《医療と人間》
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三島広志
[医療について]
医療
医学(基礎) 科学的合理性・客観性・再現性・還元主義に基づき主として
物質を物理学の手法で研究する科学の肉体・病気に関する分
野
現代医学の基礎、近代以降急激に発達
医術(方法) 基礎医学に基づいて創出された技術
経験の蓄積から生み出された技術
いずれも経験、実験によって歴史的に安全と効果が立証され
たもの
臨床(応用) 技術を実際に患者に用いて治療に当たる
広くは公衆衛生も含む
哲学(理念) ヒトが人間として生きるとはどういうことか、人間はどう生
きたらよいか
治療とは、健康とは、病気とは、生とは、死とはなどの本質
にかかわる所から医療を考える
経営 医療者の生活を成立させる側面も重要である
しかし、この面を第一義とするべきではない
さもないと、患者サイドに見放され、肝腎な信頼関係が損
なわれてしまう
医療の二大潮流
現代医学 デカルト(17世紀)による心身二元論以後、精神と物質は
区別されて科学は物質を主として研究することになる。医学
もまた例外ではない。肉体という物質中心に要素に切り刻ま
れ、要素の集合が人体であるという還元主義的な生命観と共
に発達し、同時に微視的世界観から細菌学による抗生物質の
発見、外科的手術の進歩等人類に多大な貢献をしてきた。そ
れは分子生物学による遺伝子の発見でピークを迎える
漢方医学 漢方医学は科学的方法をついに手に入れることはできなかっ
たが、直感と経験に基づく現実主義は歴史の積み重ねの中で、
安全で有効な方法を伝承してきた。
さらに、東洋的な世界観から身体を巨視的にとらえ、閉鎖系
ではなく解放系としての身体観に基づいた医療が、細菌類に
よる病気が駆逐された今日、環境からのストレスによる症状
にうまく対応することが認められ。人々の注目を集めつつあ
る。
医療のシステム
収集<IN PUT>
診察(望・聞・問・切) 情報収集・感受・認識・感動
整理<PUT IN ORDER>
診断(証・病名) 判断・思考・組み合わせ・内部処理
表現<OUT PUT>
処置・治療法実行 創造・処理・行動
収集→整理→表現→収集→整理→表現というサイクルが螺旋状に渦巻きながら、
常に過程的に変化していく。
それを進化発展にもっていくか、堕落の方向へ進むかを決定するのは志と意志、
希望と勇気である。
[人間について]
志(こころざし)
心指し
目的の決定 (例 疾病治癒)
究極の目的・・・人間になるため、人間でありつづけるため
人間
文化的生物
創造的生物
自然に働きかけ、それを変化させる唯一の生物
ヒトは自然に働きかけることで人間になった
ヒトは自然の中で生まれ、生態系を離れた時人間になったが、その時から不
自然な生物になった
人間は自らの経験を同時代の仲間や、後に続く世代に伝え、また、同時代の
仲間や過去の先達から学ぶ能力を得た
人間は自然に働きかける(文化的行為)時間的(歴史)・空間的(社会)存
在
その歴史的・社会的及び自然の恩恵を自覚し、積極的に参加することで真に
人間と言える
[再び医療とは]
医療はその人が人間であろうと志すものの、心身的困難な状況にある時、そ
の人を手助けしかばい、支えるものである
医療は人間になろうとしない、つまりヒト的生き方をするものに対しては本
来不要のものである
なぜなら、自然は医療を必要としない。弱ったものは滅びることこそ自然の
摂理だからである
しかし人間は不自然な存在であり、自然と人工の狭間に存在する生き物であ
る。そこに苦しむ人を看過しえないものの存在がある。そのひとつが医療であ
る。
意志
目的を定める心=志(心指す)
定めた目的に向かって歩み続ける心=意志
全ての人間の根底にあるのは、社会・歴史に参加し、それらと自然の恩恵に
報いて<人間になりたい・人間でありつづけたい>という気持ちである
いわゆる社会参加したいという欲求はここに根差している
人間は自然・社会・歴史なしでは片時も生きていけない
それは、誰もが自覚・無自覚を問わず皆知っていることだ
鉛筆1本にさえ自然(木・芯の材料)、社会(製造者・運搬者)、歴史(鉛
筆の発明者・改良者・伝承者)という事実が凝縮されていることに気付くべき
であろう。
医療の技術も、食文化もまた多くの過去・現在の仲間の貴い犠牲と精進の結
果であることを忘れてはならない。
これを「忘れないこと」、それが人間であることの初歩の初歩である。