群馬・長野の両県にまたがる浅間山(2542m)は、日本で今いちばん危ない火山の一つとされている。最高部の火口丘からは、常に白い噴煙を上げ、ときには、赤熱した溶岩が火口底から顔をのぞかせることもあるという。
現在でも、火口から2km以内の立ち入りは、禁止され、気象庁と大学による厳重な監視体制がしかれている。 一時第2外輪山の前掛山(2493m))まで登山が認められたこともあったが、2008年8月8日よりレベル2の火口周辺規制となり、カルデラ底の賽の河原までしか進めない。
日本百名山を目指す登山者にとって、百名山が一座欠けても困ったことになる。そこで、考え出された苦肉の策が、第1外輪山の最高峰黒斑山(2404m)を登ることで、浅間山に登ったことにするという代替えプランである。ある会社のトレッキングツアープランでは、堂々と黒斑山を日本百名山の一つとして、募集している。黒斑山の山頂から見る浅間山の展望はすばらしく、百名山でなくとも、この山に登る価値があるということは万人が認めるところである。
天気の変わり目となった2008年9月9日(火)日帰りで黒斑山を目指した。
新潟発6時27分の新幹線に乗れば、高崎に7時45分に到着する。高崎で、あさま503号に乗り継げば、佐久平に8時21分に到着する。佐久平発JRバス(通年)は、8時40分に発車し、車坂峠登山口に9時44分に着く。そこはすでに標高1973m、通常2時間で2404mの黒斑山の山頂に立てるから、日帰り登山も可能である。
峠からは、通常、表コース(尾根コース)を登る。ゆるやかな登りを20分ほど行くと、車坂峠の頂上だ。いったんクマザサの茂る鞍部へ下り、再び、溶岩のゴロゴロした急斜面を登る。やがて、急斜面のまま、コメツガやシラビソの原生林に入る。
林を抜けると、傾斜もゆるみ、火山性の広いガレ場に出て、展望も良くなる。振り返れば、籠ノ登山や高峰山が大きく見える。
再び、針葉樹の林の中に入り、ゆるやかな登りを続けると、カマボコ型の避難小屋が現れる。このあたりが槍の鞘(さや)といわれるところで、その先が赤ゾレの頭だ。いったん下って、左に中コースの分岐を分け、急なガレ場の火口壁の縁を登りつめると、トーミの頭だ。東側はスパッと切れているが、西側は針葉樹の林である。露岩の重なる狭いピークは、すばらしい展望台である。右(東)には巨大な浅間山が広がり、前方(北)には、仙人岳、鋸岳に続く外輪山の岩肌が眼を惹く。
林の中を登り返し、火山活動を監視するテレビカメラの脇を通ると、すぐ黒斑山の山頂だ。黒斑山は外輪山の中でもっとも標高の高い。前掛山までの登山が規制されている時は、ここから見る浅間山がベストだろう。残念なことに、針葉樹の林に阻まれて、西側の展望は得られない。
頂上から、蛇骨岳の方に道が延びているので、時間があれば、外輪山の上を進んで、蛇骨岳・仙人岳まで行くのも良いだろう。蛇骨岳からは、ガラガラとした岩稜となり、左右の展望が開け、志賀高原の山々や白馬連峰も見えてくる。黒斑山も一段と高く立派に見える。カルデラの底のクマザサと針葉樹の組み合わせは、絵のように美しい。
蛇骨岳から西に裏コースが分岐するが、整備されていないので、往路を戻り、中コースを下山するのが一般的である。中コースは、林間コースなので、眺望は良くないが、車坂峠までの最短距離である。
車坂峠から15時52分発のバスに乗ると、佐久平には、17時に到着する。新幹線の「あさま」「とき」と乗り継ぎ、新潟には19時57分に着いた。(2008年9月9日)