1月24日
- やはり三田まわりの方が確実だ。
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- 今朝は9時にTの家を出た。
- 午前中は出勤や買い出しのために神戸から大阪へ行く人は多いが大阪から神戸へ行く人は少ない。
- 電車も比較的空いていた。
- 迂回してでも昨日三田まわりで帰っていれば・・・。
- 今さらのように悔やまれてくる。
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- 大阪駅では私ぐらいの歳の女性が二人、話している。
- 「・・・で、会社側もそんな何時に出社できるかわからない女の子に勤めてほしくないみたいなのよ・・・。」
- どさくさまぎれに解雇する企業も多いと聞いている。
- そういえば最近TVで見たが、
- 20代ぐらいの女性が
- 「男の人は会社が素早く寮などに入れるよう用意したんです。
- でも私達にはそういう措置はなしで・・・。」ついでに解雇されたと話していた。
- 人の弱みにつけこむようなことを・・・と、腹が立ってくる。
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- 地下鉄への乗換駅谷上駅で電車を待っていると、後ろで男性二人が話しているのが耳に入ってくる。
- 「俺の家、食器が全部アウト。」
- 「俺んとこも、全部食器がアウト。」
- ほとぼりが冷めてきたら食器なんかも買い足さないと。
- いや、しっちゃかめっちゃかになった私の部屋からなんとかしないと。
- しかし、どこから手をつけたらいいのだろう。
- あの本棚をどうやって起こしたらいい?
- いや、その前に本棚の奥に落ち込んだ本を取りださなきゃ。
- 床にばらまかれた星砂も掃除しなきゃ。
- 考えただけでも頭が痛くなる。
- それほどメチャメチャになっているのだ。
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- 新神戸駅への地下鉄はさすがに混み合っていた。
- ここから中心街の三宮に出るのが一番近道だからだろう。
- 皆、救援物資と思われるリュックやバッグを持って大移動を始める。
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- 新神戸駅はホテルやショッピングゾーン、劇場などが入ったビル「OPA」の地下にある。
- 何か食料は売っていないかな。
- 小さな喫茶店が開いていた。
- カレーとコーヒーができると書いてある。
- どこで水を手に入れるのだろうと首をかしげつつ、温かい食べ物に飢えていた私は入って食べていくことにする。
- 店はいっぱいだった。
- どこかに空いた席はないかと見回していたら、
- 一番隅に座っていた男性が「いらっしゃいませ!」と、言って立ち上がった。
- 私服なんか着ているから客かと思ったが、店の人間が空いている席に座って帳簿をつけていただけらしい。
- 見ればウエイトレスもウエイターも皆、私服で立ち働いている。
- どれが客か店員かわからない。
- 「何にしましょう?」
- 先ほどの店員がメニューを持ってやってきた。
- 「カレーとコーヒー。」
- 「かしこまりました。」
- 店員は奥へと引っ込んだ。
- テキパキとウエイターやウエイトレスに指示を出している。どうやら彼はこの店の店長らしい。
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- 出てきたカレーは思いっきりレトルトの味だった。
- でも、このご時勢、温かいものが食べられるだけでも大満足だ。
- それにおそらくレトルトだからだろう。値段も500円と安い。
- 周りの人達を見ても、皆うれしそうにレトルトカレーをパクついている。
- 電車の中でもバスを待つ間にも感じられた殺伐とした空気はここには流れていない。
- なんとなく落ち着いた雰囲気が漂っている。
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- 食事を済ませ、店頭で売っていたクッキーを買ってバスに乗り込む。
- バスにさえ乗れば家まではすぐだ。
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- と、思ったがバスはいっこうに前へ進まない。
- この路線のバスは通常、三宮まで行くのだが、三宮ではビルが倒れたり道路が陥没したりでとてもバスが乗り入れられない状態だ。
- で、現在は新神戸前の次の停留所である加納町2丁目前が終点となっている。
- バスはそこからグルッと迂回して再び新神戸駅前を通って逆方向へと向かう。
- これが現在のルートなのだが、私は迂回前に新神戸駅前から乗っておけば確実に座席が確保できるだろうと読んで三宮方向へ向かうバスに乗ったのだ。
- しかし、それがそもそもの間違いだった。
- 異常な渋滞でバスは一向に前へ進まない。
- はっきり言って歩いた方がはるかに早い。
- 実際、しびれを切らして次々と下車する人が現れた。
- 加納町2丁目に着いたのは新神戸駅前を出てから20分後だった。
- たった一駅でこの時間のかかりよう!
- でも、これから迂回することだし道路も一気に空いた状態になるのでは・・・と、私は未だ甘く見ていた。
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- 全然進まない。
- しかし、今さら降りる気にもなれない。
- こうなったら意地だ。
- とことん渋滞に付き合おう!
- 私は大阪で買ってきた震災特集の雑誌を引っぱり出した。
- なぎ倒された阪神高速、焼け焦げた長田区・・・迫力ある写真がたくさん載っている。
- 「もう、開いている本屋さんがあるのですか?」
- 私が座っている座席のそばに立っていた中年の男性が声をかけてくる。
- 「いえ、これは大阪で買ってきたんです。」
- 男性は私が広げている雑誌の写真に見入っている。
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- ノロノロと進むバスが生田川横の道に入っていく。
- マイカーやら救援物資を積んだ車やらトラック、それに阪急電鉄やJRなどの代替バスなどが入り交じって大渋滞だ。
- 代替バスの中の客も皆、ぐったりした表情だ。
- 座席に座っている人はほとんど眠っている。
- 立っている人も頭を垂れてかろうじて吊り輪にぶらさがっている状態だ。
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- 結局迂回するのに1時間もかかった。
- 新神戸駅-加納町2丁目-新神戸駅
- これだけの距離、普段なら車で5分もあれば充分だ。
- たぶん、新神戸駅から自宅まで歩いていたらその所要時間で着けただろう。
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- 新神戸駅からは比較的スムーズに進んだ。
- 迂回の時の渋滞が嘘のようなスムーズさだった。
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- 父は早速私の買ってきた雑誌を広げる。
- 「わー、六甲道駅こんなになっちゃったのかー。」
- 近辺で開店している本屋はない。
- だから私が買ってきた雑誌も今では神戸では手に入らない貴重品だ。
- 物資が行き渡り始め、とりあえず切羽詰まった状態から抜け出しつつある今、欲しい物や情報は変わりつつある。
- 生きているだけでもありがたい、と言っていた状況から
- お風呂に入りたい、水が欲しい、洗濯がしたい・・・などの欲求が生まれる。
- こんな状況でそんな贅沢を・・・と、眉をひそめられそうなので、皆おおっぴらには言わないけれど。
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- 夕方、Yから電話が入る。
- 「昨日みたいな非常時には車に同乗させてくれてもよかったんじゃない?」
- つい、非難がましい口調になるのをおさえながら言う。
- 「え、だってよねちゃん先に帰る、て言ったから。」
- 「そんなこと言ってないよーっ。結局代替バスに乗ろうとしたらものすごく時間がかかるって言われて、仕方がないからもう一泊Tの家に泊めてもらったんだから。」
- ブチブチと言う私に
- 「んー、でも私も4時頃だったかな、千里を出発して家に着いたのは9時頃だったんよ。」
- と、Yも応戦する。
- でも、代替バスより早いじゃない、と言いたいのをかろうじて抑える。
- まあ、私も乗せてもらう側だ。あまり非難めいた事は言えない。
- 「明日、ウィークリーマンションに荷物運び込むんでしょ?
- またI君が車を出してくれるっていうからよねちゃんの荷物も持ってってあげようかと思って。
- 当分住むことになるんだからけっこう荷物持ってくでしょ?
- 私なんか家がどうなるかもわからない状態だし、自分の荷物はほとんど持ち出すつもりなの。
- で、悪いんだけど荷物入れたらたぶん3人は乗れないと思うから・・・。」
- 「いいよ、私は電車で行く。」
- 荷物を運んでもらえるだけでも大助かりだ。
- 実際、2、3回家とウィークリーマンションを往復する覚悟だったのだ。
- 「道路混むし明日早くに出発するから、今日中に荷物は用意しておいてね。」
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- しかし、こんなことになってもいっこうに神戸を完全に離れる気にならないから不思議だ。
- 父母も弟も、はなっからそんな事は考えていないのか話題にもならない。
- 私も昨日、会社の人に
- 「まだ余震が続いているんだって?こわいでしょう?
- お家の人達、引越したいって言ってない?」
- と、言われて、初めてそういえば誰もそんなことを言ってなかったな、と気がついたぐらいだ。
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- ウィークリーマンションも、ライフラインが復旧したらすぐにでも戻るつもりで考えている。
- そういえば西九条ってどの辺だろう?
- それも調べとかなきゃ。
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