
福岡県連 事務局長 植山 光朗
1 解同屈服の福岡県
部落解放同盟(解同)は2003年度の全国大会で「部落の実態調査の実施を自治体と国」にもとめ、その結果を「部落解放要求白書」にまとめ、新しい同和行政の施策を国や自治体に求めていく方針をきめた。
2004年度の大会で、この方針を「総合的実態調査の必要性と方法」として「部落の実態を肌を通して具体的に知っている者が、行政等の協力を得ながら創意工夫し、独自の実態調査を追求」するとした。 昨年、解同県連は県との2005年度予算折衝で、実態調査を確約させた。
そして今年2月7日付けの『解放新聞』で2005年度一般運動方針案を発表。 「総合的実態調査の必要性と方法」の章で「さらに今年度には、福岡県、三重県、和歌山県などが生活実態調査の実施を予定」とした。 新年度予算を審議する県議会開会(2月23日)の2週間前である。 県人権・同和対策局は同和地区生活実態調査事業費として2372万3000円の予算を計上した。
実態調査について福岡県は県下71の市町村を対象に「教育、就労、産業について、依然として較差があり、ある程度時間をかけて粘り強く較差解消に努めるべきであるとして、旧地域改善財政特別法対象地域の3000世帯を対象した。 県の理由は、1996年の地対協意見具申のオウム返しである。 96年から05年の10年間の問題解決の実態を無視した考えだ。 だから、調査の利用目的を問うと沈黙する。
事業目的がない施策の執行は、費用対効果からすれば全くの無駄金である。 目的は解同との約束の履行のみ。 地対協意見具申は行政の主体性の確立をきびしく指摘しているが、そこには何も学ばない。 解同屈服の福岡県の主体性放棄は、問題解決のお荷物で、県民にとって不幸だ。
2 なぜと市町村反発
県は今年1月31日、市町村人権・同和対策担当課長会議を招集し、「同和地区生活実態調査について」説明した。約50人が参加した。 市町村の課長たちから「なぜ今頃、急に調査が必要なのか」「調査対象地区、対象世帯をどうするのか」「平成5年の調査から時間が経過しており、そのときの職員もノウハウのある者がいない」「関係の運動団体に説明したのか。 運動団体の理解を得たのか」など疑問や質問が続出した。
しかし、県は、対象地区や対象世帯の選出について明確な説明はしなかった。 運動団体の理解についても説明できず「団体に説明した」とくりかえしただけと課長たちは不満をもらしていた。
3月8日の行橋市議会で全解連京築地協書記長の大川義彦議員が実態調査をとりあげて質問。 調査協力員の選定と調査対象地区、対象世帯についてただした。 行橋市の答弁は「県に照会する。 県に聞いてから説明する」と不得要領な答弁をくりかえした。
3 県議会に反対の請願
福岡人権連は昨年10月、県人権・同和対策局が解同から実態調査を約束させられたことをから、11月の予算協議で解同要求の実態調査の問題点を指摘し、調査の中止をもとめた。 同局の背戸調整課長は「調査については現段階では、はっきりしていない。 予算時期がくれば説明したい」と即答をさけた。
人権連は昨年12月、麻生県知事に「解同の特別対策・新たな同和行政推進を行政に迫る実態調査は解同組織の延命策。 これ以上の特別対策は、必要性、効率性、有効性などなく、部落問題解決にとって有害無益」として、応じるべきではないと申し入れた。
この3月7日には、藤田陽三県議会議長に「解同の新しい同和行政推進施策づくりに利用される平成17年度福岡県生活実態調査に反対」で請願、自民党、共産党など全会派を訪れ、趣旨を説明してまわった。
会派のなかには「解同の糾弾が県民の発言を封じ込んでいる。 議会の中にも解同への遠慮がある。なんとかしたい」と本音を語る議員も少なくなかった。
4 県議会質疑で歯止め
3月17日、県議会予算特別委員会で高瀬菜穂子議員(日本共産党)が、実態調査問題で県当局の姿勢をただした。 同議員は「実態調査を一貫して運動方針にしているのは解同だけ。 部落問題解決の現状からすれば、調査は対象地区、世帯、調査協力員の選考など問題が多すぎ、あらたな人権侵害が懸念されるが、反対している市町村に調査を強要するのか」と疑問点を指摘。 背戸課長は「調査は強要できない」と答えた。 同議員は、さらに「調査実施で県の方針(平成18年度特別対策終息)を変更するのか」とただした。 竹下政人局長は「(平成18年度特別対策終息の)方針は堅持して取り組んでまいる」と答弁した。
予算特のあと、県は私たち人権連に背戸課長は「調査は、市町村への協力のお願いだから、しなかったからといってペナルティーは考えていない」と説明。 竹下局長の答弁は、私たちに「新しい同和行政は考えていない」と説明していたことを議会で公式に述べたものである。