Updated, Mayl 2007  溶接冷却時間計算精度向上、 
                 サブマージアーク溶接熱を板表面完全断熱に変更(反射率を0.9から1.0へ)

              限界値を超える入力値を排除

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鋼材の溶接性・溶接金属材質計算メニュー

1.炭素当量と変態温度 1.説明 4.鋼材溶接必要予熱温度 1.説明
2.計 算 2. 計算
2.アーク溶接の熱履歴と冷却時間 1.説明 5.溶接金属引張強さ 1.説明
2.計算 2.計算
3.熱影響部最高硬さ 1.説明 6.溶着金属靱性 1.説明
2.計算 2.計算

   


1..炭素当量と変態温度の計算式

変態温度(oC)

Ac3=937.2-436.5C+56Si-19.7Mn-16.3Cu-26.6Ni-4.9Cr+38.1Mo

+124.8V+136.3Ti-19.1Nb+198.4Al+3315B

Ac1=750.8-26.6C+17.6Si-11.6Mn-22.9Cu-23Ni+24.1Cr+22.5Mo

-39.7V-5.7Ti+232.4Nb-169.4Al-894.7B

Ms=521-353C-22Si-24.3Mn-7.7Cu-17.3Ni-17.7Cr-25.8Mo

炭素当量(wt%)

CE(IIW)=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5

CE(WES)=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14

Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B

CEn=C+f(C){Si/24+Mn/6+Cu/15+Ni/20+(Cr+Mo+Nb+V)/5}

ここで, f(C)=0.75+0.25tanh{20(C-0.12)}



.2溶接熱履歴計算式

Rosenthal式に有限板厚と板表面熱伝達効果を加えた式:

ここで、
T: 温度 (oC)

Tph:予熱パス間温度 (oC)

:外気温度 (oC)

Tw: 移動点熱源による温度上昇

x: 溶接線方向座標(cm)

z: 板厚方向座標(cm)

y: 溶接線方向直角方向座標(cm)

w: 溶接線方向移動座標 w = x-vt

v: 溶接速度(cm/s)

t: 原点.(x=y=z=0)を熱源が通過した後の時間 (s)

R:

Rn:

Rn':

Qp: 熱源のエネルギー  (cal/s)

h: 板厚 (cm)

: アーク熱効率 = 1.0 (SAW),  0.80 (SMAW, GMAW),  0.60 for GTAW

: 溶接部での表面熱放散率 =0.0005cm/s (SAW),
                       =0.0020cm/s (SMAW, GMAW, GTAW)

: 溶接部の外の表面熱放散率  (=0.0020cm./s)

r: 板表面での熱反射率 =1.00 (SAW),  =0.80 (SMAW, GMAW, GTAW)

: 熱伝導率 =0.06+0.000012 HI (cal/cm s)

: 熱拡散率 =0.042+0.000016 HI (cm cm/s)

E: アークエネルギー E = 60 A V /v (J/cm)

HI: 溶接入熱 HI = E (J/cm)

A: 溶接電流 (A)
V: 溶接電圧  (V)

上記の溶接熱伝導式は、板表面での熱反射率、rを導入しているので数学的には正しくない。rの導入は計算値を実験結果に
近似させるためである。本計算結果と実験結果(百合岡他:溶接学会論文集、22(2004) No.1 p.53)の比較をを以下に示す。



3.熱影響部最高硬さの予測

以下の文献に記載の計算式に基づく。

N. Yurioka et al., :"Prediction of HAZ hardness of steels", Metal Construction, vol19, (1987), p217R

ここで、

t8/5: 800oCから 500oCまでの冷却時間  (s)

f(B) はB量による焼入れ性iの上昇, (C<0.8%, N<0.01%)



4. 必要予熱温度の推定

以下の文献記載の方法に基づく。

N. Yurioka and T. Kasuya: "A chart method to determine necessary preheat in steel welding"

Welding in the World, vol. 35 (1995), p327-334

または、
溶接選書10.「鉄鋼材料の溶接」 産報出版(1999), p.163

低温割れ防止のための予熱はアーク溶接時に溶接金属に溶解した拡散性水素の放出を目的に実施する。低温割れは以下の因子に影響を受ける。
1) 鋼の化学組成
2) 板厚、管厚
3) 溶着金属拡散性水素量
4) 溶接入熱
5) 溶接金属降伏強さ(残留応力)
6) 継手拘束
7) 開先形状(部分溶け込みの場合のみ、応力集中係数)
8) パス(単パスか多パスか)
10) 予熱方法(加熱速度、予熱幅)

本方法は上記要因のほとんどを考慮している。

1) 鋼材の化学組成

溶接割れ(低温割れ)感受性を評価するとして、次の炭素当量(wt%)が長年用いられてきた。
比較的C量の高い(C>0.15%)鋼材の溶接性を評価すると考えられている。

CE(IIW) = C + Mn/6 + (Cu + Ni)/15 + (Cr + Mo + V)/5

この炭素当量は溶接焼入れ性(マルテンサイトになり易さ)を表す。小入熱溶接時の熱影響部硬さは焼入れ性とC量(マルテンサイトの硬さを決定する)の両者の関係で決定され、C量が低下するにつれ硬さに及ぼす焼入れ性の影響度が低下する。すなわち、C量の影響度が増す。以下の炭素当量はこの相互効果を考慮しており、広い範囲の鋼材の溶接性を評価できると考えられ、本法はこの炭素当量(wt%)を用いて必要予熱温度を求める。

CEN = C + f(C) { Si/24 + Mn/6 + Cu/15 + Ni/20 + (Cr + Mo + Nb + V)/5 }

f(C) = 0.5 + 0.25 tanh { 20 (C - 0.12) }

f(C) はCが低減するとともに1.0から0.5に低下する。C量が0.15%以上ではCE(IIW)とほぼ同じ値となる。
CEN炭素当量は ASTM A 1005/A 1005M-00及びASME B16.49-2000に規定されている.

2) 溶着金属拡散性水素量

高温のアークの作用で溶接金属に過飽和に溶解した拡散性水素量は低温割れに対する重要な因子の一つである。低温割れ防止の限界予熱温度は水素量の対数にほぼ比例する。すなわち、水素量の低温割れに及ぼす影響は低水素域で著しく、高水素域ではその影響度は低い。本法はこの事実を考慮している。

低水素系溶接材料の使用は低温割れ防止の観点から非常に望ましい。その際、開先の錆、溶接材料の吸湿などによる水素量の増加に特に注意する必要がある。なぜなら、低水素域では水素量の影響が顕著だからである。

各種溶接法の溶着金属拡散性水素量の例を示す。:

ルチール系被覆アーク溶接棒 : 30ml/100g
セルローズ系被覆アーク溶接棒 : 60ml/100g
低水素系被覆アーク溶接棒 : 5 - 7ml/100g
極低水素系被覆アーク溶接棒 : 2 - 5ml/100g

ティグ、ソリッドワイヤガスシールドアーク溶接法 : 2ml/100g
フラックス入りワイヤガスシ−ルドアーク溶接法 : 6 - 10ml/100g
シームレス型フラックス入りワイヤガスシ−ルドアーク溶接法 : 2 - 4ml/100g

サブマージアーク溶接 : 2 - 7 ml/100g

3) 継手の拘束

継手の拘束が高いほど低温割れは発生し易いと思われているが、継手拘束が弱くてそのために回転変形が生じルート部に曲げ応力が高まり低温割れが促進されることがある。そのため、本法は継手拘束は考慮しない。ただし、y開先拘束割れ試験のようなスリット部を溶接する場合、あるいは補修溶接の場合は予熱温度を高めることを本法は要求している。

4) 開先形状

低温割れはK開先やX開先で最初の溶接側のルート部に発生しやすい.両側開先溶接においては,バック側の溶接を始める時にガウジング後にこのルート割れ発生を検査するのが通常である.両側開先多層溶接では,したがって,ルート割れよりもトウ割れが問題である.V開先のような片側溶接におけるルート割れ発生の感受性は,応力集中の高いX開先やK開先のルート割れよりも遙かに低い.そのために,本方法は開先形状を予熱温度決定の要因として考慮していない.
.
Y開先やレ開先の部分溶込み溶接では,ルート割れの検出がなされないので,y開先拘束割れ試験の予熱温度を採用しなければならない.

5) 溶接パス数

多パス溶接において,ルートパス溶接部の水素も残留応力も後続のパスの加熱効果で低減する.したがって,多パス溶接部ルート割れ感受性は単パス溶接部ルート割れのそれよりも低い.

本法は最初にy開先拘束割れ試験でのルート割れ防止の必要予熱温度を与える.y割れ試験はノッチ応力集中係数が高く,冷却速度の速いショートビードでかつ単パスで,さらに拘束度も高い.すなわち,非常に厳しい割れ試験方法である.本方法は溶接長の長い通常の多パス溶接時の必要予熱温度を与える.この温度はy割れ試験ルート割れ防止の予熱温度よりかなり低い.

6) 溶接残留応力

本法は引張り溶接残留応力を考慮している.溶接残留応力のピーク高さは溶接金属の降伏応力に近いと考えられる.溶接施工の経験から,高強度鋼になるほど多パス溶接熱影響部にトウ割れとビード下割れ,および溶接金属の横割れが発生しやすくなるとされている.したがって,鋼材の強度が高まるほどそして溶接金属の降伏強度が高まるほど,本法の与える必要温度はy割れ試験からの予熱温度からの下げ幅が少なくなったものとなっている.即ち,下げ幅はYP360級鋼では75度Cで,YP700級鋼では0度Cである.

なお,溶接金属降伏強度は不明である場合は,鋼材の最小規格降伏強度を用いる.

7) 予熱方法

溶接部から水素を放出させる目的の予熱は,予熱幅が広く予熱の加熱速度が遅いほど,その効果は高い.加熱幅は開先の両側それぞれ200mmm以上が望ましい.急速加熱で局部加熱の予熱では予熱温度を高めねばならない.

8) 外気温度

低温割れに及ぼす外気温度の影響は著しい.本法は外気温度を10oC前後を対象にしている.外気温度が0oC以下の場合の予熱温度の選定に関しては以下の文献が参考になる.

T. Kasuya and N. Yuiroka: "Determination of necessary preheat temperature to avoid cold cracking under various ambient temperatrues", ISIJ International, vol. 35 (1995), No.10, p.1183-1189

9)直後熱

直後熱は水素放出に非常に効果がある.必要予熱温度が高すぎる場合は後熱を併用すべきである.以下は直後熱条件の一例である.

150 oC for 95 hrs, or 200 oC for 29 hrs, or 250 oC for 12 hrs, or 300 oC for 2 hrs.


 5.溶接金属引張強さの予測

本サイトの溶接技術データベースの低合金鋼溶接金属のデータに基づき予測式を構築した。詳細は以下の文献を参照下さい。

   百合岡、児嶋:溶接学会論文集、vol.22 (2004), No.1, p.53-60

本方法では、先ず、溶接金属の硬さ、Hvを溶接金属元素量、C, Si, Mn, Cu, Ni, Cr, Mo, V, Nb, Ti(wt%) と溶接冷却時間、t85(s)から予測する。

 Hv = (HM + HB)/2 - (HM-HB) arctan(x)/2.2

   x = 4 log(t85/tM)/log(tB/tM) - 2

   HM = 884C + 294

   tM = exp(10.6CEI - 4.8)
   CEI = C + Si/24 + Mn/(2.88(1 +Mn)) + Ni/30 + Cr/16 + Mo/8

   HB = 145 + 130 tanh(2.65CEII - 0.69)
   CEII = C + Si/24 + Mn/(2.16(1 + Mn)) + Cu/10 + Ni/45 + Cr/10 + Mo/5 +2V + 2.2Nb/(1 + 5Nb) + Ti/10

   tB = exp(6.2CEIII + 0.74)
   CEIII = C + Mn/(1.68(1 + Mn)) + Ni/15 + Cr/10 + Mo/8
i
以上で求められたHvを、次式により引張強さ(TS)に変換する。

   TS(MPa) = 3.0Hv + 22.3



6.被覆アーク全溶着金属の靱性の予測

本サイトの溶接技術データベースの低合金鋼溶接金属の 1.5 被覆アーク溶接金属ケンブリッジ大データのEvans提供分データを、ニューラルネットワーク解析した結果で予測している。
全溶着金属はアークエネルギーが1kJ/mm(入熱量で0.8kJ/mm)、パス間温度200oC、板厚20mmと溶接条件一定で得られたものであり、溶接条件の影響は本予測には含まれない。
靱性はシャルピー衝撃値が28Jになる温度で示されている。
ニューラルネットワーク解析はケンブリッジ大学の D. J. C. Mackay氏開発ソフトを用いた。本解析では複数のコミッテイモデルを構築し推測するので予測のバラツキの定量化を可能にする。このサイトで計算される予測の最小値と最大値の差(推定誤差範囲)が大きいことは入力値付近の元データが少ないためで予測精度が劣る、すなわち予測の信頼性が低いことを意味し、たとえば誤差範囲が30oCを超えるとその予測値はあまり信頼できない。コミッテイモデルについては下記の解説を参照下さい。

 藤井、市川;溶接学会誌, vol.70 (2001), No.3, p.335-339

本予測で用いられた全データに対する推定値と実測値との関係および推定誤差範囲を下図に示す。


Ver. 1.4 - Updated, June 2008