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全国人権連 > 教育・啓発 > 「人権教育の指導方法等の在り方について[第1次とりまとめ](案)」に対する意見

   

 

 文部科学省は4月30日、「人権教育の指導方法等のあり方について[第1次とりまとめ](案)」(別窓が開きます)を発表し、意見を募集しています。 そこで全国人権連は、下記のように意見を表明するものです。

  


  

「人権教育の指導方法等の在り方について[第1次とりまとめ](案)」に対する

全国人権連の意見

  

 2004年5月19日

全国地域人権運動総連合

議 長   石 岡 克 美 

  

 文科省の「人権教育の指導方法等に関する調査研究会議」が4月30日に公表し意見募集を行っている標記の件について、意見を述べる。

 この研究会議は、「人権についての知的理解を深めるとともに人権感覚を十分に身に付けることを目指す人権教育の指導方法等の在り方を中心に検討を行ってきた」組織である。

 研究会議は「様々な人権問題が生じている背景」について、「基本計画」を引用し、「人々の中に見られる『同質性・均一性を重視しがちな性向や非合理的な因習的意識』、社会の急激な変化などとともに、『より根本的には、人権尊重の理念についての正しい理解やこれを実践する態度が未だ国民の中に十分に定着していないこと』」や、人権教育の現状に関しては「知的理解にとどまり、人権感覚が十分身に付いていないなど指導方法の問題、教職員に人権尊重の理念について十分な認識が必ずしもいきわたっていない等の問題」があるとの「指摘を踏まえ」て議論を重ねてきた。

 この「人権問題が生じている背景」についての誤った認識について私たち(旧全解連)は、国連人権教育の10年国内行動計画策定の折りや人権擁護推進審議会の第1次答申をまとめる際に意見として糺してきた。つまり、政治や行政の第1議的課題を指摘せず国民に責任を転嫁し、国民の意識を内心に踏み込み改変を迫るもので、「押しつけ」は許されないし、部落問題に偏向した教育を「人権」の名で継続することも認められないと指摘した。

 それが「中立性の確保」等の文言となって反映した経緯がある。

 今回の案も基本認識に大きな誤りがあることを同様の立場から先ず指摘しておく。

「人権教育のための国連10年」や「子どもの権利条約」をふまえ、「人権教育」の概念や「指導方法等」を検討されたい。

 今回の案には、「国連10年」や「子どもの権利条約」の文言はあっても内容が示されず、また生かされてもいない。

 「人権教育のための国連10年」(国連総会決議・94年12月23日)は、「人権教育とは、あらゆる発達段階の人々、あらゆる社会層の人々が、他の人々の尊厳について学びまたその尊厳をあらゆる社会で確立するための方法と手段について学ぶための生涯にわたる総合的な過程である」とし、「女性・男性・子ども一人ひとりが自らの人間的可能性を実現するために、市民的・文化的・経済的・政治的・社会的なすべての権利を認識しなければならないと確信する」と指摘する。

 そして2004年までの行動計画の「規範的根拠及び定義」では、「人権教育とは、知識と技術の伝達及び態度の形成を通じ、人権という普遍的文化を構築するために行う研修、普及及び広報努力と定義され」「(a)人権と基本的自由の尊重の強化、(b)人格及び人格の尊厳に対する感覚の十分な発達、(c)全ての国家、先住民、及び人種的、民族的、種族的、宗教的及び言語的集団の間の理解、寛容、ジェンダーの平等並びに友好の促進、(d)全ての人が自由な社会に効果的に参加できるようにすること、(e)平和を維持するための国連の活動の促進」を目指すこととされた。

 つまり、人間の尊厳を社会で確立するための方法と手段や一人ひとりの持つ市民的・文化的・経済的・政治的・社会的な権利を学ぶことで、平和で自由な社会を創ろうというものである。こうした理解のもとで「人権教育」が為されれば市民的良識ある倫理が培われると考える。

 一方、国連「子どもの権利条約」委員会は1月末、日本に対する「勧告」を行った。 「主要な懸念事項および勧告 一.実施に関する一般的措置」では、前回の懸念表明および勧告と係わって、差別の禁止、学校制度の過度に競争的な性質およびいじめを含む学校での暴力に関する「勧告」は充分にフォローアップされていない。委員会は、これらの懸念および「勧告」がこの「総括所見」においても繰り返されていることに留意を求め、「あらゆる努力を行なうよう促」している。 国内で行われている「人権啓発」や「人権教育」との関わりでは、「広報および研修」の項で次のような「勧告」が為されている。

20. 委員会は、裁判官、教職員、警察官、矯正施設職員、保護観察官および出入国管理官を対象として締約国が実施している研修活動を歓迎する。しかしながら委員会は、子どもおよび公衆一般、ならびに子どもとともにおよび子どものために働いている多くの専門家が条約およびそこに体現された権利基盤型アプローチ(the rights-based approach)について充分に理解していないことを、依然として懸念するものである。
21.

委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。

 (a)公衆一般および子どもを対象として、条約、およびとくに子どもが権利の主体であるということに関する意識啓発キャンペーンを強化すること、(b)子どもとともにおよび子どものために働いているすべての者、とくに教職員、裁判官、弁護士、議員、法執行官、公務員、自治体職員、子どもを対象とした施設および拘禁所で働く職員、心理学者を含む保健従事者、ならびにソーシャルワーカーを対象として、条約の原則および規定に関する体系的な教育および研修をひきつづき実施すること、(c)意識啓発キャンペーン、研修および教育プログラムが態度の変革、行動および子どもの取扱いに与えた影響を評価すること、(d)人権教育、およびとくに子どもの権利教育を学校カリキュラムに含めること。

 このように、日本政府は子どもや子どもをとりまく社会環境の大幅な改善に努めていないこと、人権教育が「思いやり」や特定の社会問題の理解に特化されている状況のもとで、「子ども」を正面に、子どもが権利の主体であることの理解を促す取り組みが致命的に欠如していることが、またも国連の委員会から厳しく指摘されたのである。

 今回、人権教育の指導方法等の在り方についての案は、国内行動計画で示した内容の範疇を抜け切れておらず、国連の懸念する内容にも踏み込まず論点が整理されてもいない。これでは、国際社会に通用する「人権教育」に成り得ないばかりか、教職員や児童生徒の人権をかえって歪める「指導」になりかねないものである。

 根本からの再検討を促したい。

 以  上 

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