中医学の理論と哲学
| 唯物弁証観 |
| 唯物観 | 人は天地の気を受けてうまれる。気とは人体生命活動を構成し維持する基 本物質である。肉体が存在して初めて生命が存在し、生命が存在する事に よって初めて精神活動と生理機能が生じる。気血は人体を構成する基本物 質であり精神活動の物質的基礎である。同時に人体の生命活動や気血の 運行は又精神活動に主宰されている。したがって肉体と精神の統一は生命 存在の要であり、生命を養い、病気を予防し、寿命を延ばす。 中医診断治療上の重要な理論的根拠となっており、「治未病」(未病を治す) という予防思想を生んでいます。 |
| 弁証観 | 人体は自然の一部分であり、不断に運動している有機体である。自然も人 体の生命活動も絶えず気化し運動している。そして精神意識と生体の健康 には密接な関係がある。 中医治療学の治療原則と治療方法には弁証観の思想が含まれています。 主要には、「正治反治」(通常の治療法と、假象に対する治療法)や「異病方 宜」すなわち疾病を治療する時地域や季節、気候、生活環境、体質、性別 年齢などの違いを考慮し異なる治療方法を採用する事を定めています。 |
| 整体観 |
| 人体は有機体であり、人体の各組織は相互に協調し影響しあう統一体である。人と 自然環境は密接に関係し、人類と自然は統一体である。 中医診断治療学への応用 局部の病変を治療する時は必ず全体から出発し、局部の病変が引き起こした全身 の病理反応を重視し統一して診る事。内臓の病変も体形、体質、顔色、皮膚の色、 舌脉などに現れるので診断時にはその変化に注意すること。自然環境は人体の生 理、病理全てに影響するから、弁証論治においては必ず環境と人体の有機的つな がりに考慮して分析しなければならない。以上のような診断治療方針が導かれます。 |
| 弁証論治 |
| 弁証論治 | 疾病治療の基本原則 |
| 証 | 疾病の発展過程におけるある段階での病理を概括したもの |
| 弁証 | 四診による診断資料や症状、徴候を通して、疾病の原因、性質、部位、及 び正邪の関係を分析し、疾病がどのような証型であるかを判断すること |
| 論治 | 施治ともいい、弁証の結果確定した治療方法のこと |
| 同病異治 | 同一の疾病でも発病の病機が異なる場合は異なる治療方法を用いるこ と。また同一の疾病がその発展過程において異なる証候が現れた場合、 その異なる証候に基づいて異なる治療方法をとること。 |
| 異病同治 | 異なる疾病でも発病の病機が同じなら同一の治療方法を用いること。ま た異なる疾病がその発展過程において、同一の病機変化が出現した場 合も証候が同じであれば同一の治療方法をとること。 |
| 陰陽学説 |
| 陰陽とは、自然界の相互に関連する事物と現象を対立的に概括したもので、対立と 統一の概念を含む。陰と陽は相互に対立する事物を代表する概念で、またひとつの 事物の内部に存在する相互対立の両側面を分析するのに用いる概念。 事物の陰陽の属性は絶対的ではなく相対的であり、事物は無限に陰陽に分かれる。 陰陽の相互に対立する事物の双方の間には互いに依存と制約の関係があり、一方 の存在なくして他方の単独存在はありえない。また陰陽は不断に運動変化をくり返し、 その消長変化の中で相互の平衡を維持している。そして一定の条件下で、陰は陽に 転化し、陽は陰に転化する。 (例) 昼=陽 夜=陰 午前=陽中の陽 午後=陽中の陰 昼は夜へ、夜は昼へと、昼夜は相互に転化する 中医診断治療学への応用例 いかなる疾病でも臨床上複雑な症状や徴候が出現するが、全て陰陽の属性で分類 できる。一般に、 高熱、疼痛拒按、多言躁動、呼吸有力、便秘、尿黄、脉大洪数滑、 舌質紅蒼老、苔厚などは陽。畏寒、語声低微無力、疼痛喜按、呼吸無力、尿清、脉 小遅細渋、舌質淡嫩、苔薄津多などは陰に属す。臨床では先ず陰陽に大別して疾病 の本質を掴む。治療の基本原則は陰陽を調整し、不足を補い有余を瀉し、陰陽の相 対的平衡を回復させる。 薬物もその薬性、五味、昇降浮沈の作用によって陰陽に分類し、疾病の陰陽の盛衰 から治療原則を定め、薬物の陰陽属性に基づいて相応する薬物を選択し、陰陽失調 の病理状態を治療する。例えば疾病の症状が高熱、煩躁、尿黄、便秘、脉洪、舌紅 苔黄厚は陽証に属し、実証であり熱証である。薬物は寒涼、苦、清降、陰性のものを 用いその熱をとる。 |
| 五行学説 |
| 五行の五とは、木、火、土、金、水、五種の物質のこと。五行の行とは運動変化の意。 木、火、土、金、水は物質世界を構成する基本物質であり、世界の一切の事物はこの 五種の物質の間の運動変化により生じるとする古代哲学。五行の間は相克と相生の 関係にあり、この関係により事物の間の相互連携、相互協調、相互平衡を解決すると いう考え方。 中医診断治療学への応用 五行の帰属およびその相互関係に基づいて疾病を診断し病情や予後を予測でき、ま た相生相克関係に基づいて治療原則を確定できる。 (相生) 「虚則瀉其母」 「実則瀉其子」 (相克) 「抑強」 「扶弱」 |
| 蔵象学説 |
| 蔵 | 貯蔵の意味と、内臓の意味がある |
| 象 | 外に現れる生理病理現象のこと |
| 蔵象 | 臓腑の生理機能と病理変化は人体外部に徴候として現れるということ |
| 蔵象学説 | 人体の生理病理現象の観察を通して、各臓腑の生理機能、病理変化 及び其の相互関係を研究して確立された学説 |
| 古代の医家は長い医療実践を通して、人体外部の各種徴候が客観的に内部の臓腑 の生理病理変化を反映する事を発見した。その後各臓腑の生理機能と病理変化、そ の相互関係を研究し、中医独特の生理と病理の理論体系を形成した。 |
蔵象学説の特徴 |
| 1 臓腑とは内臓の総称であり、蔵象学説とは臓腑を基礎とした理論体系のこと。 2 臓と腑は表裏の関係であり、経絡により互いに連絡し、生理機能上もひとつの統一 体を形成している。 3 五臓と生体は繋がり特定の関連をもち、五臓の生理機能は各々体表に反応を現す ので、臨床上外部の徴候を観察し内臓の病変を理解し治療を進める事ができる。 4 五臓の生理活動と精神情志は密接に関連している。 5 臓腑には五臓、六腑、奇恒の腑があり、それぞれ共通した生理特徴と区別がある。 五臓(心、肝、脾、肺、腎)の共通特性は精気(精、気、血、津液等)を化生(生成転 化)し貯蔵する事。六腑(胆、胃、小腸、大腸、膀胱、三焦)の共通特性は水穀を受 盛し伝化(変化と伝導)すること。精気を臓さず、水穀を消化、伝導し糟粕を排泄す る。奇恒の腑(脳、骨、髄、脉、胆、女子胞)の特性は精気を蔵し、水穀とは直接接 触せず、水穀の精微を体内に運送し、外表とは接触しない。 |
| 6 中医学でいう臓腑は、現代人体解剖学と名称は異なるが、生理、病理が全く違うわ けではない。中医蔵象学説中の臓腑とは、ひとつの解剖学の概念ではなく、より重 要な事は、人体のある系統の生理学と病理学を概括したものであるという事。 |
各臓腑の生理機能 |
![]() |
| 気血津液学説 |
| 気、血、津液は人体を構成する基本物質であり、臓腑、経絡等の組織、器官が生理活 動を行う上での物質的基礎である。そして気、血、津液の化生及び代謝はまた臓腑組 織器官の正常な生理活動に依存している。 |
| 気 | 気とは人体生命活動を構成し維持している物質の中で最も基本的な物質で ある。気は先天の精気、水穀の精気、自然界の清気と、腎、脾胃、肺など臓 腑の生理機能の総合作用により生成される。 気は推動作用、温煦作用、防御作用、固摂作用、気化作用の五つの生理 機能を持つ。気の運動を気機といい、昇、降、出、入の四種の形式があり、 この運動は臓腑経絡等の組織器官の生理活動の中で体現される。 気は元気、宗気、営気、衛気の四種の気に分類される(例えば元気は臓腑、 経絡の気となる)。 |
| 血 | 血とは血液の事であり、人体を構成し人体の生命活動を維持する基本物質 のひとつで、主に営気と津液によって生成される。 血には全身の臓腑組織器官を栄養し、滋潤する作用がある。 |
| 津液 | 津液とは生体の一切の水液の総称(各臓腑、組織器官の体液や胃液、腸液 涎涙などを含む)。津液は人体を構成し、その生命活動を維持する基本物質 のひとつで、水穀から作られる。津と液は、その機能、形状、分布部位によっ て一定の区別がある。 |
| 経絡学説 |
| 経絡学説とは人体の経絡の生理機能、病理変化及び経絡と臓腑の相互関係を研究 した学説で、中医理論体系の重要な一構成部分。経絡とは経脉と絡脉の総称で、経 脉は主幹であり絡脉はその分枝である。 |
| 経絡は、十二経脉、奇経八脉、十二経別、十五別絡、孫絡、浮絡、十二経筋、十二 皮部で成り立っている。経絡は全身の気血を運行させ、臓腑組織器官や四肢関節と 連絡し上下表里をつなぐ通路である。 |
中医診断治療への応用 臓腑の病変は経絡を通し体表に反映されるので、経絡循行上の経穴の圧痛、結節 などの反応、皮膚の変化などは診断の一助となる(闌尾穴-虫垂炎など)。また偏頭 痛に少陽胆経の経穴を取るなど、循経取穴として鍼灸按摩治療上広範に応用され ている。また薬物がどの経絡に属するかによって、薬到病所の治療に利用できる。 |
| 病因病機 |
| 病因 | 病因とは六淫、七情、疫癧、労逸、痰飲、外傷などのこと。宋代の陳無擇の病 因分類理論である三因学説では、病因を外因、内因、不内外因の三つに分類 している。 六淫とは自然界の六気を指し、風、寒、暑、湿、燥、火の六種があり、気候の 異常変化などにより、人体の抵抗力が低下している時、人体に侵入して疾病 を引き起こす。疫癧とは強烈な伝染病のこと。七情とは喜、怒、思、悲、憂、恐、 驚を指し、精神情志の過度の刺激による臓腑、陰陽、気血の失調から疾病が 発生する。飲食とは飲食の不摂生を指し、偏食、過食、拒食、寄生虫、食中毒 などがある。労逸とは「過度労累」(過労)と「安逸」(couch potato)のこと。正常 な労働と体育鍛練は気血流通を助け体質を強くするが、長期にわたる過労は 気血を消耗させる。また「久臥傷気」(活動せず怠けていると気血の流通が悪く なり疾病の発生を招く)。痰飲とは水液代謝障害により産生された病理産物の ことで脾胃、胸肋、肌肉、筋、骨、臓 腑、経絡に停留すると、その部位により 複雑な症状と疾病を引き起こす。 |
| 病機 | 正邪の盛衰、陰陽失調、気血失調、津液代謝失調、内生の五邪、経絡病機、 臓腑病機により疾病の発生機序が説明される。 |
| 防治原則 |
| 予防原則 | 「未病先防」 疾病の発生前に適切な予防策を講じ、疾病の発生を予防する。 |
| 「既病防変」 疾病の発生後は早期に診断治療し、疾病の発展を防止する。 | |
治則 |
「治病求本」 疾病の根本原因を究明し確実な根本原因に基づいて治療する。 |
| 「扶正去邪」 扶正とは正気を助け、体質を強化し、抵抗力を高めること。また 去邪とは邪気を取り除くこと。 |
|
| 「調和陰陽」 陰陽の不足を補し、有余を瀉して相対的平衡を回復させること。 「調整臓腑機能」 「調整気血」 例えば血虚には補気養血、血脱には補気固脱、出血には補気 摂血、血随気逆には降気和血など |
|
| 「三因制宜」 「因時、因地、因人制宜」の治療を行う事。 |
『中医基礎理論』(成都中医学院編)日本語訳(要約) 無断転載は固くお断りいたします
翻訳 中醫針灸治療所
![]()
中医針灸治療所 中医針灸の適応症 中医針灸治療の実際 中国留学 医療保健体操 中医弁証問答 What's up?