東京税理士会総会平成20620日発言内容原案

鈴木雅博税務審議部長殿   (税務審議依頼の件)
山本恵子広報部長殿     (広報紙掲載の件)


東京税理士会麻布支部 志岐昭敏

 

「ストックオプション判決」に対する私の論文について、税務審議と会報掲載を依頼しました件であります。

去る3月に、このことをお願いしておりますが、未だ正式にご返事を頂いておりません。お願いの仕方が悪かったので、私の真意を理解して頂くことができなかったのかと思います。

総会出席の皆様のご理解を賜るために、少しお時間を頂きたいと思います。

私が、税理士会を通じて会員や世間に訴えたいことは、「裁判所が、税法を全く適用しない。」ということであります。

そう申し上げることの法的根拠を示して、「判決」を解説したものが、先日当会に提出しました論文であります。

税法の条文に書いてある言葉をそのまま頭に入れて、ひとことひとこと、裁判所のいっていることとつき合わせていけば、裁判所が、税法の条文を何も適用していないことは、簡単に分かるのですが、

裁判所が述べていることの正否を判断するという観点で、判決文を読んだのではなかなか分かりません。

優秀な裁判官が、黒を白にするために、奸智を絞って書いた文章ですから、善意をもって読んだのでは分かる筈はないのです。

私自身、それが、事実の捏造と法律適用の偽装だと確信するのに1年半、その手口を解明して著書とするのにもう1年半かかかりました。

1 裁判所や国税庁は、所得税法について二つの基本的な過ちを犯しています。

一つは、所得税法の「所得」を、「利益」と取り違えていること。

もう二つは、所得税法36条の「経済的利益」を、「収入」ではなく、「利益」と取り違えていることであります。

その誤りを、「ストックオプション課税訴訟」や、「債務免除益課税訴訟」にみることができるのです。

2 「利益」とは

 一つの取引、又は、関連する複数の取引の結果として計算されるものであります。その場合、取引の段階ごとに利益を計算する人もあれば、ある段階の累積で利益を計算する人もあります。

3 ストックオプションに例をとり説明します。

会社からの要請で役員に就任した人が、五年間勤務すれば、その後五年間以内に、会社の株価がいくら高くなっても、現在の株価500円で、1万株購入することのできる権利(ストックオプション)を与えられた。そして8年で退職した。権利をもらってから10年目の株価が4000円になったので、権利を行使して、500万円を支払い、時価4000万円の株式を取得した。その後一株5000円でその株式を譲渡したとします。

税法を知らない人は、株を譲渡した時に初めて利益が出たと考える人が一般であります。その場合は譲渡の時に5000万円−500万円=4500万を利益と考えることになります。

 しかし、各取引の段階で利益が出たと考える人は次のとおりの計算をします。

@ 権利を取得した段階で計算する利益 権利の価額をX円とします。

A 株式を取得した段階で計算する利益 

   4000万円−500万円−権利の価額(X円)=3500万円−X円

B その株式を譲渡した段階で計算する利益

   5000万円−4000万円=1000万円

 

ただし、権利を取得した場合、権利の価額の評価が困難であるから0円で計算するのであれば、権利を取得した段階の利益は0円であります

4 課税上の問題

     このように、計算の仕方によってさまざまの利益が考えられますから、課税する上で、利益のとらえ方を統一する必要があります。

「利益」は、その段階の、区切り方で、「課税時期と課税年度」、「所得の金額」、「所得の種類」が大きく異なってきます。どの段階の利益を「所得」と考えるかで、税負担が大きく異なるので、そのことは極めて重要な課題であります。

5 このような課題に答えているのが税法であります。

36条は、「収入」に基づいて利益を計算することを定めています。「所得」とは「収入でとらえる利益」であります。すなわち「所得」とは「収入によって個別化された利益」ということができます。

 所得税法23条乃至35条(各種所得の計算)および36条(収入金額)は,「収入の金額」を基本として所得を計算し、「収入の発生時期」によって課税時期及び課税年度を決定し、「収入を生ずる直接の原因となる行為」によって所得の種類を決めています。

「所得」とは、これらの「収入を基本とする要件事実で構成される利益」であります。

所得を構成する要件事実の総体は「所得の構成要件」といわれています。罪刑法定主義で刑罰の構成要件が明確にされているのと同じく、租税法律主義のもとでは、課税物件である所得の構成要件が明確にされているのです。

 このような主張に対して、国側は何も反論できず、独自の見解といって誤魔化しています。裁判所が争点として取り上げないので、国に対する釈明を求めることを要望しても、裁判所は、これに応じません。

下級裁判所は、私達の主張により、先に下された最高裁判決が法律を適用していなことが解っているので、「所得の構成要件」を争点とすることを敢えて避けているのであります。

6 ストックオプションにおける「収入」と「所得」   

36条の条文のとおり課税物件を表現すると

@ 権利を取得した場合は、「権利をもって収入する場合の所得」

A 権利を行使した場合は、「株式をもって収入する場合の所得」

 B 株式を譲渡した場合は、「金銭をもって収入する場合の所得」

が課税物件としての「所得」であります。

 裁判所が「収入」と切り離して論じているいわゆる「権利行使益」は、「所得」ではありません。

7 「経済的利益」は「収入」を示す言葉です。判決は、「経済的利益」を「利益」を示す言葉と取り違えています。

それは、通達が、「差額に相当する収入の金額」を「利益」と表現しているからです。経済的利益とは、「収入」の一形態であります。「収入」から「支出」を差引いた「計算上の利益」を意味するものではありません。

 法36条では「収入」は、金銭に限らず、取得した「物」や「権利」、享受した「その他経済的利益」も「収入」としています。

「その他経済的な利益」とは、他人の財産を利用するという経済的価値、遊興飲食等のサービスを受けるという経済的価値、電気、ガス等の用益の提供を受けるという経済的価値、その他他人の役務提供を受ける経済的価値等、人が具体的に経験する経済的価値をいいます。

そのような経済的価値に対しては通常対価が支払われます。対価が支払われないとき、又は実際に支払った金額が「その他経済的な利益」の時価より低額であるとき(予め約定された価額で取引される場合を除く)は、対価支払の不足額が所得の計算上収入金額とされるのです。

基本通達3615(経済的利益)は、対価支払の不足額を「差額に相当する利益」といっています。それが一般に「経済的利益」を「計算上の利益」と 誤解させている原因なのです。

この通達は、収入した物、権利、その他経済的な利益の価額のうち、収入金額に計上する金額を定めたものと解すべきであります。したがって、正しくは「差額に相当する収入の金額」というべきであります。

通達の標題となっている「経済的利益」は、物、権利、その他経済的な利益の総称であります。

このことを、裁判において主張したのですから、裁判官は承知している筈であるのに、判決理由で、権利行使益が経済的利益に該当するという嘘をついているのです。

8 税法の適用とは、税法に定める要件を適用することです。

 その手法は、「事案の具体的事実」と、「条文に課税要件として定めている事実」を対照して、「課税要件事実に該当する具体的事実」を抽出し、その「抽出した具体的事実(訴訟法においては直接事実という)」が課税要件を充足すると判断したときに、その「抽出した具体的事実」に対して、その条文を適用することであります。「事実認定」とは、「抽出した具体的事実」が不明の場合や、その事実についての法的形式が法的実体を伴わない場合に、事実を認定することであります。

判決は、結論に至るための法的過程を何も述べていません。法律を適用していないから述べることができないのです。

 このような税法適用の手続きを実施すれば、本件権利行使益は、法28条(給与所得)の課税要件に該当せず、法34条(一時所得)の要件を充足しているとの結論に達するのであります。

 裁判所の判決のように、「権利行使益については所得税法に定めがない」といって、給与所得と判決するための複雑な理由を述べる必要は全くないのであります。

上述した法的根拠に基づいて、「国税庁の考え方」、「裁判所の考え方」を批判しております。また、「株式をもって収入する場合の所得」を給与所得というために、「権利をもって収入する場合の所得」と一つのものにすることを意図した用語の不当使用と詭弁が弄されていることを、「課税事実の捏造と法律適用の偽装」といっているのです。

9 課税庁(財務省と国税庁)は、「権利の価額」と「権利行使益」を同一に取扱っています。

   法36条を適用すれば、ストックオプションの行使により株式を取得したのですから、すべての権利行使益を「株式をもって収入する場合の所得」として課税しなければならないのです。それなのに、国税庁は、「譲渡制限のない権利を行使した場合の利益」には課税していません。おそらく、ストックオプションを株式引渡請求権と誤認しているからであると思います。売買による引渡請求権は契約の成立によって、目的物である資産の所有権が移転すると解されていますから、その後の目的物の値上り益は内部利益であるから課税の対象にならないと考えているのです。ストックオプションは形成権であるからそれによって株式の所有権は移転しません。

そのように誤認しているのなら「譲渡制限のある権利を行使した場合の利益」にも同じく課税できない筈であるのに、これには課税している。その理由は、譲渡制限がある権利は担税力がないから、それを取得した場合には課税できない。そこで、その権利を行使した場合に課税するという乱暴な理由です。  

それならそうで、「権利を行使して株式をもって収入する場合の所得」という独立した課税物件として所得の種類を判断すべきであるのに、所得の種類は「権利を取得したことによる利益」と同じく給与所得としています。給与として給付されたストックオプションという資産が、権利行使によって株式に変わったのですから、独立した所得の実現があったとして取扱うべきであります。権利の譲渡制限有無とは関係なく「株式をもって収入する場合の所得」として所得の種類を決定しなければなりません。

ストックオプションを取得した時に給与所得として課税できないから、その代わりに「そのストックオプションを行使した場合の利益」を給与所得として課税するという趣旨の説明なのです。

   「譲渡が制限されている権利を行使した場合」の所得が給与所得であるという理由をいろいろいいますが、税法が定める「権利をもって収入する場合の所得」と「株式をもって収入する場合の所得」を一つにするための詭弁にすぎないのです。

   課税庁の担当者に、所得税法を適用するという租税法律主義の精神が欠如しているから、「権利をもって収入する場合の所得」と「権利を行使して株式をもって収入する場合の所得」が一つであると思わせるための理由探しの詭弁を弄しているのです。これは、公務員の法律遵守義務違反である。

   譲渡に制限があることは、「権利をもって収入する場合の所得」の計算における「価額」の評価の問題です。取得した権利の価額(時価)が0円なら利益は0円であるから、所得金額も0円でよいのです。担税力は所得の計算の過程で客観的に考慮されているのです。

課税物件とは担税力推定の対象をいうのですから、所得の金額の計算が0円になるからといって、課税物件としての所得の存在を否定することはできません。

 たとえ「権利を取得した場合の所得」が0円であっても「権利を行使して株式をもって収入する場合の所得」は独立した課税物件であるから、その要件にしたがって所得の種類を判断しなければなりません。 

   権利を取得した場合は、譲渡制限の有無にかかわらず、その取得価額が時価より低いか否かを問題にしなければならないのです。「株式」は、譲渡が制限されていても、無償で取得すれば、時価相当額を付与されたものとして課税されるのですから、「権利(ストックオプション)」についても同様に扱うべきです。

所得税法施行令84条は、「権利を行使した場合の利益の計算に用いる金額」を「権利の価額」として定めています。法36条は、権利の価額は、その権利を取得した時における価額とすると定めているのですから、この定めは違法であります。また時系列的に実施不可能であるから無効とすべきものであります。

しかるに基本通達とその解説では、「権利の価額を定めたものではない。権利に係る収入金額を定めたものである、その収入金額の課税時期を権利行使の時と定めたである」という乱暴な詭弁を弄しているのです。           

10 最高裁判所は、「権利行使益」が課税対象であるといい、上告棄却決定により確定した高裁判決では、「権利付与による経済的利益」が課税対象であるという。一体どちらが本当でしょうか。

 最高裁判所第3小法廷判決(平成171月)は、「本件ストックオプションは・・・その権利を行使することによって初めて経済的な利益を受ける・・・」と述べています。

 ストックオプションは資産としての権利ですら、その付与を受けた時点において「ストックオプションという権利」すなわち「経済的な利益」を既に「収入」として受領しているのに、判決文は意図的にそのことに触れていません。

ストックオプションは、株式売買契約又は新株引受契約(本書において株式取引契約という)の形成権であるから、株式取引契約のように株式の所有権が移転するものではありません。したがって株式を取得する義務も株式代金を支払う義務もない。そのような義務を負担することなくストックオプションで予め定められた価額で株式を購入できるという権利をもっていることが資産としての経済的価値であります。

したがって、ストックオプションは、法36条に定める「権利」に該当するのですから、権利の付与を受けた時点で「経済的な利益」を得たといわなければなりません。

最高裁判所は、「経済的な利益」を「計算上の利益」と観念して論をすすめているから、権利の付与によって所得は発生せず、権利行使によって所得が発生していると考える誤りを犯しているのである。

しかし、最高裁が、納税者の上告を棄却したことにより確定した原審判決判決では、「ストックオプションの付与によって発生した経済的利益が権利行使によって確定する」とか、また「権利行使益は権利行使時にその価額が確定する」という判決理由を示しています。最高裁が「権利を行使して初めて経済的な利益を得る」というのとは全く反対に、高等裁判所は、権利の付与を受けた時点で経済的利益が既に発生しているという考え方を示しています。国税庁の、権利の価額を課税対象とする考え方もそれに近いのです。

「利益」を「収入」によって個別化していないから、裁判所によって又課税庁によって、課税の対象(課税物件)のとらえ方が全く異なるのです。

また、最高裁判決は、権利行使益が給与所得であると結論するに至る過程を、文法を無視した巧妙な詭弁により次のとおり説明している。

 「会社は、原告に対し、本件ストックオプション付与契約により本件ストックオプションを付与し、その約定に従って所定の権利行使価額で株式を取得させたことによって、権利行使益を得させたものであるということができる。」

 この文章は、ストックオプションの付与から権利行使益の発生までのすべてが、ストックオプションの付与という一つの法律行為であるかのように、思わせることを意図した文章であります。

本件事案の真正な事実は、権利行使という法律行為によって株式を取得したことであります。権利者自らの一方的意思表示によって、その有する権利を行使し、ストックオプションで予め定められ権利行使価額相当の代金を支払って、株式を取得したのです。したがって、「株式を取得させた」「本件権利行使益を得させた」というような、会社を主語とする使役形で表現されるような事実はないのです。

 また、その使役形を修正して、「その(付与契約)の約定に従って所定の権利行使価額で株式を取得した」という言い回しに変えたとしても、まだ不自然な箇所があり事実を正しく表現した文章ということはできません。

権利行使価額は、付与契約において、権利の内容として予め定められた価額であります。ストックオプション付与契約により、権利を行使して株式引渡請求権を成立させる時の価額が、予め定められていることがストックオプションの本質であります。裁判所がいうように、単に「所定の権利行使価額」という言い方ではその本質を明らかにしたことにならない。

さらに、「付与契約の約定に従って株式を取得した」というのも事実に反します。「付与契約で与えられた権利」を行使して株式を取得したのであります。権利行使という法律行為はストックオプション付与契約と関連があるとはいえ、その法律要件と法律効果を異にしているのであるから独立した法律行為であります。付与契約の締結から、株式の取得までの経過を説明するのであれば、「権利を行使して」は省いてはならない文言である。「付与契約の約定に従って株式を取得した」というのは事実に反するのです。

判決は、所得の種類判断の基礎とする事実から、権利行使益が権利行使という独立した法律行為により生じた利益である事実を除外しているのです。

このような、二つの法律行為が一つの行為であるような不自然な言い回しは、「権利をもって収入する場合の所得」に適用すべき給与所得の要件を、「株式をもって収入する場合の所得」に無理に適用しようとの意図があるからこそ作ることのできる文章である。

このような、詭弁の論理によって、「本件権利行使益は会社から原告に与えられた給付にあたるものというべきである。」と結論しているのである。

 権利行使益は、その保有するストックオプションを行使して株式を取得するという法律行為によって得た利益であるから、それを会社から給付された事実はない。給与所得というために、給与所得の課税要件である「給付の事実」があるかの如く課税事実を捏造しているのです。

他の裁判所の判決理由は、課税の対象の説明こそ最高裁判決と異なるが、いずれも権利行使益を給与というために、「権利をもって収入する場合の所得」と「株式をもって収入する場合の所得」の存在を否定して給与所得というための詭弁を弄しているにすぎない。

そして、所得の構成要件を適用しないで、「権利を行使して株式をもって収入する場合の所得」の原因を、「権利をもって収入する場合の所得」の原因である勤務にまで遡って、「権利行使益は会社から受けた給付というべきである」との事実に反する判断をしている。それは課税事実の捏造であります。

いずれの裁判所も、権利行使という法律行為によって株式を取得したという事実、権利行使によって利益がでたという事実があるのに、その事実に基づいて、所得の種類を判断することを避けているのである。

11 裁判所は、「経済的利益」と「場合」の言葉の不当な使用により、課税事実を捏造し、税法適用を偽装しています。

 判決は、「権利をもって収入する場合の所得」と「株式をもって収入する場合の所得」の二つを一つにして「権利を付与された場合の権利行使による経済的利益」という言い回しで課税の対象を表現しています。

 この文言には、二つの用語のごまかしがあります。一つは、「収入」の意味に用いるべき「経済的利益」の用語を「利益」の意味に用いていること。二つは法律用語として「場合」を使う場合は、次に述べることの前提条件として用いるべきであるのにそのルールが守られていないことです。

 この文章は、「ある原因によって出た利益」を課税の対象と考えての説明であるから、その前提条件と結論(利益が出た原因)には整合性が要求されます。

「無償で権利を付与された場合の利益」は当然「無償で権利を付与されたことによる利益」であって「権利行使による利益」ではない。「権利を行使した場合の利益」は当然「権利行使による利益」であって「権利を付与されたことによる利益」ではない。「無償で権利を付与された場合の権利行使による利益」というまやかしの文言を用いることによって、「権利をもって収入する場合の所得」と「株式をもって収入する場合の所得」を一つと思わせることを意図しているのであります。

また、「経済的利益」を「収入」の意味に用いるのであれば、「無償で権利を付与された場合の経済的利益(収入)」は、「権利を付与されたことにより取得した経済的利益」すなわち「権利」であり、「権利を行使した場合の経済的利益(収入)」は「権利を行使したことによって取得した経済的利益」すなわち「株式」であります。

そして、権利の価額が0円であって結果的に所得の金額が0円であっても、「権利をもって収入する場合の所得」つまり「無償で権利を付与されたことによる所得」は理論的に存在するのでありますから、「無償で権利を付与されたこと」を「株式をもって収入する場合の所得」の発生要因と考えることはできません。

 このように、給与所得該当性の判断を難しく論ずるまでもなく、法36条及び法23条乃至35条が「収入によって構成される利益」を「所得」と定めているのであるから、法律の条文をそのまま適用すれば、権利行使益が給与でないことは自明のことであります。

12 裁判所は「所得の構成要件」をばらばらにして、判決理由を述べています。

 所得の構成要件は、「所得計算のための収入の金額及び取得又は享受した経済的利益の価額」「課税時期判断のための収入の発生時期」「所得の種類と課税時期判断のための収入の基因となる行為」という要件事実の総体をいいます。

 課税庁や裁判所は、「権利の価額」と「所得の金額」は、「株式をもって収入する場合の所得」の計算方法で行い、「課税時期」は株式を取得した時で判断しているのに、「所得の種類」だけは、権利を取得した時の事情で判断しています。

税法は客観的かつ画一的に課税対象を判断するために、法23条から36条において各種所得の構成要件を定めているのに、所得の構成要件をばらばらに適用して憚らないのです。

13 法律を適用しないで納税者の財産権を侵害したのですから、「裁判官の故意」による納税者の財産権の侵害であります。

給与所得という結果が出ることを意図して、「経済的利益」と「場合」の言葉を不当に使用して、それに向けた理由を作成して、法律を適用しないで納税者の財産権を侵害したものですから、「裁判官の故意」による納税者の財産権の侵害であります。

 これを処罰する規定はありません。裁判官は、その慢心から、犯罪を認識することなく、自己の栄達のために法律を適用しないで納税者の財産権を侵害しているのです。

 以上に述べた法的根拠に基づいて、裁判所が法律を適用せず、課税事実を捏造し、税法適用を偽装していることを、全面的かつ詳細にわたり指摘した論文であります。なおこのことを世に訴えるために著書「ストックオプション判決にみる課税事実の捏造と税法適用の偽装」を出版しました。

このような題で本を出版するには、躊躇するものがありましたが、「事実の認定」と「法解釈」についての見解の相違を述べたものと区別するためには、このような表現にする外はありませんでした。

14 税理士には租税法律主義の崩壊を阻止する社会的責任があります。

 税理士制度が社会的に有用とされる所以は、その専門的知識によって税法を正しく実現することであります。税理士が守るべき絶対的基準が税法であります。そのことは、課税庁の善良な公務員もまた心から願っていることと考えます。

私には、税法を適用しない課税処分をして、納税者に納得する説明も出来ず、「上からの命令ですから」とだけ言って、怒りの言葉に堪えていた第一線職員の姿が痛々しく思い出されます。

 「所得」を「利益」と取り違え、「収入」を意味する「経済的利益」を「利益」と取り違えていることをこのまま見過ごしては、この確定判決を理由に「経済的利益」の名において税法を適用しない恣意的課税を受けるケースが果てしなく広がるものと考えます。

既に、新株予約権行使の取り扱い通達にそれをみることができます。この通達は税法を無視して、通達で各種所得(課税物件)の構成要件を定めるという憲法違反を公然と犯しているのであります。今後、事業所得や相続したストックオプションを行使した場合の課税について、憲法違反の訴訟が多く提起されるものと考えます。この基本通達の憲法違反については、別途に著書を出版して世に問うつもりであります。

税理士会は、税理士の社会的基盤を守るために、その会則によって、会員税務争訟の援助、税制・税務行政の調査研究を事業の内容としている筈です。この問題はストックオプション訴訟だけの問題ではありません。租税法律主義の崩壊が現実のものとなっているのに税理士会が何も取り上げないのは会則の不履行であります。

税理士会が、判決にみる税法不適用について基本的考え方を明らかにし、政治連盟を通じて、租税法律主義を守る施策が講じられることを要望します。

 

 

   

 平成20年6月20日東京税理士会総会、発言の内容





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ストックオプション判決に対する論文の「会報掲載」と「税務審議依頼」の件