャレンジするのだろうか?
マラソンを走らず、もしフレッシュな状態で臨めば、今季5000mで14分29秒11の世界歴代3位の記録をマークして絶好調なだけに、29分台で走れる力は十分ある。どちらにしても、ラストのスプリント力がないだけに、毎度お馴染みの最初からぶっ飛ばして後続を引き離す以外、ラドクリフにこの種目での勝機はない。ラドクリフ以外では、昨年の世界選手権2位のキダネ(エチオピア)がやはり一番手だろうか。アデレとエチオピア代表を
入れ替わった
T・ディババの姉のエジガエフ・ディババは、今季5000mで14分32秒74の好タイムを出しており、力はある。また、五輪3つ目の金メダルを目指すツルは、最近の走りを見るとちょっと厳しそうだが、しかしあのエチオピアチームにいるということは、やはりそれなりの力はあると見た方が良いのかもしれない。世界選手権3位の孫英傑(中国)は、冬に鎖骨を骨折したことが相当影響したのか、全くの低調。ただし、中国選手は本番で大変身をすることがよくあるので、不気味ではある。世界クロカンロングの部でアフリカ勢を大差で抑えて優勝した
ベニタ・ジョンソン(豪)は、台風の目になるかとも思われたが、北半球の屋外シーズンでは全くの低調で、もはや圏外。やはり南半球の選手が北半球に合わせるのは難しいのか?
マラソン (WR 2:15:25)
アテネの過酷なコースと30℃を越える高温下では、都市マラソンのような走りをするのは無理だとか、とかくこの五輪について世界記録保持者のラドクリフ(英)が力を発揮できるか疑問視する声も多い(特に、日本に多い。なんでだろ?)が、やはり2時間15分25秒という持ちタイムは別格である。ベスト2時間18分47秒のヌデレバ(ケニア)を除くと、それ以外の選手には5分以上も差をつけていることになる。仮にラドクリフが暑さにあまり強くないとしても、ベストタイムから5分落としても大丈夫だという事実を皆忘れているような気がしてならない。しかも、この環境下では他の選手もタイムを落とすであろうから、仮に優勝タイムが2時間22分台だとしたら、持ちタイムから7分も遅いペースでも良いということになる。これは非常に大きなアドバンテージである。トレーニングも順調にこなしているようだから、ポテンシャルは2時間15分を出したときと同じと考えていいであろう。それから、ラドクリフが前半から飛ばすと予想する人もいるが、それはないとみる。なぜなら、過去世界ハーフで終盤勝負で勝った経験もあるし、本人もマラソン出場者の中では一番ラストに強い(fastest
finisher in the
field)だろうと自信を持っているようだから、それなのにあえて前半から飛び出す愚行は犯さないであろう。下りに入る32km以降の勝負、最低でも中盤までは集団に待機するとみる。ただ、アデレ(エチオピア)が10000mを欠場することになったので、ラドクリフも10000mに十分勝機ありと見て、10000mに向けて万全を期すためマラソンを欠場することも十分考えられる。昨年の世界選手権の覇者、ヌデレバは、札幌国際ハーフで全く精彩を欠いた走りをするなど、元気がない。昨年は札幌での好走を本番の世界選手権につなげたが、この大一番を前にして、今年になって昨年と全く違う調整法に変えたとはちょっと考えにくい。ヌデレバはちょっと厳しいのではないだろうか?
日本勢は夏に行われる選手権での走りに定評があり、ヌデレバがだめとなると十分メダル争いに絡むことができる。それにしても、陸上競技マガジンの五輪優勝者予想では、日本人識者5人のうち、ラドクリフを優勝にした人は一人しかいなかった。これだけ飛びぬけた持ちタイムを持っていてこれだけ評価されない例も珍しい。(逆に、諸外国の予想ではほとんどラドクリフを挙げている。)筆者はあえて王道を行き、ラドクリフを推す。
100mH (WR 12.21)
この10年以上、この種目でずっと第一人者として活躍し続けてきた37歳のディバース(米)だが、世界選手権は3回勝っているものの、五輪ではなぜか勝てない。対してサブ種目と見られている花形100mでは皮肉にも2連覇の偉業を達成している。今季は、昨年の世界選手権を制したフェリシエン(カナダ)がランキングトップの12秒46をマークした他、コンスタントに好タイムをマークしている。勢いではディバースよりフェリシエンがあると言っていいかもしれない。ただ、ディバースは今まで優勝確実と言われてきてしばしばタイトルを落としてきているので、逆に圧倒的でない今の方が本番に運が回ってくるかもしれない。4大会目にしてやっと勝利の女神が微笑むことを期待して、ディバースとする。
400mH (WR 52.34)
世界記録保持者のペチョンキナ(ロシア)は、53秒71をはじめとして53秒台をコンスタントにマークしているものの、自己の世界記録には遠く及んでいない。直前に世界記録をマークして圧倒的な持ちタイムで迎えた昨年の世界選手権では、最後大失速してピットマン(豪)に抜かれ、非常に印象が悪い。今度はその辺は修正してくるのだろうか?
その世界選手権を制したピットマンは、五輪直前のチューリッヒで故障して、一時は五輪を断念したが、どうにか参加するとのこと。しかし、そんな状態ではやはり本番は厳しいのではないか?
こんな中、今年の全米選考会を、今季唯一53秒を切る52秒95で制したS・ジョンソンとする。 |