意見書提出者への職場詮索と通報
東京都のアセス条例では都民が意見を述べることができます。意見を述べようとする都民は、意見書に住所氏名を明示ししなければなりません。
この情報は個人情報として保護されるのは当然です。
しかしながら、都民として意見書を提出した私の勤務先に「おたくの職員が意見書を出した」旨の通報があり、上司からその事実を質されるという事件が起こりました。
このことを次の2点で看過できない問題と考えます。
1.アセス審査の公正さを侵害する行為だと考えます。
住所氏名から勤務先を割り出すのは、極めて困難です。課税台帳を検索しなければ基本的には明らかにならない情報です。
アセス手続きの中で個人情報が公正に扱われると信じて意見書を提出した市民を裏切る事態です。
個人情報の詮索を詮索
先に見たように、行政のアセス審査能力は基本的な誤りを犯すほどに低下しています。事業者は環境の専門家ではないので、誤りを発見できないことはあり得るでしょう。しかし、事業者から評価書案作成を受注した環境コンサルタントの技術力が低下していることは明らかです。
環境アセスに関係する行政を含めた業界全体の技術能力が低下している心配があります。
私は大気や水質の専門ではありませんが、音響関係では経験を積んできました。
このようなずさんな審査で市民の前に評価書案が出されてくるのを見て、音響技術者集団が愚弄されていると感じずにはいられません。
しかし、このことは音響技術者集団の方にも責任の一端はあり、日ごろ行政が作成する資料について監視し、指導するという社会的役割を怠ってきた面がないとはいえないからです。
多くの音響関係の先生方が行政の審査会の委員などを引き受けてくださって努力いただいていることも事実ですが、やはり、現実の足元のところのずさんさを見逃してきたことは否めないでしょう。
騒音制御の最新号の巻頭言で、藤原副会長がやはり行政内部の能力低下を指摘しています。
多くの音響技術者はその職域を通して社会にコミットし、貢献していますが、私は今回の例から職域を越えて一人の音響技術者としてその知見の社会還元をして欲しいと考えます。
市民社会の側からも、音響技術者が一人の人格として見えてくる、そのような努力が必要ではないかと考えます。
そのためにも、今回出会ったような「勤務先の詮索、通報」という行為は看過できないのです。