ストックオプション税務訴訟と

  裁判官の不法行為   Q&A

 

   租税法律主義の崩壊がはじまっている

   納税者の権利を守るために裁判官を訴追する

 

            

ストックオプション訴訟補佐人 

                   税理士 志岐昭敏

 

 


「ストックオプション訴訟と裁判官の不法行為Q&A」 索引

 

序文                              

第1、「ストックオプション」と「ストックオプション付与制度」・・・1  

Q1、「ストックオプション」とは?・・・・・・・・・・・・・・・1               

Q2、「ストックオプション付与制度」とは?・・・・・・・・・・・2           

Q3、課税庁や裁判所は「ストックオプション付与契約」によっ   

てストックオプションを付与されたと言っていますね。・・・・2

Q4、ストックオプションの行使とは?・・・・・・・・・・・・・・4              

 

第2,ストックオプション訴訟の基本的問題点・・・・・・・・・・・4           

Q1、税務訴訟で一体何が問題になっているのですか。・・・・・・・4

Q2、「収入が発生した事実によって所得を認識し、所得の種類を判断する」ということについてについて説明して下さい。・・・・  6              

Q3、取得した株式が「収入」なら、本件事案の所得は「株式取得益」

と言うべきですね。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

Q4、「収入」に該当しない権利行使益を所得と偽って、その権利行使

益の「源泉」が会社からの給付であるかのように嘘に嘘を重ねて

いるということについて具体的に説明して下さい。・・・・・・7

Q5、ストックオプションを行使して株式を取得しただけで、どうし 

て所得税がかかるのでしょうか?・・・・・・・・・・・・・・8            

Q6、何故、課税庁は、一時所得を給与所得としたいのですか。・・・9   

 

第3、本件に適用すべき所得税法上の課税要件・・・・・・・・・・・10           

Q1、所得の種類を判断するための法律的根拠を説明して下さい。・・10                

Q2、「課税対象」の範囲をどのように考えるかで、「所得の種類」が 

変るというのでは困りますね。・・・・・・・・・・・・・・・12

Q3、課税庁はどうして、ストックオプションは課税対象ではないと言うのですか。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

Q4、ストックオプションが資産であることについて説明して下さい。15

Q5、「株式取得益」に課税される税法上の根拠は何処にあるのですか15

Q6、課税庁はどうして、法36条は、「所得を構成する収入」につい

て定めたものでなく、「所得の課税時期」を定めたものと言うので

すか。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16

Q7、「実現した所得に課税する」ということの所得税法上の根拠が、

「収入」に関する規定なのでしょう。・・・・・・・・・・・・18

Q8、権利行使益と所得税法28条(給与所得)の関係について説明して下さい。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20                                                  

Q9、権利行使益と所得税法28条の「給与等」の関係について説明して下さい。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22              

10、退職後数年経った後に株式を取得したことによる利益を、判決 

は何故「給料や賞与の性質」があると言うのか判りませんが。 23

 

第4、「経済価値の流れ」と「収入の発生と所得の実現」・・・・・・・24      

Q1、「経済価値の流れ」と「未実現利益」について説明して下さい。 25          

Q2、法36条の「収入」の規定を適用しなければ客観的判断は不可能

   であることについて説明して下さい。・・・・・・・・・・・・26

Q3、本件の「株式取得に係る経済的利益」がキャピタルゲインであることについて説明して下さい。・・・・・・・・・・・・・・・・26

Q4、「未実現利益」「収入の発生と所得の実現」の意味について説明 

して下さい。…・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27

Q5、課税庁や裁判所がいう「権利行使益」は、「収入」に該当しな  

いということですね。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29

 

第5、「所得の源泉」と「収入の源泉」・・・・・・・・・・・・・・30              

Q1、所得税源泉徴収制度の対象である「所得の源泉」「収入の源泉」

について説明して下さい。・・・・・・・・・・・・・・・・・30                 

Q2、「低額譲受益」と「ストックオプション行使による株式取得益」 

では、所得の源泉に相違があるのではないでしょうか。・・・・32

 

第6、権利行使益の正体は「ストックオプションの評価益」・・・・・33

Q1、裁判所がいう「権利行使益」と、一般にいう「権利行使益」

とは内容が違うのですね。・・・・・・・・・・・・・・・・・33                 

Q2、裁判所は、ストックオプションを行使して、オプション価額

相当の購入代金を支払い、株式を取得したことによる利益を、

どのような詭弁で給与所得と言うのでしょうか。・・・・・・・34

Q3、「経済的利益と偽る」とはどういう意味ですか?・・・・・・・35

Q4、裁判所は、所得税法が「収入」を基本としていることの主張を

認めない訳ですが、「収入という形態で捉えない所得」とは一

体どのようなものが考えられるのですか?・・・・・・・・・・36

Q5、課税対象を「権利行使益」と考えるのと、「株式取得益」と

考えるのではどこが違うのですか。・・・・・・・・・・・・・37

Q6、権利行使時点を、権利行使直前ではなく直後と考えたらどう

なりますか?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39

Q7、裁判所は、何故「権利行使益」という言い方にこだわるので

すか。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39

 

第7、所得税法に適用されない「物件変動の理論」。

契約時点で「所得」は発生しない。・・・・・・・・・・・・・40

Q1、ビジネスの世界では、契約の履行によって「収入」が発生

し、「利益」が実現するという考えは常識ですが、裁判所は、

契約の時点で所得が発生すると考えているように見受けら

れますが。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40

Q2、従業員株式購入制度(ESPP)では、オプション価額が契

約時の時価以下で決められる場合がありますね。・・・・・・・42

 

第8、非常識な判断を許さないために税法がある。・・・・・・・・・43

Q1、裁判所の非常識な判決理由が通用するほど税法はいい加減な 

ものですか?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43

 

第9、「平成17年最高裁判決」に対する反論・・・・・・・・・・・45

Q1、平成17年最高裁第3小法廷判決が示した判決理由は、法28条

に出てくる「文言」を使用していないので、権利行使益が何故法

28条の給与所得に該当するのかさっぱり解りません。給与所得

と判断した判決理由の要点を説明して下さい。・・・・・・・・・45           

Q2、「権利行使益」を給与所得とした理由は、私達が考えている事実と全くかけ離れていますね。・・・・・・・・・・・・・・・・・45

Q3、判決が理由とした六つの嘘と事実の歪曲について説明して下

さい。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47

Q4、納税者は、ある行為をしたらどのような税金がかかるかを考えな

がら行動しているのですから、その事実を歪曲して税金をかけら

れるのでは、安心した経済生活はできませんね。・・・・・・・50

 

10、裁判官の「憲法認識」と「税法知識」及び「良心」の欠如・・50

Q1、裁判官の「憲法認識の欠如」について説明して下さい。・・・・50

Q2、裁判官の「税法知識の欠如」について説明して下さい。・・・・54

Q3、「裁判官の良心の欠如」について説明して下さい。・・・・・・・55

Q4、常識から外れた詭弁も、裁判所がそうと言えば、それが法律

と同じになって、一般国民を拘束することになるのでしょう。・・55

 

11、行政処分の無効確認の訴え・・・・・・・・・・・・・・・・・56

Q1、税法を適用しないでなされた課税処分は無効と思いますが、

何か方法はなでしょうか。・・・・・・・・・・・・・・・・・56

 

12、裁判官弾劾の必要性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57

Q1、処分の無効確認の訴えを起こしたとしても、これまでのような

裁判所の体質では正しい判決は期待出来ませんね。・・・・・・57     

Q2、裁判官弾劾裁判所への訴追理由はどういうことになりますか。 58

Q3、裁判官が所得税法を適用していないことを明らかにするために

弾劾裁判所に要望したいことは?・・・・・・・・・・・・・・59        
 

「ストックオプション訴訟と裁判官の不法行為Q&A」 本文

 

第1、「ストックオプション」と「ストックオプション付与制度」

 

Q1、「ストックオプション」とは? 

A、ストックオプションとは、「オプション契約」の約定による株式を、その約定の数量、約定の価格(この価額をオプション価額といいます)で、その約定の期間内に購入することを選択することが出来る権利です。

この権利は、売主が買主に対して、約定の期間内に買主が売買を完結する意思を表示した場合は、約定の株式を、約定の数量、約定の価額(オプション価額)で売渡すことを約する「オプション契約」によって発生する買主の権利であります。このストックオプションという権利を発生させる契約を「ストックオプション契約」と言います。

売主はこの契約によって、買主に対して約定通り株式を売渡す義務が発生しますが、買主には、株式を買う義務や代金を支払う義務は未だ発生しません。この契約は、民法556条に認められている「売買の一方の予約」に準ずる契約です。買主は、その株式の価額が上昇した場合に、その権利を行使して売買契約を成立させることが出来ます。その意味で、ストックオプションは「株式売買の一方の予約完結権」ということができます。ストックオプションが予約完結権であることは、課税庁も法廷において認めているところです。

「売買の一方の予約」は、相手方の完結の意思表示を停止条件とする売買契約ではなく、相手方の予約完結の意思表示により本契約たる売買が初めて成立する純然たる予約であります。(大審院判決大正8年6月10日民録25、1007)

以上は、買主が売買予約の完結権を取得する場合につてのみ説明しましたが、売主が完結権を取得する契約もあります。しかし、本件事案には関係ないので説明を省略します。

 

Q2、「ストックオプション付与制度」とは?

A、会社が、役員又は従業員の長期勤続を図る目的で、一定の勤務条件により「ストックオプション契約上の権利」を付与する制度です。ストックオプションプランと呼ばれています。

ストックオプション付与制度の原型であるストックオプションという権利はデリバティブ商品として売買の対象になっています。デリバティブ商品としてのストックオプションは、オプション契約において、買い方がオプション料を支払います。つまりストックオプションという権利を買うわけです。そして、その権利が、デリバティブ商品として売買の対象になっているのです。

役員及び従業員の長期勤続のインセンティブを図る目的で、このストックオプション契約を会社と役員又は従業員との間で締結することを、予め社内制度化したものが、ストックオプション付与制度というのです。

ストックオプション付与制度に基づくオプション契約では、オプション料を支払いません。無償でストックオプション契約を締結するから、俗にストックオプションの付与という言葉が使われますが、法律的に言えば、「ストックオプション契約上の権利」を付与するということです。労務の提供がオプション料の変わりになっているのです。

 

Q3、課税庁や裁判所は「ストックオプション付与契約」によってストックオプションを付与されたと言っていますね。

A、課税庁や裁判所は、俗の言い方を利用して、ストックオプション付与契約によってストックオプションを会社が付与したと言います。「オプション契約」は権利証に記載されるか、又は契約書にサインされて存在しますが、通常「ストックオプション付与契約」はありません。「オプション契約」を「付与契約」と言い変えることによって、権利行使益を給与というための嘘がここから始まっているのです。

物を付与する場合は、その物が実在している訳ですから、現実に付与する行為又はその物を付与するという契約のみで、その物権の移転が可能ですが、権利を付与する場合は、権利という具体的な物が存在するわけではないのですから、当事者間の、当事者の権利及び義務を定める契約によって、まず、ストックオプションという権利を発生させる必要があるのです。この契約を「ストックオプション契約」と言います、

その「ストックオプション契約」の内容が書いてあるストックオプション証書を交付することを「ストックオプションの付与」と言っているのです。これを、法律的に表現すれば、「ストックオプション契約上の権利の付与」というのが正しいのです。

会社に入る時に、「一定の勤務条件を達成した時はストックオプションを付与するという契約」を締結したとしても、それは「将来締結するストックオプション契約上の権利」の付与契約なのです。その付与契約においては、ストックオプションの対象となる株式の数もオプション価額も決まっていないのです。通常は、ストックオプション付与制度はあっても、ストックオプション付与契約はありません。

ストックオプションを付与するということは、オプションの対象となる自己株式や新株の発行について、取締役や株主総会の承認決議や権限機関の決議を経た上で、対象者と会社との間に無償でストックオプション契約を締結することを言うのです。

ストックオプションについて「付与」と言われるのは、ストックオプションという権利が、「ストックオプション証書」として証書化されたり、証券化されているので、物と同じように認識されているからです。

  しかし、その「権利」は、ストックオプション契約において、売主側のオプション価額による株式売買の一方の予約によって発生するという法律関係を理解していないと、最高裁判決理由の「付与契約によって・・・権利行使益を得させた」という嘘に騙されることになります。

  ストックオプションが「付与」という言葉の対象となっていることは、

 所得税法の適用に当っては、むしろ、ストックオプションが「給付」即ち「収入」の対象であることの理由として考える方が常識に適うと言うべきではないでしょうか。

 

Q4、ストックオプションの行使とは?

A、ストックオプションは株式売買契約の一方の予約完結権ですから、その行使によって、初めて株式売買契約が成立します。したがって、ストックオプション契約は株式売買契約ではありません。このことは、大審院の判例に基づく見解であることは既に述べた通りです。しかし、課税庁や裁判所は、権利行使という行為のみで、売買契約やその履行と関係なく、株式引渡請求権が発生すると思わせるような言い方をしています。「所得が発生する行為」が売買契約の履行であることを隠蔽しているのです。平成17年最高裁判所判例の嘘を見抜く上で、大変重要なポイントですからよく覚えておいて下さい。

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第2,ストックオプション訴訟の基本的問題点

 

Q1、税務訴訟で一体何が問題になっているのですか。

A、争点と結論は極めて単純です。所得の種類判断に、所得税法に記載されている「収入」という課税要件を適用するか否かが争点です。結論は、法律を適用しない方が間違っているに決まっています。

  所得税法は、所得を「収入」という形態で捉えること、所得の種類を「所得を生ずる行為」又は「所得の源泉」によって区分すること、所得金額は「収入金額」又は「総収入金額から必要経費を差引いた金額」を基礎としていることを定めています。

私達は、本件事案について、収入、所得を生ずる行為、所得の源泉・必要経費を検証した結果、本件事案の所得税法上の「総収入金額」は取得した株式であり、「所得」はオプション価額で株式を取得したことによる利益であり、「所得の源泉」はストックオプションの評価益であるから一時所得と判断しました。しかし、裁判所は、この主張に対して自らの見解や判断を何も示すことなく、独自の意見の一言で排斥しました。所得税法を忠実に適用した判断に対して、おそらく反論出来ないのだと思います。

一方、課税庁や裁判所は、所得税法に根拠をおくことなく、「収入」に該当しない未実現利益の権利行使益を課税対象と観念し、その性質を論ずるのに六つの嘘を重ねて、給付の事実がないのに、事実に反して、「権利行使益は会社からの給付に当るというべきである」と強弁しているのです。

そして、法28条(給与所得)の規定を根拠とするのであれば、「収入金額の源泉」は何か、「所得の源泉」は何かを検証して、その源泉が「給与等」に該当するか否かを明らかにしなければならないのに、「給付というべきである」との事実認定だけで、権利行使時点の計算上の利益を対象に給与所得と判決したのです。

課税庁や裁判所が所得税法を根拠としていないことは、判決理由に、上述の「所得税法の条文に定める条件」に結びつく文言が一つも見当らないことで明白なのです。

 

Q2、「収入が発生した事実によって所得を認識し、所得の種類を判断する」ということについてについて説明して下さい。 

A、所得の種類を「収入が発生した事実」によって判断すれば、本件事案の「収入」は「取得した株式」であります。その「収入」は、ストックオプション契約に基づく権利を行使して成立した株式売買契約の履行という「所得を生ずる行為」によって発生したものです。その「所得」は、オプション価額相当の株式代金を支払い、オプション契約に基づく株式を取得したという事実によって認識される利益ですから、「株式を取得したことによる利益(株式取得益)」が課税対象になります。株式取得益は、ストックオプションの法的効果がもたらすストックオプションの評価益を「源泉」とする所得つまりキャピタルゲインですから、「一時所得」なのです。

  裁判所は、権利行使益を、「権利行使時点の株式の時価とオプション価額の差額」と言っていますから、それは、株式代金を支払って、株式を取得するという取引の事実を対象としない独自の概念なのです。そのイメージを対象に所得の性質を観念的に論じているだけなのです。「収入が発生した事実」から離れた観察には何らの客観性を期待することは出来ないのです。

              

Q3、取得した株式が「収入」なら、本件事案の所得は「株式取得益」

と言うべきですね。

オプション価額相当の購入代金を支払い、株式を取得したことによる利益ですから、「株式取得益」と言う方が正しいのです。

租税特別措置法29条の2は、「株式の取得に係る経済的利益」と言っていますが、「権利行使益」とは言っていません。

 裁判所と納税者側で、権利行使益が意味するところを異にしたまま、「権利行使益」の所得の種類を論議することは無益ですから、私達担当の裁判では、「株式取得益」の所得の種類は何かが、本件事案の命題であることを主張しています。

 

Q4、「収入」に該当しない権利行使益を所得と偽って、その権利行使

益の「源泉」が会社からの給付であるかのように嘘に嘘を重ねて

いるということについて具体的に説明して下さい。・・・・・・6

A、最初、課税庁は、「ストックオプションという権利」を課税対象として、給与所得課税するのに、「権利の価額の評価時期」と「課税の時期」を「権利行使の時点」と誤ったのです。本件訴訟の初期の段階で法36条2項違反を指摘され、そこで、課税庁は、「権利行使時点の株式の時価とオプション価額の差額」を「権利行使益」と呼んで、その「権利行使益」が課税対象であると言い直しました。

課税対象が変ったのだから、所得の種類の判断が変るのが当然であるのに、給与所得課税処分だけはそのままで、一旦誤ってなした課税処分を正当化しようとして、その理由探しに懸命になっているだけですから、論理が逆さまになって、法的根拠や合理的理由を見出すことが出来ないのは当然なのです。

「権利行使時点の株式の時価とオプション価額の差額」は権利行使時点のストックオプションの評価額を示す金額です。したがって、その「権利行使益」は未実現利益なのです。未実現利益は課税の対象になりませんから、このような考え方には課税の法的根拠がなく、本件事案について所得があったとして課税することは出来ないのです。この課税庁の考え方では、一時所得として申告することすら必要がなくなります。

又、権利行使益の正体は、ストックオプションの評価益ですから、 「権利行使益(ストックオプションの評価益)の源泉」はストックオプションであるのに、課税庁と裁判所は、「権利行使益の源泉」を給与と言いたいために、法36条に「権利」が「収入」に該当することを定めているのにそれを適用せず、ストックオプションの収入ならびに資産該当性を否定しています。そして「ストックオプションの源泉」である筈の労務の対価を、権利行使益の源泉であるかのように偽装しているのです。

裁判所が、所得税法を適用していないということは、法23条から36条までの条文に、所得計算の要件として「収入」「収入金額」「総収入金額」「行為」「源泉」の言葉があるのに、判決書には、それらの法律要件と権利行使益を結びつける言葉が一つもないということで明白であります。

裁判所は、「所得税法上の所得ではない権利行使益」が、さも「所得」であるかのように見せかけるために、「収入」の意味に使用しなければならない「経済的利益」という言葉を、「計算上の利益」「未実現利益」や、「評価額あるいは評価益」、「未実現の所得」「実現した所得」等を意味する玉虫色に使用して、権利を行使して得た利益は、会社が付与契約により得させたものであるから会社からの給付に当るという詭弁を弄して、国民を欺妄しているのです。

 

Q5、ストックオプションを行使して株式を取得しただけで、どうして所得税がかかるのでしょうか?

通常の株式の取得であれば、株式を買っただけでは、買主に所得が発生したとして所得税が課税されることはありません。

  しかし、ストックオプションによる売買契約に基づく取引は、オプション価額対象の株式の時価が上昇した時点で、役員又は従業員自らの投資判断で株式を購入することを選択し、オプション価額で株式を取得することが目的の取引ですから、株式の時価が必ず株式購入代金を上回ることになります。したがって、その取引行為が利益を生ずる行為になります。法36条により取得した株式が「収入」であり、その「価額」は株式を取得した時の価額で計算され、その金額が同条の「総収入金額」に算入されるのです。

 ストックオプションが付与された時点では、ストックオプションの価額を評価することは困難ですが、株価が上昇した時点では、ストックオプションの評価額は、「その評価時点での株式の時価とオプション価額の差額」で計算されます。その評価額に含まれる内部利益は所得税法上の課税対象になりませんが、売買取引によって、その経済価値が、株式に変った時点で、含み益が実現したとして課税されることになります。 

  オプション価額を上回る株式を取得するという行為による所得であるという客観的事実によって所得の種類を判断して,初めて所得税法が示している所得区分の基準を適用したということが出来るのです。

 

Q6、何故、課税庁は、一時所得を給与所得としたいのですか。

A、所得は、その金額が大きくなるに連れて高い税率を適用する制度になっています。この制度を累進税率課税と言います。一時的に大きな所得が出ると、高率の累進課税を受けて、平成8年頃は、税引き後では手元に25%しか残らない過酷なものでした。その負担を緩和する趣旨で、一時所得の特別控除が認められているのです。

課税庁は、更正の理由として、「公平の原則に基づき担税力にかかる所得の性質により所得の種類を判断する」と述べています。しかし、これは、所得税法解釈の原則ではなく立法の原則なのです。したがって、どのような性質の所得にどのような税負担をさせるかは国会が法律で決めることなのです。

金子宏著「租税法」には、「立法」は実質原理であり、「租税法律主義」は形式原理であると述べています。課税庁が徴税の立場で課税負担を定める自由裁量権は与えられていないのです。

課税庁は、法律に定める条文の文理解釈を先ず優先しなければなりませんが、それを怠っているのです。租税法律主義実践の基本的なことであるのに、最高裁第3小法廷が可笑しな先例を作ってしまったので、その後の所得税法を根拠にした主張に全く耳を貸さなくなったのです。

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第3、本件に適用すべき所得税法上の課税要件

 

Q1、所得の種類を判断するための法律的根拠を説明して下さい。

A、本件事案について、所得税法を適用して所得の種類を判断するには、定められた条文に基づいて、次の三つの検証が必要です。

@、本件事案に関する「収入」は何か。その法的根拠は、所得金額計算の基礎として法36条に「収入」と記載されていることです。又法23条から35条までの各種所得の計算の基礎として「収入金額」「総収入金額」が定められていることです。「所得」が「収入」という形態で捉えるべきことは、所得税法を読めば、多くの「収入」の文言があることをもってしても議論の余地がないほど明かなのです。

課税庁が最も高く評価している金子宏教授は著書「租税法」においても、「我が国の所得税法の所得は、収入という形態で捉える所得である。」と述べています。

この定めがあるからこそ、契約時点で所得が発生したとしないで、契約の履行によって「収入」が発生し「所得」が実現する、その実現した所得に課税すると解釈されているのです。  

A、本件事案の「所得の源泉」と「収入の源泉」は何か。その法的根拠は、所得の種類を特定するため、法23条、法24条、法28条、法30条に「○○に係る所得」「○○の収入金額」と記載されていること、及び、所得税法第4編に「源泉徴収」と記載されていることです。○○には、利子、配当、給与、退職手当という各所得の源泉が特定されています。給与所得とは、「所得の源泉」と「収入金額の源泉」が給与である所得をいうのです。

B、本件事案の所得はどのような「所得を生ずる行為」によって生じたものであるか。その法的根拠は、所得の種類を特定するため、法26条、法27条、法32条、及び法33条に「○○による所得」「○○より生ずる所得」と記載されていることです。○○には、不動産の貸付、譲渡等所得を生ずる行為の種類が特定されています。

C、本件事案には、「必要経費」あるいは「収入を得るために支出した金額」が存在しているか、その法的根拠は、法26条、法27条、法32条、法33条、法34条及びに法35条に掲げる所得は、「収入金額」又は「総収入金額から必要経費・収入を得るために支出した金額を控除した金額」を基礎として計算しているからです。

   上記の法律に定める条件を本件事案に適用すると、「収入」は取得した株式で、「所得の源泉」はストックオプションの評価益で、「所得を生ずる行為」はストックオプションの行使により成立した株式売買契約の履行であり、「収入を得るために支出した金額」は、オプション価額相当の株式購入代金と代行業者への手数料等ということになります。給与所得課税では、代行業者への手数料等が控除されないという不合理を解決することは出来ません。

  いわゆる「権利行使益」は「収入」に該当しないので、権利行使益が所得税法上の「所得」に該当することはありません。又、権利行使益の「源泉」はストックオプションであって給与ではありません。

課税庁や裁判所は、最初から本件事案の検討対象を給与所得と特定して、権利行使益が給与の性質を有していると言う理由探しの論証をしているだけです。上述した所得税法を根拠とする本件事案についての「収入」の検証も、「所得を生ずる行為」の検証も、「収入の源泉」及び「所得の源泉」についての検証も、「収入を得るために支出した金額」の検証も、所得税法を適用するためになすべき検証は何も行っていないのです。所得税法28条に掲げられている給与所得という表題だけを見て所得の種類を選んでいるだけで、上記のように、法23条から法36条までに定める課税要件を適用して区分することを何もしていないのです。

そして、権利行使益が給与の性質を有していると言うために、法律に定める課税対象(課税物件)の範囲を無視して、因果系列を、給与という目的を果たすところまで遡っているにすぎないのです。「収入」と「源泉」は、経済価値の流れで判断しなければならないのです。

 

Q2、「課税対象」の範囲をどのように考えるかで、「所得の種類」が変るというのでは困りますね。

A、憲法84条には、租税を課すには法律によるだけでなく、法律に定める条件によらなければならないことを定めています。課税要件法定主義といわれているものです。

  「課税対象」は、一般的には「課税物件」と言います。課税物件は、課税対象の範囲を具体的に定めるものですから、課税物件を構成する要件は、罪刑法定主義において刑罰の構成要件が法定されているのと同じく厳格に税法の中に定められているのです。課税要件の中で、「課税物件」は「納税義務者」、「税率」と共に、実体的課税要件の中核となるものです。

所得税法上の課税物件は、「所得」です。立法に当っては、所得の種類の性質によって租税負担の調整を図る必要から、さらに10種類の「各種所得」に区分し、その各種所得の性質に応じた所得金額の計算方法を定めていますから、具体的には各種所得が一つの課税物件ということになります。課税物件としての各種所得の内容や範囲が具体的でなければ公平な課税は出来ませんから、その所得の種類を区分する要件を具体的に税法に定めてあるのです。課税要件を定めていない税法は憲法違反になるのです。学説は、これを課税要件法定主義と言っています。又、税法を適用するには、まず、この課税要件を明確に認識しなければなりません。学説は、これを課税要件明確主義と言います。したがって、課税物件である「所得」を構成する要件は、これを定めてあるものとして該当する条文の発見と検証の手続きを実施しなければならないのに、裁判所はそれを怠っているのです。

「所得」については、未実現所得に課税するか否かが問題になります。

 そこで、所得税法は、「収入」を基本として所得を計算することを定めて、実現した所得に課税することにしています。次に何時「所得」が実現したとするかを決めておかないと、「その年分の所得」の計算は人によってまちまちになります。そこで、「収入すべき金額」を「収入金額」や「総収入金額」に計上することを定めています。このことは発生主義といって、「収入の発生した時期」を「収入計上の時期」と定めていると解釈されています。このように、「所得を収入という形態で捉えること」と、「収入の計上時期を発生主義で捉えること」は課税物件である「所得」の構成要件なのです。課税物件である「所得」を構成するのが「収入」なのです。

課税庁や裁判所は「課税物件」という観念を無視しているから、利益と利益の源泉の対象となる事実の範囲を、その利益が給与と言えるところまで拡大して、本来であれば、ストックオプションという収入の源泉である給与を、権利行使益の源泉であるかのように偽っているのです。しかも、その権利行使益は「収入」にも「所得」にも該当しないのです。「所得」を「収入」の認識で厳格に捉えることが、所得税法適用の原点なのに、その原点を実行していないのです。  

 

Q3、課税庁は、どうしてストックオプションを課税対象ではないと言うのでしょうか。

A、課税庁は、労務の対価を権利行使益の源泉としたい訳ですから、ストックオプションを課税対象と認めると、労務の対価はストックオプションの源泉であり、ストックオプションは権利行使益の源泉であるということになるから、ストックオプションが「収入」或は「資産」に該当することを認めたくないのです。後に説明しますが、権利行使益は、ストックオプションの評価益ですから、その内部利益の源泉は、ストックオプションということになります。

課税庁は、ストックオプションに担税力がないから課税対象でないと言いますが、課税対象とは、その対象を見て、その対象が担税力を有するかどうかを判断するのであって、担税力の有無が課税対象であるか否かの判断の基準になるのではありません。論理が逆さまなのです。

  ストックオプションは資産性を持つ「権利」ですから、法36条1項に定める「権利」に該当することは明らかなのです。ただ、この権利は付与を受けた時点では、価額が0円で評価する場合は実際に課税所得も0円になり課税されないこともあります。ストックオプションに課税するしないにかかわらず、条文には「権利をもって収入する場合」の規定があるのですから、その規定通りに、同項の「収入」に該当すると認識して課税物件を捉えることによって、初めて所得税法を適用したと言うことが出来るのです。

  

Q4、ストックオプションが資産であることについて説明して下さい。

A、将来の収益可能性を持つ権利が資産でない訳はありません。証券化してその権利が売買の対象になるのもストックオプションの法律上の効力に収益可能性があるからです。

 又、本件において相続の対象となるのも将来の収益可能性に着目して資産として認識されているからです。本件ストックオプションに譲渡禁止という制限があるのも資産として認識されているからです。譲渡性がないものに対して譲渡禁止ということはないのです。ストックオプション証書が発行されているのも資産として認識されているからです。ストックオプションを付与するという言葉が使用されているのも資産として認識されているからです。平成17年最高裁判決は、譲渡禁止の規定があることを、ストックオプションが経済的利益(収入の意味)でないことの理由としていますが、論理が逆さまなのです。

 法36条に「権利をもって収入する場合」の定めがあることは、所得税法が、経済上の「権利」を資産とみていることの何よりの法的根拠なのです。

 

Q5、「株式取得益」に課税される税法上の根拠は何処にあるのですか?

A、法36条1項に、「その年分の各種所得の金額の計算上、総収入金額に算入すべき金額は、その年において収入すべき金額とする。金銭以外の物をもって収入する場合の、収入すべき金額は、当該物の価額とする。」と規定されています。したがって、「株式という収入」がある以上、それは課税の対象となるのです。

又、法36条2項には、「物をもって収入する場合の価額は、その物を取得した時の価額とする」旨の規定があります。もし、この条文がなかったら、株式を取得しただけで、所得税を納める義務はないのです。

  この場合、株式を取得したことが、法36条1項の「物をもって収入する場合」に該当し、取得した時の株式の時価が、同条2項の「当該物を取得した時における価額」に該当し、その価額が「その年において収入すべき金額」に該当するのです。このような法律の条件を適用することによって、取得した株式の時価は、法36条1項の「その年分の所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額」に該当するとの結論に達するのです。この括弧書はすべて条文記載の文言の通りであって、私達の独自の見解を述べているものではありません。

つまり、ストックオプションの評価益が取得した株式として実現するから課税の対象となるのです。裁判所は、この規定を適用しないで、権利行使時点の株価を基準として権利行使益を計算しているのです。

裁判所は、権利行使益に課税する根拠は所得税法28条であると言います。しかし、その28条は、所得計算の基本が「給与等の収入金額」であることを定めているのですから、「収入金額」に該当しない未実現の評価益である権利行使益が、法28条の「給与所得」に該当しないことは明らかであります。

 

Q6、課税庁は、どうして、法36条は「所得を構成する収入」について定めたものでなく「所得の課税時期」を定めたものと言うのですか。

課税庁や裁判所は、納税者側に、法36条を適用していないことを指摘されてから、詭弁を弄して、法36条を適用した如く偽装することに必死なのです。そこで、法36条は、「課税時期」を定めたものという嘘を言っています。法36条をよく読んで下さい。

法36条は、「その年分の所得の金額の計算上収入すべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は・・・」で始まる文章であって、「課税時期は」という言葉は一つも出てきません。

もし、課税庁が言うように、法36条が、「収入」について定めている条文でないのであれば、金銭以外の「収入」を取得時で評価する法的根拠は全くないことになるので、給与所得は勿論、一時所得として申告する根拠すら無いことになります。権利行使益は、もともと所得ではないので本件事案に対して所得税を課税することは全く出来なくなります。

なお、各種所得の計算方法を定めた法23条から35条は、それぞれ「収入金額」又は「総収入金額」を計算の基礎としているのですから、法36条を適用するまでもなく、所得を「収入」という形態で捉えることを定めているのです。

法36条は、「その年分」の所得の計算上「収入金額」又は「総収入金額」に計上しなければならない「収入」とは、「その年において収入すべき金額」であることを定めているのです。それは、「収入」の計上基準を発生主義によって計上することと解釈されています。国税庁所得税法基本通達は、第2款「所得金額計算の通則・法36条(収入金額)関係」に、「収入金額の収入すべき時期」と題して、様々の取引を取上げて「収入の計上時期」を具体的に定めています。それにもかかわらず、課税庁は法廷において、法36条は、所得の課税時期を定めたものと虚偽の陳述をしているのです。

「その年において収入すべき金額」の「金額」は、その後に括弧を設けて、「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益で収入する場合は、当該物又は権利その他経済的な利益の価額」とすることが記載されています。括弧書に「・・・をもって収入する場合は」との文言があることは、「収入金額又は総収入金額」の基礎が「収入」であることを示しているのです。

「その他経済的な利益」とは、広い意味の「収入」の中の「その他経済的利益」を指しているのであって、無償で住宅を使用する場合のように無償で享受する用益やサービスを指しているのです。課税庁が言うように、「収入」でない計算上の利益や評価益を経済的利益というのではありません。

そして同条2項には、「前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。」と定めています。権利行使益という計算上の利益については、その「金額」ということがあっても、「価額」という言葉はそれに馴染むものではありません。

所得の課税時期は、「その年分」と最初から決まっているのです。「収入金額」も「総収入金額」も、「その年」という課税時期の「収入金額」や「総収入金額」と決まっているのです。その「収入」を、現金主義でなく発生主義で、「その年分の収入金額又は総収入金額」に計上することを定めているのが法36条です。裁判所は、上述の主張を、私達納税者側の独自の意見と言いますが、上述した文章の鍵括弧「」は、課税時期以外すべて法36条の条文に記載されている文言です。

裁判所は自ら、「裁判官は法律に拘束される」という職務に違反しているにもかかわらず、このような法律の条文通りの納税者側の主張を独自の意見と言うのです。

 

Q7、「実現した所得に課税する」ということの所得税法上の根拠が「収入」に関する規定なのでしょう?

A、そうです。「実現した所得」に課税するということの所得税法上の根拠は、所得税法に記載されている「収入」という言葉です。この言葉があるからこそ、所得税法は実現した所得に課税すると解釈されているのです。課税庁や裁判所は、実現した所得に課税するという考え方を随所で主張していながら、「収入という形態で所得を捉えること」を否定するという矛盾した考えを述べているのです。

所得税法23条から35条までには10種類の所得の内容と計算方法が規定されていますが、「収入金額」又は「総収入金額」を基本として計算することが規定されています。又、法36条には、「収入する場合は」「収入すべき金額」の言葉を用いて、「収入」の認識が、所得計算の始まりであることを示しています。このことから我が国の所得税法は、

 未実現の利益には課税しないで、実現した所得が課税対象であると解釈されているのです。

「収入」に該当しない利益は、「未実現の利益」しか考えられないのですから、「収入」で認識することを否定することは、判決理由で所得課税の実現主義を主張することと矛盾しているのです。

しかし、課税庁や裁判所は、所得を収入で認識することを認めると、権利行使益が所得に該当しないことを認めざるを得ないので、未実現である権利行使益に経済的利益という化けの皮を着せて、権利行使益が実現した所得であるかのように偽っているのです。

  課税庁や裁判所は、所得税法の用語として使用されている「収入」という言葉を避けて、「付与」「給付」という言葉を使いますが、これらは、「受取る側」と「与える側」の立場の相違で言い方が違うだけで、内容は同じなのです。即ち、受取る側からは、「収入するもの」「受取るもの」「給付されるもの」「付与されるもの」が「収入」であり、与える側からは、「付与するもの」「給付するもの」「支払うもの」を「給付」というのです。

  したがって、ストックオプションを付与されたと言えば、ストックオプションは「収入」であることを意味するのです。又、「収入」とか「給付」とは、「付与する」「給付する」「支払う」「収入する」「受け取る」という事実の結果として存在するのです。裁判所は、「権利行使益は給付に当るというべきである」と言いますが、「給付」の事実がないのに「収入」とか「給付」が存在するということは出来ないのです。権利行使益を支払うという事実がないのに、所得税を源泉徴収することは出来ないのです。株式の引渡は、「権利行使時点の株価とオプション価額の差額」の支払ではないのです。「権利行使時点の株価とオプション価額の差額」を支払うという事実がないのですから、株式引渡をした者は所得税法183条(給与所得に係る源泉徴収義務)に規定する源泉徴収義務者に該当しないのです。

 

Q8、権利行使益と所得税法28条(給与所得)の関係について説明して下さい。

法28条1項で、「給与所得とは給与に係る所得をいう。」と定めています。「給与に係る所得」とは、「給与を源泉とする所得」の意味です。

又、同条2項では、「給与所得の金額は給与等の収入金額から給与所得控除額を控除した金額」と定めています。「給与等の収入金額」とは、「給与所得等を源泉とする収入金額」の意味です。

そこで、給与所得であるためには、法28条1項の「給与に係る所得」と法28条2項の「給与等の収入金額」に該当しなければならないのです。

したがって、給与所得とは、所得や収入を生ずる経済価値の流れの中で、「所得の源泉」と「収入の源泉」が給与である所得ということになります。

法183条(給与所得の源泉徴収)では、「法28条に規定する給与等の支払をする者は、給与等の支払の際、その給与等について所得税を徴収し国に納付しなければならない」と定めています。支払をする金銭等の源泉が給与であることが、給与所得の源泉徴収の前提です。

「収入」を発生主義で捉えると、法28条2項の「収入金額」ということになります。即ち、「所得の源泉」と「収入金額」が不可分一体であることを前提として、法183条の源泉徴収が成り立っているのです。このことは、利子所得、配当所得、退職所得等、所得税の源泉徴収の対象になっている所得に共通の特徴です。

法36条の規定を適用すれば、「収入すべき金額」の源泉が「給与」であるということです。裁判所は、「収入」に該当しない権利行使益の「源泉」を給与と考えているようです。考えているようですというのは、判決理由では、法28条の要件である「源泉」の規定を適用していないので、「権利行使益の源泉は給与である」という法律用語で判断を示すことすらしていないのです。もっとも「源泉」という言葉では説明することが出来ない内容の判決理由を述べているのですから。そのように示すことが出来ないのは当然ですね。

本件事案の所得は、「ストックオプションを源泉とするストックオプションの評価益」が、取得した株式という「収入」によって実現した「所得」ですから、法28条の文言を適用して表現すれば、「ストックオプションの評価益に係る所得」又は「ストックオプションに係る所得」ということになります。したがって法28条の「給与に係る所得」に該当することはないのです。

本件事案の「収入」は株式ですから、株式の価額が「総収入金額」に該当し、株式代金や経費を差引いた金額が「所得」となります。その「所得の源泉」はストックオプションの評価益ですから、例え、「収入の源泉」が米国親会社にあるということが出来ても、それは「総収入金額の源泉」ですから、米国親会社は、法28条の「収入金額の源泉」にも「所得の源泉」にも該当することはありません。

又、「収入」で捉えない権利行使益は未実現利益ですから、仮に、その未実現の権利行使益の源泉が「給与」であるということが出来るとしても、法28条の「収入金額の源泉」が給与であるということは出来ません。即ち、「権利行使益の源泉」は給与等に該当しないし、「権利行使益」は「収入金額」に該当しないのですから、権利行使益が給与所得に該当すると言う根拠を法28条に見出すことは出来ないのです。

  

Q9、権利行使益と所得税法28条の「給与等」の関係について説明して下さい。

所得税法28条1項は、「給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という)」と定めています。