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<いざ、アフリカ >

     「そもそものはじまりはニューヨーク」

 僕がアフリカに興味を抱いたのは、今から十五年近く前になる。そのころの僕はとにかく若いうちに(三十才を過ぎていたけれど)危険な場所に行こう、と決めていた。

 僕は映画や漫画で植え付けられたイメージからニューヨークが一番、危険な場所だと漠然と思っていた。十四歳の娼婦役のジョディ・フォスターがデビューした「タクシードライバー」の舞台はニューヨークだったし、キングコングが暴れたのも、スパイダーマンが悪党をやっつけたのもニューヨークだ。僕は、ニューヨーク行きのディスカウントチケットを購入することにした。

 しかし、いろいろと調べていくと、ニューヨークはホテル代が高いことがわかった。一泊、百ドルはその当時の僕にとって許容範囲を超えていた。そのようなホテルに泊まる旅行は、年をとってから運よくお金持ちになったときにすればいいと考えていた。今までの旅行は、一泊数ドル、高くても六十ドルに抑えていたので、どうにかして安く泊まることはできないかとガイドブックを読み漁っているうちにユースホステルがニューヨークにあることがわかり、僕はここに全泊してこの旅行を安くすることに決めた。

 そして僕が、ニューヨークに行って何をしたか、というと、情けない話だが、通常の旅行者と同じようにエンパイヤステートビルに登って、眼下に広がる都会を眺めたり、ブロードウェーでキャッツを見たりしたぐらいだ。残りの多くの時間はただ歩いた。そして疲れると、セントラルパークに入り、長椅子に寝転がって昼寝をした。とてもつまらない旅行に思われるかもしれないが、僕にとって忘れられない出来事はその昼寝の最中に起きた。

「エクス・キューズ・ミー」という低い声に僕は片目を開けた。目の前には、黒人の浮浪者が立っていた。

「メイ・アイ・テイク・ディス・スモーク」

 ちょうど僕が寝ている長椅子の横には灰皿があり、そこにあるシケモクを浮浪者はわざわざ僕に断って取ろうとしていたのだ。僕は、その紳士的な姿に頭をバットで殴られたくらいの衝撃を受けた。それまで僕は、黒人を「怖い人」だと思っていた。しかし、僕の目の前に立っている黒人は、その反対で、とても貧しく、控えめで真摯的だった。

 灰色のオーバーコートを着た老人は寝ている僕の頭の近くにある灰皿からシケモクをひとつとると、「サンキュー」と言って背を丸めて歩き去った。

 僕はその老人の後姿を眺めながら、今まで大きな勘違いをしていたことに気がついた。

 僕は日本に帰ると、「マルコムX」をビデオレンタル屋で借りてきて観賞し、古本屋で黒人に関する本を買ってきて読んだ。そして黒人とは、どこから来て、どうしてアメリカで貧しくなっているのか、という疑問の答えを探した。

 そしてけっきょく、アフリカに行かなくてはわからない、という結論に達した。

 僕は、さっそく旅行会社に足を運び、アフリカに行きたいのだが、手ごろな料金のチケットはないか、とたずねた。店員はアフリカのどこに行きたいのか確認した。

 僕はケニヤがアフリカ初心者にとって一番旅行しやすい国だとガイドブックに書いてあったことと、以前、インドの空港で遭遇した日本人の「おばさん」たちのことが頭の隅にあり、ナイロビに行きたいと伝えた。

「インドで出会った日本人のおばさんたち」

つづく

来月掲載予定



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