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*短編小説*
<『家族団らん図』>


          『家族団らん図』

「やあ、ばあさん、いい日和だな」

「ええ、おじいさん。梅の花も咲きましたし」

 うららかな春の日差しが縁側に差している。庭の梅には鶯がとまり、その美しいのどを披露していた。

「いっぽん、抜くかな。ばあさん、体調はどうかね?」

「うふふふ、おじいさんたらイヤですこと。何年、一緒に暮らしているんです」

「そうじゃな。そいじゃ、どうじゃ、この暖かいところで」

「ふふふ、人が見ますよ。おじいさんたら」とおばあさんはおじいさんの肩を叩きました。

「ウッ、ゴホン、ゴホン」

 目を丸くして咳をしておじいさんは、

「いや、垣根があるからの。大丈夫だ。ばあさん」と言った。

「ウグイスが見とりますがな。ホホホ」

「何言ってるだ、ばあさん。気にすることないで」とおじいさんはおばあさんの膝に手を置き、口を重ねた。

 二人は舌を絡ませあったまま、互いの体を抱いて横に倒れ、そして足と足をもつれさせ、四本の手をそれぞれの部位にまさぐらせて、まったく奇妙としか取れないうめき声を漏らし始めた。庭で鳴いていたウグイスが、いったい何が起きたのだろうと、ぱたりと鳴くのをやめ、じっと首を捻って縁側を見はじめた。

「おばあさん、おばあさんや。そんなにあわてて噛んだらいかん。痛いでな」

 おじいさんは哀願した。

「なんや、じいさん。これぐらい、我慢せんかいな」

 おばあさんは頭を振り振り、皺のよった口をすぼめている。

「ばあさんのテクニックは年とともに磨きかれられたの。ふふふ。少し休ませてくれんかの?」

 おばあさんは頭を上げ、そして首をひねり、ボキッボキッと音を立てた。

「これ、すると肩がこりますわ。おじいさん」

「そんならばあさんは休んでろ。今度は俺が楽しませてやるから」とおじいさんは掌にぺっぺっと唾を吐いて、それを指に絡ませてからおばあさんをひっくり返して、

「どうじゃ、ばあさん、気持ちええか? どうじゃの。ええかの。ええか、ほれほれ」と巧みに指を使いはじめた。

「ええで。ええで。おじいさん。ええで」

「ほならいくでー」

 おじいさんはおばあさんの腰紐をたすき代わりに締めると、正上位でエンヤ、サッサ、ホイホイと、掛け声をかけて励んだ。そのとき、玄関の戸ががらがらと開き、

「ただいま」と今日はPTAで帰りが夕方になると言っていた娘が戻ってきた。

「いるのー、いないの?」と部屋に上がり、縁側を見て、

「何しとんの?」

 娘は呆れて口をポカンと開けた。それでもおじいさんは腰を振り続けていた。

「おう、良子か、ええところ来たな。ちょっと手伝ってくれんかの。腰がうまいこと、動かないでの」

 みるみる娘の顔は真っ赤になった。

「ええ年して何しとんの。やめてよ! 恥ずかしい。お母ちゃん、恥ずかしくないの?」と祖母の頭のところに屈み込んだ。

「やあ、あああ。お前か、今、とりこんでいてのお。ううう」とおばあさんはまた目を閉じた。

「馬鹿なこと、しているんじゃないの!」と娘は怒っておじいさんの体を両手で突き飛ばした。腰をしたたかに打ったおじいさんは、

「こら、何をする、何を!」と逆に娘を懲らしめにかかった。おばあさんは、

「おじいさん、そう、怒らんでも……」と、とりなし、

「良子も悪気があってしたんじゃないんだし。恥ずかしかったんじゃの。良子、そうだろ。良子、お前は人見知りする性格やったからの。やから、結婚も遅かったし、やけど恥ずかしがることなんか何もないんだよ。良子」

 そして、

「そうですな、おじいさん」と相槌を求めた。

「うん、そうだ。お前は満足な結婚生活を送っておらんようだからわしが教育したるわい」

 そう言っておじいさんは、娘の服を脱がしにかかった。あまりの非常識さに娘は、ヒッと喉をつまらせ、あらがいだしたが、助けを呼べば一家の恥さらしになるので涙を浮かべて、

「どうして、どうして?」と嘆いた。

「良子」とおばあさんが声をかけた。

「何も恥ずかしがることはない。そうら、おじいさんのテクニックに身を任せるのだよ。ほうら、悪い事なんかじゃないだよ」

 熱いものが目にたまり、そして彼女はしだいに押し殺したあえぎを漏らし始めた。

『いけないことだ、いけないことだ』と思いながら体の芯をゆっくり這いずるように嘗め回す快楽は、罪悪感をとろけさせていった。おばあさんが、

「良子、これが快楽だよ。これが……」と耳元でささやいている。

 首をふる良子、しかし、下から突き上げてくる快楽に体は揺さぶられる。

 その時、学校に行っている長男が帰ってきた。今日は土曜日ではないのになぜ早いのだろう。祖父に組み敷かれた母親の良子を見て、

「母ちゃん」と呟いた。

「ほほほ、ヒロシかいな。さあ、おばあちゃんのところにおいで」 と祖母は股を広げて誘いの言葉を投げた。ヒロシは信じられないという顔をした。目をこすり、それからまばたきをしてじっと見つめた。

「何しているんだ、早くおいで!」

 いっぽう祖父に組み敷かれた母親はヒロシが帰ってきたことに気がつき

「母ちゃんはね、母ちゃんはね」と言ったがその後が続かなかった。するとおじいさんが助け船を出した。

「ヒロシ、お母ちゃんはな、今、耐えているんだ。いいか、これは遊びではないぞ」と言った。母親は、

「そうよ、ヒロシ」ときつくわが子を睨みつけた。

「さあ、こっちに来なさい、ヒロシ」と祖母はヒロシの手を引き、ズボンを脱がして、例の皺のよった口で小さなヒロシのものをしごきにかかった。

 そこに婿養子の賢一が帰ってきた。いつも遅いのに今日に限って早退して戻ってきた。

「お儀母さん、お儀父さん、それに良子、ヒロシまで……」

 するとおじいさんが、

「これ、何をぼうっと突っ立っておる。ばあさんの後ろが空いているじゃろ」と怒鳴りつけた。

 婿養子の賢一は一瞬、たじろいで後ろに下がったが、

「はよう、賢一さん!」と祖母が催促し、かつ、

「そうよ、あなた!」と妻が怒りのこもった口調で言い、

「父ちゃん、何やっている!」と息子のヒロシが罵ったので、きっとこれには何かわけがあるのだろうと思い、おもむろにズボンを下げて、おばあさんの後ろについた。

 そこに近所の人が何事だろうと垣根の上から覗いていたが、他人とは冷たいもので加わる者はいなかった。

                 完

  

              

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