
岡山県人権連
事務局長 中島純男
ベトナム友好協会からNPOみんなの会へ
昨年11月1日、日本ベトナム友好協会岡山支部の責任者である高橋さんからNPO地域人権みんなの会(以下、NPOみんなの会)事務所に突然電話があった。 内容は「県内在住のベトナム人が事情があって日本にひきつづき在留することが困難になった。一緒に相談にのってやってくれないか」という旨だった。11月3日、高橋さん宅に出向むいた。ほどなくベトナム人、トラン・ティ・トゥ・ハンさん(以下、ハンさん)が吹留義幸さんの車で到着。 吹留さんは大阪の日本ベトナム友好協会の会員で貿易関係の仕事をしてきた人と自己紹介された。 現在、岡山の県北で生活されている。 ハンさんのいわゆる身元引受人でもある。ハンさんは30歳代の女性。 ベトナムで結婚したが離婚、ベトナムに一子がいるという。4年ほど前に岡山に来て、日本人と結婚したが、いうに言えない事情があって離婚せざるを得ない、現在は縫製の仕事についている、バイクで片道15キロメートルほどの距離を通勤している、などと事情を話された(彼女のわりと語尾がはっきりした日本語と吹留さんの補足による)。
現在の入国管理法では、日本人と結婚していた外国人が離婚すると直ちに日本から退去しなくてはならない、となっている。 彼女がひきつづき日本に住みたいと願っている、これをどうしたら入国管理局が認めてくれるのか、この課題について話し合われた。
実情を聞いている間に、高橋さんの奥さんがベトナム料理「フォー」を用意してくれた。 ハンさんが「うわー」という感嘆の声とともにほんとうにうれしいという笑顔をみせた。 私もベトナムを訪れて以来20数年ぶりにこのご馳走とベトナムコーヒーをいただいた。高橋ご夫妻の心配りがなんともうれしかった。
はじめて入国管理局へ
11月17日、岡山市下石井の第2合同庁舎内にある広島入国管理局岡山出長所に出向いた。 吹留さん、高橋さん、NPOみんなの会の関連で「在留資格の延長をお願いします」という趣旨の陳情書を持参した。 NPOみんなの会は、岡山県人権連、岡山県アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会と共同で署名を集めた。 その動きの反映で岡山県人権連の石岡議長も当日同行してくれた。
管理局出張所では頻繁に外国人が出入りしていた。 在留資格変更許可申請書をそれぞれが提出しているようだ。 室ではカウンター越しに係員が対応し、ほんの数分でほとんどの外国人は退室していく。 後で聞くと、在留資格変更にそんなに問題がない人々という。
ハンさんの場合、テーブルを挟んだ形で所長さんが対応し、当事者のハンさん、身元引受人の吹留さんだけでなく随行した形の私たちにも話し合う場を提供された。 あわせて228名分の署名を携えて総勢6人が出向いた反映なのか、通常の姿勢なのか、その判断はできないが、所長さんはハンさんの陳情書に目を通しながら、この分野の素人の私たちに懇切な説明をされた。 ハンさんのプライバシーに気遣いながらも、肝心のその点が文章化されていないとだめですよ、ハンさんの場合は定住資格をもとめる立場であること、特例事項にしか当たらないこと、ハンさん本人がそのことを理解して対応することが大切です、などと話されるその対応は、予断を与えないとする立場を貫きながら、情報はすべて伝えます、という姿勢であった。 人間的にも好感がもてたし、人権にかかわる内容に携わる公務員はプロとしてこうでなくては、とも思った。
みんなの願いが実現
ハンさんは改めて陳情書を提出することとなった。 署名は韓国・民団の方々にもお願いしてさらに70筆ほど所長さん宛てに郵送した。 ベトナムで子どもとともに彼女の生活がおくれることが一般的なことだと思われるが、日本で生活したいという彼女の気持ちには複雑で重いものがある。 そんな願いぐらいきいてやってくれても良いではないか、というレベルで高橋さんや私たちは動いた。 高橋さんがNPOみんなの会に電話をされたのは、NPOみんなの会が2002年11月に開いた「在日外国人の在留資格と支援の実例」の学習懇談会に参加されていたからである。 その高橋さんを頼った吹留さんは前述したように日本ベトナム友好協会の会員である。 その岡山支部は大きな組織でもないが岡山に在住しているベトナム人同士も含めた交流のためにとりくまれている。
全解連から発展的転換をはたした人権連組織にも思いがつながる。 個々人から言えば毎日のようにさまざまな課題が生まれているのが今日の地域社会だと思う。 そのことにかかわり高くアンテナをはりながら、問題の解決に向けて多くの人々や組織と解決をはかる組織づくりが必要だと今回の事例で改めて強く感じた。 入国管理局のあの所長さんに限らず、個々の課題にかかわる専門家の知識と力量をその組織が吸引できたらなおさらではないか、とも。
今年2月2日、ハンさん、吹留さん、高橋さんとそろって入国管理局へ再び出向いた。 書類の申請を行って定住資格が得られた。 ハンさんの顔がうれしい思いがあふれるように輝いていた。 所長さんは不在だったが、担当職員にぜひ所長さんにお礼をということで人権連の名刺を預けてきた。 帰りに人権連の事務所がある岡山県民主会館にハンさんたちはお礼を兼ねて立ち寄り、署名してくれた人々とともに記念撮影を行った。
その後、ハンさんとベトナム友好協会岡山支部の連名のお礼の葉書が署名をしてくれた方々に届いている。 それがまた喜びを膨らませ、連帯を強めさせてくれている。