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     「本当の恋って?」

 シンガポールに行ったのは10年くらい前の12月の下旬だった。

 いつものように私は、ドミトリー(共同部屋)を探したが見つからないので、一般のホテルではなく×△○□という男性専用の宿泊施設(共同部屋があった)に泊まることにした。宿泊費は安いが、ジムがとプールがあり、全体的に掃除が行き届いて清潔だった。

 レセプションの女性も親切な対応だった。私は鍵を受け取り、エレベーターに乗って部屋のある階まで行き、ドアの前まで来た。

 そして鍵を差して回した。が、「あれ?」と変な感触があり、鍵を抜くと、ぐねりと半回転してねじれていた。

 私は唖然とした。その鍵は厚みのあるしっかりした作りのものだった。金属疲労で変形する寸前まで来ていたのかもしれないと思い、私は元に戻そうとしたが、ねじれはまったく戻らなく、硬い金属そのものだった。私は過去を振り返り、今回は間隔が少し短かったな、と思った。

 というのは、以前にも同じようなことがあり、10年に一度ぐらいの期間でこのようなことを体験することができるのかな、と漠然と思っていたからだ。

 今回は7年ぐらいの期間しかあいていなかった。

 それでは以前の体験の説明をしよう。まず23歳の時、私は直径10センチくらいの金属ワイヤーのリングに部屋の鍵を通し、人差し指でくるくる回して歩いていた。そのとき、カチャと音がし、私は立ち止まった。私の指には、金属ワイヤーのリングだけが残り、足元には部屋の鍵が落ちていた。金属ワイヤーは切れていなく、仕組みは端と端をねじ込み式で止めているものなので、一瞬だけ外れてまた元に戻るというウルトラCは不可能だった。いっぽう、私の足元に落ちた鍵だが、丸い穴に亀裂はなく、変形の跡もなかった。私は立ち止まったままこのように考えた。

「金属が硬いと考えた人間が馬鹿だったんだ。金属はたいてい硬いままでいるけど、たまにいたずらをしてやわらかくなることができる生物だ」

 私はそれからなるべく固定観念をもたないようにした。

 次におきたのは、33歳だったので、ちょうど10年後だ。そのころ週末は市民プールに行って泳いでいた。

 そのプールのロッカーの鍵には、泳いでいるときに腕や足につけることができるようにゴム紐の輪が通してあった。

 私はそのゴム紐の輪に人差し指をかけて、鍵をロッカーの鍵穴から引き抜こうとした。するとゴム紐の輪だけ指にひっかかってきた。鍵はそのままささっている。

「おや、おや」と思ったが、私はあまり驚かないことにした。

 そして今回の出来事である。私は三回目なので冷静だった。レセプションに戻り、

「ドアを開けることができない」と言って鍵を見せた。

 レセプションの女性は、鍵をじっと見つめて、

「なんて、あなたはマッチョなんでしょう」と感心したが、私は筋肉質ではない。ぷよぷよした体で、デブと言われても仕方がない体型である。彼女は新しい鍵を持ってレセプションを出ると、私と一緒に部屋へ向かった。 

 彼女はドアの前に来ると、私があけます、と言って、鍵を差して回し、ドアを開けると、

「どうぞ」と私を部屋の中に入れて、鍵をくれた。 

 部屋の中には二つの二段ベッドがあり、先客がひとりいた。

 私はとりあえず、二段ベッドの上に荷物を上げて、登って体を横たえた。先客は対面した二段ベッドの下に寝ていた。彼が話しかけてきた。話しているうちにインド人青年であることがわかった。

 

 つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

来月掲載

つづく

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