旅日記
車で旅をするものにとって、道の駅という施設はとてもありがたい。ここにはちょっとしたレストランと、その地域の農産物などの直売所と、地域のいろいろな情報を手に入れることができる事務所などがあり、そして、必ずトイレと休憩所がある。こうした施設というものは車社会にとっては大変便利であり、ここを利用する車旅の旅行者が増えている。
こうした旅行者のなかでも、大変ユニークなのが旅車(たびぐるま)を利用する人たちである。旅車というのはわが国では一般にキャンピングカーといういい方をしており、欧米諸国ではモーターホームといういい方をしている。旅車もピンからキリまであり、大型のアメ車をベースとした本格的なものから、軽トラをベースとした手作りのものまで、その中身はきわめてバラエティーに富んでいるのだが、それぞれに個性があって面白い。
こうした旅車にとって、国土交通省の肝いりとそれぞれの自治体の努力で全国的なひろがりをみせている道の駅は、便利この上ない宿泊所となるわけである。人にとっての必須条件は、食うものが手に入ること、排泄するための施設があること、そして眠るところがあることである。旅車についてはどのようなグレードのものであれ、眠るところは確保されているのが普通であり、最近の乗用車、とくにワンボックスカーとかミニバンなどといわれるものは、座席を展開すればフラットなベッドに早や変わりするようになっている。つまり、車で旅する人たちには道の駅という施設さえあれば生活の最低条件がほぼ完全に確保されていることになる。
道の駅にもいろいろあるが、最近とくに注目されているのが温泉のある道の駅である。これは、道の駅そのものの施設として温泉施設をもつもののほかに、道の駅に隣や近くに日帰り温泉施設があるものも含まれる。ともかく、一夜の宿を道の駅に求める人たちにとって、そこに温泉があるというのは大きな魅力である。いうまでもなく、日本人の多くは温泉大好き人間なので、ただでさえ便利な道の駅で温泉にも入れてしまうということになれば、その道の駅の人気が沸騰するのは間違いない。わが国のオートキャンプ場は料金が高すぎるので、シーズンオフにはよほどのところでない限りは閑古鳥が鳴いているのだが、道の駅に関していえば、温泉つきともなるとシーズンと曜日を問わず、普通車に混じって数台の旅車が駐車場で夜を明かすのを見かけるものである。
以下、ごく最近歩いてきた北関東と東北南部の4つの温泉のある道の駅についての印象を述べてみたい。
まず、道の駅「はが」(写真上)は栃木県芳賀町の県道69号線(宇都宮茂木線、別名柳田街道)にある。この芳賀町というのは栃木県の中心である宇都宮市の隣町であり、宇都宮の中心街から10キロ程度と近いのだが、なかなかひなびた静かな町である。道の駅「はが」の情報センターに立ち寄ると、この町が積極的に町を売り出そうとしている意欲が感じられる。町を紹介するパンフレットが多彩であり、町そのものの活気が伝わってくる。
道の駅にある温泉は、源泉が二つあるが、いずれも大差はないようで、温度は29度から33度、湧出量は毎分150−160リットル程度のナトリウム塩化物を主成分とした温泉である。屋内大浴場のほかに露天風呂とサウナを備え、結構気持ちのよい湯であった。この温泉施設は「ロマンの湯」と名づけられており、入浴料は大人500円である。
道の駅にはつきものの地場産品の販売コーナーは野菜類が中心であるが、農家の手作りのお惣菜なども売られていたのは印象的であった。駐車場は物産関係の施設の近くと、温泉施設の近くの2箇所にわたってあり、前者のほうが使いかってがよい。駐車場はかなりの広さであり、全部で270台以上が停められるという。
道の駅「きつれがわ」(写真上)は栃木県喜連川町にある。この町は芳賀町よりも温泉町としての知名度が高いが、その歴史はそれほど古いものではなく、温泉が湧出したのは昭和56年のことであるという。今では温泉宿も増えて、それなりに温泉町としてもその名が知られている。源泉によって湧出温度は異なるようであるが、泉質は「はが」と同じようなさっぱりした感じである。道の駅で手に入れたパンフレットによると、喜連川温泉には日帰りで入れるところが少なくとも8箇所はあるらしく、その料金も300円から700円までとリーズナブルである。
道の駅は特産物直売所のほかにアーケードの中には小さな食べもの屋が並んでおり、なんとなく楽しい雰囲気がある。温泉施設は屋内大浴場のほかに露天風呂とサウナを備え、泉質はさっぱりしたナトリウム塩化物系のものである。ここには裸で入る普通の風呂に加えて水着着用のクアハウスがあり、料金大人500円で温泉風呂とクアハウスの双方を楽しめる。裸で入る温泉風呂からクアハウスに直接入れるようになっているが、そこは水着着用が必要の男女混浴というわけである。普通、こうしたクアハウスの場合には料金が別料金となって高いのだが、ここは風呂と共通なので割安である。しかし、今回はクワハウスに入らなかったのでその内容についてはわからない。
駐車場の規模は道の駅「はが」よりも小さいが、それでも100台以上の車は駐車できる。駐車場のはづれには未舗装の広場があり、そこにも駐車できるので駐車スペースはかなりのものである。大型専用の駐車スペースも完備しており、トラックの駐車も可能である。この大型車用の駐車スペースで一晩泊まったが、未舗装の広場には欧州車ベースの旅車が一台泊まっていた。舗装された駐車場はわずかに傾斜があるが、未舗装で砂利敷きの広場は平坦である。
道の駅「奥久慈だいご」(写真上)は茨城県北部の大子町にある。ここは大子温泉や袋田温泉で昔から有名な温泉地である。道の駅は国道118号線にあり、JR水郡線大子駅からだと駅正面の商店街を抜けて久慈川を渡った対岸に位置する。
道の駅の温泉施設は建物の二階にあり、大人500円であるが、その浴槽は大きくない。また露天風呂もなく、いかにも必要最低限の風呂を作ってあるという雰囲気である。これでもナトリウム硫酸泉の正真正銘の温泉であるから、道の駅に車を停めて一風呂浴びることができるところは嬉しい。また、駐車場も道の駅としとしては決して大きい部類に属するとはいえない。大型車9台に普通車50台のスペースしかないので、ちょっと狭いなぁ・・・・という感じもする。この施設も地元の生産物の売り場のほかにレストランも備えている。
大子温泉では、この道の駅のほかにも立派な日帰り温泉施設がある。久慈川を少し上流に行った右岸の山手に大子温泉保養センター「森林の温泉(もりのいでゆ)」と、その少し上手には大子広域公園の一角に多目的温泉プール「フォレスパ大子」がある。いずれの施設も昼間は700-1000円だが、夜間割引だと大人500円で楽しめる。後者の大子広域公園には立派なオートキャンプ場があり、そのキャンプ場の中にも、これまた立派な温泉施設がつくられている。ただし、この温泉施設はキャンプ場利用者でも一人400円を徴収するのはとりすぎである。
道の駅「ならは」(写真上)は、福島県南部の楢葉町にある。この町の南は広野町で、ここには火力発電所があり、北は富岡町で、ここには原子力発電所がある。道の駅は国道6号線のすぐそばにあり、陸前浜街道の交通の要地ともいえるが、現在のところ常磐高速が広野インターを最北としているために、この街道を利用する車の数はそれほど多いとはいえない。そのために、この道の駅は大型専用駐車場があるわりには夜も比較的静かに眠れる。この道の駅とそれに付帯する温泉施設は、この近くに作られている12面ほどのサッカー場からなる一大サッカー練習場「Jヴィレッジ」構想の一環として作られているようである。ただ、楢葉町もお金を出して作った施設であるというのに楢葉という町を売り込むという熱意が感じられないのは寂しい。道の駅には普通置いてある町の風物、産物、名所などに触れたパンフレットが皆無であるのは、いささか異常である。なお、ここから車で10分ほどのところの天神岬にはこじんまりとしたオートキャンプ場があり、そこにも隣接して立派な日帰り温泉施設がある。
道の駅の建物の一階は売店とレストランであるが、レストランは立派であり利用者も多い。売店はお土産売り場程度のもので、地域の物産センターというような規模ではない。もっとも、この建物とは別に独立した物産館が今年(平成16年)のうちには完成するという。そうなると道の駅としての内容も一段と充実することとなろう。
現在の施設の二階が温泉施設になっているのだが、「ならは羽黒山温泉」と名づけられるこの温泉は湧出量が毎分563リットル、温度は41度ほどである。塩化物の単純泉とされているが、無色透明ではなく薄く茶色い色がついている。浴槽は源泉そのままの大浴槽のほかに、ジェットバスや打たせ湯用の浴槽があるが、こちらは無色透明のお湯なので源泉のお湯ではないのだろう。また、サウナバスはあるのだが露天風呂はない。この温泉施設は、大人一人500円の入浴料であるが、おもしろいことに出るとき受付嬢に一声かけておくと2時間以内であれば再度の入浴が無料でできる。道の駅に停めた車内に泊まる旅人にとっては、寝る前にもう一と風呂入れるというのは嬉しい。こうしたサービスに出くわしたのはこれがはじめてだった。
駐車場は、大型車17台、普通車96台の合計113台のスペースがある。おおかたはコンクリート舗装の立派な駐車場であるが、奥のほうには砂利の広場が残っており、こちらのほうが利用者が少なく静かである。この日、砂利の広場には数台の普通車のほかに2台の旅車が泊まっていた。その一台は屋根が上に展開して二階部分が寝室になるというコンパクトなミニバンタイプであったが、もう一台のほうはタウンエースらしいトラックの荷台に手作りの簡単な小屋を載せてしまったというユニークな旅車だった。最近、この手のトラックキャンパーが意外と目に付く。
(追記)最近しばらくぶりに、道の駅「ならは」を利用する機会を得た。5年ぶりの訪問だったのだが、当時には予定だった物産館がすでに完成し、既存の建物の正面左側に立派な建物ができていた。この建物の二階は広い休憩ホールとなり、そこから渡り廊下で右手の温泉館に接続していた。つまり、温泉に入ったあとはこの休憩室でくつろげるわけである。5年前には未舗装だった土地がいまでは立派に舗装され、駐車場となっている。いまや駐車台数は普通車が143台となっていた(2009年7月)。