經絡と氣のモビリゼーションについて
三島広志
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<經絡と經絡治療>
經絡は“いのち”そのものの表現です。
生きているもの全てに共通する根源的存在です。
生物は自己保存と種族保存とを目的として活動しています。ヒトもまた本質
においてはなんら変わるものではありません。アメーバからヒトまでに共通し
ている働きを12種にパターン化したもの、それが經絡です。
したがって經絡は治療に便利な線と考えることは間違いです。經絡は先に書
いたようにいのちの表現なのです。死ねば經絡は消失します。經絡を通して相
手から何を受け取るか、相手にどう共感するか、そのために經絡を利用するの
です。
經絡は心で望み(観る)、手で切々と触れることで感じることができます。
触れる行為の中に情報収集・処理判断・表現処置(医に置き換えると診察・
診断・治療)の全てが存在します。
“いのち”という場を自由に流れる流動的概念として“氣”があります。
あらゆる現象の働き、営みの奥に普遍的に存在している一つの要素的概念と
して仮定されたものを“氣”と呼びます。
一部では今日の科学的方法で氣を解明していますし、事実成果も上がってい
ますが、その時点で氣は氣でなく別の呼び方をされるようになるのです。(例
えば、雲を動かす「天の気」は気圧差による風と呼ばれるようになった)
しかし氣にはまだまだ未知の影響力が秘められています。いたづらに過大評
価することは危険ですが、簡単に無視することもまた、人間としての可能性を
自ら捨て去ることになるでしょう。
未知は未知なりに、安全性を考慮した上で方法・技術として使用することも
可能です。
現実の一部を切り取って理論付けて、それで全体を解明したと勘違いしたり、
経験や知識で自分を縛ることなく、現実をしっかり見つめ、取るべきものは取っ
て、自らの潜在力を顕在化しようではありませんか。 これも氣の作用です。
<氣のモビリゼーション>
經絡治療は經絡をシステムとして応用することで効果を上げている治療体系
です。
モビリゼーションはカイロプラクティックやリハビリテーションの手技です。
骨格に直接静かに働きかけるもので、安全性と有効性が注目されています。
氣のモビリゼーションは方法としての氣を利用してモビリゼーションに役立
てたものです。
<經絡>
生命の基礎的な動き、働き
全生命体普遍の機能
原初的生命活動を12にパターン化
經絡ごとの主作用と説明
肺・大腸
呼吸 魄 天の氣導入 無形のものを取り込む(雰囲気・精神的財産・人当
たり・無形の影響力)
脾・胃
摂食 意 地の氣・水穀の氣導入 有形のものを取り込む(財産・知識・人
脈・物質欲)
心・小腸
知覚 神 氣の統括 中心 感覚 知覚 取り込んだ種種の情報を整理・処
理し同化する
腎・膀胱
元気 志 生命素“精”を作る 先天的・親からもらった元気の座 生殖
抗ストレス
心包・三焦
防衛 神 氣・血循環 環境から内部を守る、同時に環境と適応
肝・胆
動作 魂 決断 実行 活動 迷い 攻撃 筋肉 関節
<情報の収集・整理・表現>と經絡
収集する經絡
肺・大腸と脾・胃
呼吸(取り入れる・ガス交換) 摂食と消化吸収 情報感知
整理する經絡
心・小腸と心包・三焦
体内に取り込んだものの選別 判断 心 防衛 循環
表現する經絡
肝・胆と腎・膀胱
決断 行動 排泄
<胚葉>と經絡
発生の初期段階は外中内の三つの胚葉から成立し、それが後の諸器官に別れ
る。それを經絡的に考える(經絡指圧の増永静人によるものを少し改編)
外胚葉(外皮・伝導) 肺・大腸 心包・三焦
中胚葉(支持・運動) 肝・胆 腎・膀胱
内胚葉(内臓器官) 心・小腸 脾・胃
經絡は未発達の生命体をモデルにしたほうが理解しやすい。そのために発生
初期の胚葉を經絡に置き換えてみる。この試みは細かな相違点は多く見られる
ものの日本でも中国でも行われている。
増永静人の分類には大いに啓発される。しかし一部に疑問がある。
腎・膀胱は支持器官の骨に関係があるとされており、しかも生命活動源の“
精”を作り、また親からの“先天の元気”の宿るところであるから「支持・運
動」の中胚葉に置いた。
脾・胃は地の氣・水穀の氣を取り込み、エネルギーに変えるところであり、
内臓の中心的存在であるから「内臓器官」の内胚葉に加える。
<胚葉と經絡・姿勢との関係>
(by増永静人、一部三島改変)
外胚葉(皮膚・脳神経系)
呼吸系
交換・排出<外気導入・欠伸・深呼吸の姿勢>
肺は相傅(ソウフ:総理大臣)の官、治節出ず
大腸は伝導(官房長官)の官、変化出ず
循環系
循環・保護<表裏営衛・寒さから身を守る姿勢>
心包は臣使(家来)の官、喜楽出ず
三焦は決涜(ケットク:溝を開いて水を流す)の官、水道出ず
中胚葉(筋肉・骨格・血液)
運動系
貯蔵・配分<右顧左眄・右か左か迷う、決断がつかない姿勢・動作>
肝は将軍の官、謀慮出ず
胆は中正の官、決断出ず
ホルモン・自律神経系
精気・清浄<発進態勢・準備完了の姿勢>
腎は作強の官、伎巧(優れた技)
膀胱は州都(地方長官で末端の需給調節)の官、津液出ず
内胚葉(内臓諸器官)
こころ・感覚系
転換・統制<沈思黙考・座禅の姿勢>
心は君主(全体を見て外の刺激、変化に機敏に反応)の官、神明(全てを見
通す全能の力)出ず
小腸は受盛(エネルギーを受け、盛んに身体に取り入れる)の官、化物(ケ
ブツ・ものを変化する)出ず
消化系
摂食・消化<獣が餌を抱きかかえる姿勢・食物獲得>
脾は倉稟(ソーリン・米蔵)の官、五味出ず
胃は同上
『臓腑名、漢字の由来』
肺・・双葉がパッと開くように動く
腸・・長いはらわた
焦・・焼く、熱エネルギーを生じる
肝・・干=幹、中心
胆・・日が地平線に沈む、ずっしり落ち着かせる
脾・・薄く平らなもの
胃・・食べ物が袋にたまっている
心・・心臓の象形、心身の相関を実感しやすい内臓
腎・・がっちり堅い、全身をがっちり堅くする
膀・・旁は張って膨れた様子
胱・・光は広と同じで、広がりを示す、袋の意