旅日記

久留里城

2007年9月


 わが家のある鹿嶋市からだと、房総半島は近い。以前、都内に住んでいたときよりも一段と房総半島は近くなったという感じである。いうまでもなく房総半島は千葉県にある。そして、いまや千葉県の主要部は首都圏の一部をなしている。首都高速湾岸線や京葉道路を車で走っている限りは、千葉も東京都内とまったく区別できない。

 しかし、房総半島も千葉市から遠ざかり、南に行くにつれて、少しずつのどかな雰囲気が感じられる。そうした房総半島の、ちょうど中心に位置する久留里(くるり)という町は、その名前のもつ響きのよさで、なにか人をひきつけるものがある。電車で行く場合は、内房線の木更津から久留里線が利用でき、車のときには館山自動車道を木更津北インターでおり、国道410号を使うのだが、この国道は別名を久留里街道という。この街道を南下して久留里の町に入ると、そこはところどころに、まだ昔ながらの古い商家の造りがみられる懐かしい街道だった。この街道で目につくのは造り酒屋である。久留里は昔から美味しい水が豊富に湧き出していることで名が知られている。房総半島の丘陵地帯の奥深くにあるこの久留里は、周囲の山々からの水が集まるような地形になっているのだろう。そして、その美味しい水を使った造り酒屋が多い。

 町を通り越してしばらく行き、左にひどく細い道を登ってゆくと久留里城の手前の駐車場にでた。ここには森林体験交流センターというのがある。道路は駐車場の手前を右手に急な坂道となって城へと向かっている。この道は片側一車線の立派な舗装道路なのだが、一般の車は進入禁止だった。上の二の丸跡には、現在久留里城址資料館があるので、そこへの業務用の車のほかは通行禁止になっているらしい。ここからはかなりの急坂で、高度でおよそ100メートルの登りになる。


久留里城天守閣


二の丸跡下の薬師曲輪跡から見た大手門跡、三の丸跡、内堀跡方面

 久留里城は別名を雨城という。この築城のときに、三日に一度は雨が降ったとか、この城の付近はいつも雨のなかに霞んだようになっており、城の場所がわからないので攻める敵も難儀した・・・・、ということから雨城という名がついたという伝説がある。

 この城は南総を本拠としていた里見氏が最初に築き、その後、里見氏の本拠として利用されたという。一時はここを攻める北条氏とのあいだで壮烈な戦闘が城下でくりひろげられたとされる。その後、秀吉の北条攻略のときに参戦をもとめられた里見氏が戦線に遅参したことを理由に里見氏の上総の領地は没収された。さらに家康の関東への移封にともない久留里は大須賀氏、土屋氏、酒井氏などの領地として続いたのちに、18世紀の半ばに沼田から転封された黒田家の城下町として明治維新まで続いたという。写真にある天守閣は、昭和50年代に復元されたものである。この日は過日の台風のために天守閣の上にある鯱が傾き、その落下の恐れがあるとかで、天守閣近くへの立ち入りは禁止されていた。そのうえ、二の丸跡の資料館も休館日だった。

 天守閣の建つ場所というのは、下の駐車場から延々と登ってきた山道の、その痩せ尾根のさらにさきの最高地点にあたるところにある。二の丸の跡地は痩せ尾根の手前の少し広くなったところで、そこには薬師曲輪跡がある。写真にあるように、ここからの眺めはなかなかよく、写真中央付近の木立が大手門跡、左端の道路付近が搦手門跡、これらの二つの門を結ぶ線の手前が内堀跡とされ、その内側の田んぼのあたりが三の丸跡とされている。久留里の町は右手の端にその一部が見えているが、ここから左手の田んぼや森のあたりが、戦国時代の昔、里見・北条両軍が戦った古戦場らしい。

 館山自動車道も、ところどころが未開通だった時期が長く続き、これまではあまり利用価値がないような印象だったのだが、最近は、その未開通部分も全て完成したらしい。これが開通すると、潮来ICから館山ICまでがつながるので、南房総への旅もずいぶんと便利になる。今回は、南房総は割愛することとして富津から久留里を経由して勝浦に抜けてみた。久留里城の付近では、多分極端に狭い道を通る必要があるだろうと思って、旅車はやめて乗用車にしたのは正解だったようである。

 富津は、これまで機会を逸していた名物の「はかりめ」を味わうために立ち寄ったようなものである。「はかりめ」というのはアナゴのことである。このアナゴの姿・模様が「棒はかり」の秤目に似ていることから、このようによばれるようになったという。「はかりめ」の旬は梅雨どきとされているので、9月ではいささか季節はずれともいえるのだろう。しかし、昔ながらの店で食べた「はかりめ丼定食」は、うなぎとは違った、あっさりした風味がなかなかのものだった。

 勝浦からは、いつものとおり九十九里の波乗り道路を経由して銚子にでた。ここでは、やはり行きつけの魚料理の店で新鮮な刺身を楽しんだわけだが、乗用車での日帰りの旅では、美味しい肴があってもお酒は飲めないのが寂しい。

 やはり、旅は旅車に限るか?



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