
愛知地域人権連合
事務局長 丹波琢磨
愛知県部落解放運動連合会は、昨年の11月20日に名古屋クラウンホテルで終結大会を開き、部落解放運動の発展的転換を図る立場から、地域社会における人権問題の解決を目的にした愛知地域人権連合を創立した。 愛解連は、部落解放同盟の分裂を契機に部落解放同盟正常化愛知県連合会を立ち上げ、その後の運動を経てちょうど35年の歴史に幕を閉じたことになる。 愛解連の歴史の特徴は、部落解放運動の本流の自覚による運動、国民融合論に立脚した運動、住民の諸要求の結集と実現の運動、運動の逆流とのたたかいと節度ある運動と組織の探求、要求実現と結合した組織建設の取り組みであった。この運動の営みは差別解消を目指す運動のあり方と方向性を示す貴重な歴史となった。 運動のあり方は、被害者意識を煽らず、問題解決の主体者として成長しようとする営みでもあった。
発展的転換への試みと営み
愛解連は、7年前から部落解放運動の発展的転換を想定してさまざまな試みを行い、これまでに一定の実績を蓄えてきた。 この実績とは、まず最初に愛解連が主導して特定非営利活動法人地域人権ゆうあい会を結成したことである。 この会は、愛解連と協力関係を持ちながらも、独自の目的と役割を担い活動を展開してきた。 これまでに会ではホームヘルバー2級の研修講座を7回、ガイドヘルパーの研修講座を3回開催し、約500人に及び卒業生を社会に送り出している。 また障害者支援費の説明会を開催したり、介護相談の取り組みを行ったりしている。
3年半前には訪問介護事業所を開設し、高齢者の介護事業を行い、さらに障害者の支援事業も手がけている。 職員は、専従4人、パート2人、登録20人の陣容となっている。甚目寺町を中心に在宅福祉の一翼を担い、介護問題、障害者問題に取り組み、社会的信用も得られるようになってきた。
愛解連と特定非営利活動法人地域人権ゆうあい会の2団体で愛知人権ネットを結成し、さまざまな事業活動も展開している。 代表的な事業では、毎年1回開催する「人権を映画で観る」上映会である。 この上映会の目的は、映画を通じて人権と民主主義をともに考え合い、人権の視点から映画をとらえ、映画文化の発展に寄与しようとするものである。 この上映会はすでに7回目を迎え人権に係わる邦画・洋画61本を上映している。 毎回延べ鑑賞者約1000人に達している。 毎年参加する常連組も増えており、上映会では映画評論家の山田和男さんや石子順さんが特別記念講演を行っている。
新たな取り組みに挑戦
最近の新たな取り組みとしては、「人権・愛・平和」をテーマにしたコンサートを開催していることである。 これまで2回開催し、2月には第3回目を開く予定になっている。 歌は歴史を色濃く反映し、民族、人民など抑圧、苦悩、叫び、闘争などを音符と詩で表現していることが少なくない。ここに着目したのがこの取り組みである。 コンサートを通じて癒しを分け合い、元気を分かち合う試みは徐々にその輪を広げている。
「介護と人権」をテーマにしたシンポジウムも2回開催した。 この取り組みは、介護事業所などの職員を主な対象にしたもので、専門的な追求が行われ多くの参加者から好評を得ており、規模は毎回100名くらいである。 昨年11月に行ったシンポジウムは「認知症高齢者の人権を支える地域づくり」がテーマで、参加者にはとても好評であった。
また、名古屋の中心地「栄」の地下鉄「久屋大通」駅のところにある市民ギャラリーを借りて「地域社会の人権問題」をテーマにしたパネル展を毎年開催している。 このパネル展は1週間にわたって開催し約1万人の人びとの目に触れる催しになっており、パネル展の内容を大判のパンフレットにして発行したりしている。
研究活動としては、「地域社会における人権」「人権擁護のあり方」「子どもの人権」「戦後の部落解放運動の歴史」などをテーマにした研究を行い、その成果を出版物として社会に還元している。
これら活動は自主的な取り組みとして、多くの県民の支持と共感を得るものとなっており、ここでの教訓は、動員形式の企画をやめ、関心のある人びとに参加を呼びかけ、人権思想の普及と人権の伸長を図り、これらの成果を県民に還元していることである。
今後の展望について
愛知地域人権連合は愛知県部落解放運動連合会を母体にしながら、昨年11月に発展的転換を図ったわけだが、今後この状況から脱して新たな地域人権の組織に成長させなければならないと考えており、そのためには組織論の検討と具体的な展望が必要不可欠となっている。
当面の主な活動として、(1)住民の生活要求を取り上げ、要求実現の運動を活発に展開する、(2)地域人権の視点から地域づくり、まちづくりの展望を打ち出す。(3)愛知人権ネットの事業活動の効用を生かし、組織建設と結合させていく・・・・・・ことである。 今日大きな組織に成長させるための社会的状況は成熟しており、国民と政治との矛盾も深刻化の一途をたどっている。 こうした情勢を踏まえた場合、組織メンバーの確信とエネルギーの結集がキーワードとなる。 そのためには地道な取り組みが大切である。 一人ひとりの成長を促す学習活動が組織に要請されている。
今年の目標としては、昨年9月に開催した「地域における人権問題と地域づくり」をテーマにした県民学習講座を手がかりに、地域づくりの担い手の養成を図り、新しい水準での住民運動の展開を図って行きたいと考えている。