鍋倉山の森太郎

  鍋倉山は新潟県と長野県の県境につらなる関田山系の中央部にあって、この山系の最高峰である。黒倉山とともに、新潟県の板倉町と長野県の飯山市にまたがってすそ野を広げている。新潟県側のすそ野には、光ケ原牧場があり、長野県側には、戸狩スキ−場がある。飯山市温井と板倉町を結ぶ県道が整備拡充されたために、関田峠まで車で容易に行けるようになった。そこはもう標高1129mで、ここから、稜線沿いにブナ林と雑木林の中につけられたなだらかな登山道を登れば、労せずして1247mの黒倉山の山頂に立てる。そこから最高峰の鍋倉山(1289m)までは一投足だ。
ブナの巨木の写真
  この山を一躍有名にしたのは、山頂周辺に広がるブナの林である。ブナの林は、新潟県側では、ほとんど伐採されて、牧場と杉の林に変わったが、長野県側にはその一部が残っている。胴回り数mの古木が多く、中でも「森太郎」と「森姫」は有名である。最近では、この木を見るために、多くのハイカ−がこの谷に入るようになった。もう営林署の「ブナ殺し」に遭うことはなくなったが、代りにハイカ−によって木の周りが踏みにじられる受難の時代になった。
  1999年5月8日(日)五月になると、さすがの豪雪も溶けて舗装道路が顔を出す。しかし、峠までは車は入れない。われわれ高体連シニア山の会の一行11名は行けるところま車で行って車を止め、道路沿いに歩き出した。残雪と新緑のコントラストが美しく、タムシバの白い花が眼にしみるるようだ。道路が大きく峠に向けて迂回するところで、道路を離れて左手に伸びた尾根を目指して雪の斜面を登った。
  尾根を越えると、そこが「巨木の谷」だった。この谷のブナの林はまばらだが、胴回り数mの巨木が多い。長い間の風雪に耐えてきたことを物語るかのように、木の幹は黒ずんでごつごつしている。ひときわ、目立つ巨木が「森太郎」だった。近寄って幹にさわると、生命の力強さが伝わってくるようである。
  谷を登りつめて、頂上に続く尾根に向かう。広い尾根の上は、これまた見事なブナの林が続いていた。鍋倉山を越えて黒倉山に向かって雪稜を下り、途中で尾根を離れて右の斜面を下り、西の谷に入る。明るく広い谷の斜面には、壮年期の見事なブナの林が続いていた。この谷のブナは、胴回りはいくらか小さいが、幹の色が白く、つややかで、樹形も力強い。沢の右斜面をからみ気味にどんどん下ると、やがて舗装道路に出た。残雪を踏んで、ブナの林を歩く楽しさを存分に味わう山行だった。
  その後、訪れていないので、森太郎がどうなったかわからない。

■上の写真 : 鍋倉山の森太郎

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