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*短編小説*
<『青い鳥』>

 仕事をやめたが、次の職を探す気がしなく、ここ数日は朝から晩まで、これといってしなければいけないことはなく、日中は畳の上に寝そべり、綿の出た座布団を二つに折って頭の下に敷いている。窓の外に見えるものは、古い木造建築の肌色に塗られた汚れた壁とその上に広がる空だけだ。

 まったく今日は、雲ひとつなく馬鹿げているほど、青く晴れ渡っていた。

 そのような景色に呆然と目を向けていると、窓のところにスズメが一羽、ぴょんと飛び乗り、そして、

「何してるだ? おまえさん」と聞いた。

「何もしていねぇ。見りゃわかるだろう。このボケなす」

 すると、スズメは血相を変え、

「何だって、ボケなすだと」

 怒って首を突き出した。

「オラはな、幸せの青い鳥って言うんだ」

「お前の体は茶色だぜ」

 すると、スズメは、

「いいんや。青い」と首を振った。

「茶色だよ」

「そんな事を言うと、幸せを運んでやらねぇぞ」

「いらねぇよ」

 そっけなく言い、視線を空に向けた。すると、

「オイ、オイ」とスズメが叫んだ。

「オラの話を聞かねぇか」

「今日はいい天気だ」

「オラは幸せの青い鳥だ」

「パンツは乾いたかな?」

 ひらひらと舞う洗濯物に視線を投げる。スズメは羽をばたつかせ、ピョンピョン飛び跳ねて言う。

「お前はな、オラが知っている中で一番ダラケテいるだぞ。普通の人はな、もっと深刻に考えているだ。幸せ、願っているだ。夢を持っているだ。オラが来たら喜ぶだぞ」

「とっとと消え失せろ」

「何だって、とっとと、とっとと、だって、何言ってやがるんだ。オレは、自由の女神に使われて来ただぞ。オラを馬鹿にすると罰があたるぞ。後で後悔するぞ。いいか、ここに青い石がある」

 そう言って勝ち誇ったように目を細めて、ふふふ、と笑った。

「これは高価だぞ。目の玉飛び出るぐらい高ぇだぞ。イヒヒヒ」と笑い、スズメは羽を差し出して見せた。そこには確かに青い石がのっていた。

 「さあ、どうする? 取るか、へへへ、どうした? お前の人生がこれで変わるぞ。べっぴん抱けるぞ」

 無視して鼻の穴に指を入れて、取り出したものを丸めてはじいた。それがスズメの嘴の中に入った。

「おめぇは何するだ。グッ、苦しい」

 餅のように粘っこい鼻くそはスズメの咽に張り付き、気孔を塞いだようだった。

 「ウッウッウッ」と羽先で咽の辺りを掻き毟り、スズメはバタリと部屋の中に倒れた。

 「お前はただのスズメだよ」

 そう言ってそれを焼き鳥にして食べた。

 そして楊子で歯の間をほじくり、いつものように寝そべっていると、畳の上にキラリと光るものが転がっていた。それを宝石店に持っていき、鑑定してもらうと本物のサファイアだった。スズメは確かに奴が言うようにただの鳥ではなかった。泥棒でペテンだった。

                             完

             

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