
和歌山県地域人権運動連合会
事務局長 橋本 明彦
はじめに
和歌山県地域人権運動連合会(以下、「和人連」)が、部落解放運動から地域人権運動に発展的転換をして早3年が経過。 和人連は、「教育や福祉の充実をはかり、人権と民主主義、住民自治が尊ばれる人間らしい生活ができる地域社会を実現する」ことを目的の一つとしています。
昨年10月の対県要望会では、南紀高校周参見(すさみ)分校(以下、「周参見分校」)を存続させる要望が和人連すさみ支部から出され、県教育委員会(以下、「県教委」)に強く存続を求めてきました。
県教委の県立高校再編整備計画
県教委は、04年8月末「県立高等学校再編整備計画」(案)を公表し、周参見分校は平成18年に募集停止になることが明らかになりました。
地元すさみ町では、周参見分校OB会始め存続に向けての取り組みが始まり、多くの存続を求める署名を県知事・県教育長に提出し、陳情活動などが行われてきました。
そして和人連すさみ支部と分校OB会が中心になり、町内45団体・個人が結集する「南紀高校周参見分校を存続させる会」(以下、「存続させる会」)を結成させました。
和人連すさみ支部は、分校問題の解決に、「部落解放運動が培ってきた住民要求実現、人権と民主主義確立の経験と教訓」を生かし、「地域社会に存在する多様な社会的課題の解決をめざす、住民の自主的恒常的な集団運動」のリーダーとして主体的に活動を展開しています。
自己実現をはかる分校の存在
周参見分校は全校生徒25名(06年1月現在)の小さな学校です。 約8割が、全日制高校からの編入学です。
学びたいことが自由に学べる学校で、厳しい校則や制服はなく、画一的な指導はせず個性を尊重しています。 しかし、人間の尊厳を重んじる教育は徹底しています。 家庭事情や他の高校の就学が困難な生徒も随時受け入れています。
これまで周参見分校には、勉強が分からなくなった人、友人関係に悩み不登校や引きこもっていた人、いじめや虐待を受け、生きる希望をなくした人など、多くの生徒が分校で癒され、学び生きる力を回復し、それぞれの目標に向かっています。
県教委との協議
「存続させる会」は、これまで県教委と地元協議会を3回持ちました。 私たちは小さな学校であっても分校の役割は大きく、教育の論理で、県民の声に応えていく教育行政の姿勢を訴えてきました。
県教委は私たちとの協議の中で、地元の実情も聞き入れ、「再編整備計画」(案)の成案は、18年に募集停止から「平成18・19年度の生徒募集を実施。 平成18年度以降、2ヵ年連続して入学者数が募集定員の20%に満たない場合は募集停止」ということなりました。
今春の結果について
06年度公立高校一般入学が終わり、第1、2次試験の結果、周参見分校は9名の生徒が入学(転入学を含めると11名)。 周参見分校は、県教委が示した基準をまずはクリアーしたことになり、存続へ大きな一歩となりました。
1次合格発表があった3月22日、県連本部の橋本忠巳会長は、次のような談話を発表しました。
本日発表があった南紀高校周参見分校の合格者が、募集定員の20%、6人以上あったことは、「存続させる会」の運動とそれを支援された、すさみ町及びすさみ町議会関係者の成果と言える。
この結果を受けて、今後も「存続させる会」と連携しながら粘り強い運動を展開していきたい。
尚、県教委が示した募集定員の20%(高校卒業資格を有しない者)は、転入学生も含め緩和措置をすべきであり、県立高校の適正配置の上からも周参見分校の果たしてきた役割を評価すべきだ。
周参見分校で学ぶ意義
周参見分校で学んだ卒業生は、次のような感想を述べています。
中学時代は勉強が嫌いで学校には行かず、ぶらぶらし遊んでばかりいた。 受験に失敗して途方に暮れていた僕を、救ってくれたのは周参見分校だった。 この入学がキッカケで、僕の人生の歯車が動き始めた。
分校は少人数なのでみんな仲良くなっていった。 不登校だった生徒も分校に入学すると、癒され登校するようになっていった。 授業も、分からないことも質問しやすく、先生方はすぐに答えて解決してくれた。
だから、勉強が楽しくなっていった。 僕は全力で僕たちの生活や勉強をサポートしてくれた学校が好きになっていった。
僕は大学に進学する目標を見つけることができ、志望校に合格することができた。 「人生は思い立った時がスタート」と言って、大学受験を進めてくださったあの先生の言葉が今も忘れられない。 僕は周参見分校に入学して本当によかったと思う。
おわりに
05年2月15日策定の和歌山県人権教育基本方針は、「すべての人の尊重が守られ、自己実現が図られる」ことが謳われています。 この精神に基づいて、例え小さな分校であろうともその中で育っていく子どもたちに支援を寄せていくことが、教育行政の使命です。
和人連は、この周参見分校の存続運動を地域人権運動として地元の「存続させる会」の皆さん方や広範な県民の支援を得ながら、取り組みを推進していきたいと考えています。