全国人権連 > 政策・基本見解 > 全国地域人権運動総連合創立の意義
| 一、「全国地域人権運動総連合」 創立の意義 1、地域が矛盾の集中点 いま地域社会は生活、仕事、教育、福祉、環境など、住民生活にかかわる全分野で大きな困難に直面し、矛盾の集中点となっています。困難の打開を願う人びとの間で、階級・階層の縦組織とともに地域住民を対象にした横組織への期待が高まっています。地域社会が矛盾の集中点になっている情勢から、多様な課題に柔軟な対応ができる全国的な地域住民運動組織が求められいます。人権の視点から地域住民運動をとらえた新たな運動体が時代の要請になっています。 2、地域における人権問題を取り上げる組織 地域社会には多様な人権問題が存在しています。これを大きく分類すると、(1)地域共通の人権課題として、・自然環境、・ゴミ、・公害、・農業、・地域経済、・交通、・就労、・食生活、・福祉、・介護、・教育、・医療、・災害、・平和、・安全、・個人情報、・市民的自由、・余暇、・文化、・芸術などの諸課題があります。(2)個別主体の人権課題として、・勤労者、・低所得者、・女性、・子ども、・高齢者、・青少年、・障害者、・外国人、・ハンセン病元患者、・アイヌ、・ホームレスなどの諸課題があります。 二、情勢の特徴 重武装した自衛隊を戦闘地域へ派兵することは戦後はじめてのことです。日本の軍隊が他国民を殺しかねないこと、戦死者を日本国民の中から戦後初めて出しかねないこと、いずれをとっても憲法を蹂躙する、この許し難い自衛隊の派兵に反対することは国民一人ひとりに問われています。 憲法改悪の動きと並行して、「専守防衛」を建前としてきた自衛隊の役割を大転換させ、日米安保体制を「地球規模の日米関係」として強化し、自衛隊の役割と機能を「地球規模」に拡大しようという動きが急速に強まっています。 自民・公明の与党ばかりか、野党第一党の民主党までもが競って改憲をねらっている状況のもとで、憲法改悪反対の一点で国民的共同を構築することが急務となっています。この大闘争は日本の民主勢力の明日を切り開く重要な意義と展望を与えるものです。 巨額の国民負担増、年金大改悪、消費税増税のたくらみを許さず、国民生活を守るたたかいが大切です。2006年度までに七兆円の負担増が計画され、医療、年金、介護保険、雇用保険など社会保障での負担増と酒税・たばこ税増税、所得税・住民税の増税、消費税の免税点の引き下げなど庶民増税がもくまれています。年金制度の空前の大改悪が強行されようとしています。消費税増税も現実の政治日程にのせられつつあります。 日本社会がモラル、道義の面でも危機を深め、最も重大で深刻な影響を子ども達に与え、これを克服するための努力と運動が切実な課題になっています。そのためには、この根本となっている悪政による国民生活のゆがみをただすこと、社会が独自に子どもの成長を支える社会的な規範と運動を築くことです。その立場から、「人格の完成」をうたった教育基本法の改悪を許さない運動を強める必要があります。 同じ枠内での「政権交代」「二大政党制」をもくろむ財界主導の国家づくりを許さず、悪政の根源である自民党政治を打ち破るために、広範な人びととの共同と連帯を構築するために大きな力を注がなければなりません。 三、どんな変化が地域社会で起きているか 1、圧倒的労働者化の進展と都市・農村の中間層の激減 ・ここ十年余りの階級構成の大きな特徴の一つに自営業者層の激減があります。1990年と2000年の比較で、農林漁業従事者27.0%減、都市型自営業者11.8%減、自営業者全体で16.6%、209万人減で構成比16.0%、1054万人です。 ・この結果、賃労働で生活する労働者が全体の八割近くになりました。社会の圧倒的多数が労働者階級です。1990年と2000年の比較で、10.9%増、518万人増で構成比79.6%、5261万人です。 ・この労働者階級の内訳をみてみると、失業者や不安定就労者が大幅に増加していることです。完全失業者は、1990年と2000年の比較で、66.6%増、128万人増で構成比が4.8%です。また不安定雇用者は4人に1人の割合になっています。2000年時点で「パート・アルバイト」1131万人、雇用者に占める比率22.5%、「派遣・その他」182万人、3.6%、計1313万人です。いわゆる「非正規雇用労働者」は26.2%となっています。 2、少子高齢社会の出現 高齢者の現状は、2002年、人口1億2744万人のうち65歳以上が2363万人、人口比で18.5%を占めています。これが将来3人に1人が高齢者になります。高齢化率は2015年で26.0%、2050年で35.7%となります。 高齢世帯も増加します。高齢世帯は2000年が23.8%であったものが、2020年には35.2%となります。独り暮らし高齢者も増加します。独り暮らし高齢者は、2000年で男性8.0%、女性17.9%です。これが2020年には男性が12.4%、女性18.9%となります。 出生率の低下、晩婚化、非婚化による少子化が進行しています。2001年には、合計出生率が1.33であったのが、2009年にはさらに1.31に落ち込みます。生涯未婚率は、男性12.57%、女性5.82%です。初婚年齢は、男性が30.81歳、女性28.58歳です。 3、地域での貧困層の増大 生活保護の受給者数が昨年(2003年)2月時点で128万1000人(前年同月比8.4%増)となり、人口に占める受給者の割合(保護率)が1.0%に達しました。不況や高齢化の影響が大きく反映しています。被保護世帯数は89万6000世帯で、1950年の制度発足以来、最多を更新しました。この内訳は、高齢者世帯45.9%、母子世帯8.8%、傷病・障害者世帯36.7%となっています。 国民健康保険料(税)を払えない滞納世帯が約455万世帯に達しました。加入世帯(約2373万世帯)の19.2%にあたります。1年前より約43万世帯も増えました。小泉「改革」による不況で失業や倒産が深刻になる中、高すぎる国保料(税)を払えない人が増え続けています。 国民年金は、自営業者や20歳以上の学生、無職の人などが加入しています。加入者は2237万人(2002年度末)。保険料は収入に関係なく一律で、月額1万3300百円の定額となっています。2002年度の保険料の未納者は37.2%にのぼりました。保険料を全額免除する対象者の基準を厳しくしたことや、長引く不況やリストラなどによる収入減で高い保険料が払えない人が増えたことが主な要因です。調査では、保険料を払わない理由として「保険料が高く経済的に支払うのが困難」が64.5%を占めています。 4、小泉政権の構造改革による切り捨て、格差の拡大 小泉政権は、これまでの高度経済成長政策による輸出主導型、公共事業主導型の経済政策から大企業による工場の海外移転による多国籍企業化に対応した政財政策への本格的な展開を試みています。今日、大企業の多国籍企業化の進行は、アジアで現地生産が売上高で2000年度が18兆8499億円に対して1990年度の2.6倍強となり、現地従業員数も1999年度には約160万8000人と前年比18.4%も増加しています。この結果、国内では産業空洞化が著しく進み、長期不況とも連動して大企業による首切りとリストラが横行し、中小零細企業の廃業と倒産が相次ぎ、貧富の格差が大きく拡大しています。しかも企業城下町での商店街の崩壊のみならず、不況の影響をもろに受けて地域経済の崩壊が著しく進行しました。 5、情報技術「IT」の進展と国民監視体制 情報技術「IT」の進展は、行政上の情報の集中、通信傍受による個人情報の権力機構への集中、そして住民の一元管理・集中管理が出現してきています。この情報技術の進展は、労働日の減少と雇用の確保、労働時間の短縮と余暇の増大の可能性をもっているにもかかわらず、労使の力関係から不安定雇用者の増大をまねく事態となっています。多国籍企業化にともなう国内での産業空洞化は、国民の生活不安を激化させ、社会の混乱による病理現象の広まりとも相まって、権力機関の国民監視・管理への思惑を強めさせています。 こうした事態を反映させたのが、言論統制としての個人情報保護法案、人権擁護法案、青少年有害社会環境基本法案の三法案です。しかも住民基本台帳ネットワークの出現による国民総背番号制への進行、「人権」の名を巧みの使い、人権抑圧に活用しようとする動きも出ています。 四、平和に安心して人間らしい生活が営める地域社会の実現 1、憲法改悪に反対し、地域権利憲章づくり ・憲法9条の擁護をはじめ憲法「改正」の執拗な策動を許さず、地域を基礎に国民との共同の輪を広げ、イラクへの自衛隊の派兵に反対し、平和憲法の擁護の運動を各地で起こしていきます。 ・地域を基礎に憲法学習を推し進め、それぞれの地域の人権問題を明らかにしていきます。 ・地域住民運動の展開と地域づくりの実践を通じて地域権利憲章づくりを本格化させます。 2、諸要求の実現をはかる 住民のさまざまな要求を結集し、要求実現を地域住民運動として繰り広げます。 ・地域経済の疲弊を許さず、活力あるまちづくりと就労の機会の確保をめざします。 ・階層間の格差の拡大、貧富の格差の拡大に反対し、最低賃金制の引き上げなどで誰もが人間らしい生活を営める社会の実現をめざします。 ・国民健康保険や介護保険の負担増を許さず、免除・軽減措置などの充実をはかります。 ・女性や障害児・者に対する差別を許さず、同権・平等の実現をめざします。 ・いじめや不登校をなくし、教育基本法の改悪を許さず、教育費負担の軽減を図り、教育条件の充実をめざします。 ・子どもへの虐待などをなくし、子どもの権利条約の実現を図り、子ども達が地域でのびのびと育つ地域環境づくりをめざします。 ・交通弱者の権利を守るために、巡回バスなどの実現で交通権の確立をめざします。 ・市町村合併の押しつけを許さず、住民が主人公の住民自治をめざします。 ・日本政府の怠慢に人間の尊厳をかけて立ち上がった中国残留孤児の国賠訴訟のたたかいを支援します。 ・ハンセン病問題での差別と偏見を克服する活動を行います。 3、非営利協同組織や民主的な組織との連携 非営利協同組織や民主的な組織との連携を押し進めます。 ・NPO、協同組合、労働組合、民主団体などとの連携をはかります。 ・介護や子育てなどでNPOの立ち上げを援助します。 ・住民相互の助け合いを押し進め、住民ネットワークづくりをめざします。 4、自治会の自主的運営と地域づくりの展開 自治会の自主的運営を勝ち取り、住民が主人公の地域づくりをめざします。 ・住民が主人公の立場から自治会を見直し、住民参加の民主的運営をめざします。 ・生活相談、地域のネットワーク、地域づくりのセンターとしての「地域づくりセンター」を全国各地で設置していきます。 ・地域で生活する弁護士、医師、看護士、教師、保育士などの専門職の協力を得て、地域づくりビジョンの作成を図ります。 ・差別による住民間の分離、分断を許さず、差別の垣根を乗り越え、市民的連帯を培い、21世紀にふさわしい地域社会の実現をめざします。 5、「人権」の名による監視社会づくりや自由の制限や暴力・恫喝を許さず、真の人権救済制度の確立をめざす 「人権」の名による監視社会づくりを許さず、真の人権救済制度の確立をめざします。国連の本来の目的の実現に努力します。 ・「人権」の名による「解同」などの恫喝や暴力を許さず、平和で安全な地域づくりをめざします。 ・住民を教化の対象に位置づけ、官製「人権」や排外主義的「差別」論の押しつけと国民の内心に踏み込む行政主導の「人権啓発・教育」をやめさせ、地域での住民運動や学習活動を前進させます。 ・「人権」の名による住民の自由の制限や監視社会のもくろみを許さず、住民の自由を擁護します。 ・廃案になった「人権擁護法案」の復活を許さず、真に国民の人権を救済する制度の確立をめざします。 ・国連は、2度に及ぶ戦争の惨禍から教訓を引き出し、何よりも人類の平和を確保し、その基盤となる人権と自由の実現、経済、社会、文化、人道の面での国際協力の推進を重要な目的にしています。この目的をはかるために、世界人権宣言をはじめさまざまな人権にかかわる宣言や条約などを制定し、この到達点を点検する具体的な取り組みを行っています。しかし、この国連も世界の権力政治の現実から離れて存在できず、この理念をゆがめる決定や行動をしたこともあります。人権をめぐる問題でも一部の勢力の恣意的な主張を取り入れた決定や勧告を行う場合もありました。このような大国のよこしまな主張や一部の勢力の恣意的な主張に対して、私たちはその誤りを率直に国際舞台の場で指摘し、国連本来の理念の実現に努力していくものです。 6、過渡期の課題として部落問題解決への逆流を許さない課題を引き続き重視する ・行政上の特別扱いをなくす (a)同和対策は、不可避的に同和地区と周辺地区とを分離・分断する性格をもっています。生活上の格差の解消が実現したもとで同和対策を一日も早く終結させる必要があります。 (b)こうした立場から国政レベルでの同和対策の終結と連動させ、都府県・市町村での同和対策の終結を具体的に実現させます。 (c)「解同」との癒着、行政特権、利権構造などにみられる不公正・乱脈な同和行政に一日も早く終止符を打ちます。 ・一般対策の充実と民主的地域づくり (a)「部落」でみられる若干の格差の問題は、「部落」を含めた地域社会全体を視野に入れた地域住民運動の展開により、旧身分に関わりなく一般対策として全体の底上げと生活困難層への手だてで解決していきます。 (b)「部落」内外の社会的交流を引続き押し進め、民主的地域づくりの活動を通じて人間的な相互理解を広げ深め合います。 ・「解同」問題の解決 「解同」問題の解決とは、(a)不公正・乱脈な同和対策に終止符を打つこと、(b)自治体と癒着した「解同」の利権構造を解体させること、(c)部落排外主義にもとづく「解同」の「確認・糾弾行為」を社会的に排除すること、(d)「解同」による地域支配を排し、民主的な住民自治を確立すること、です。「解同」問題を引き続き社会的に克服していく運動が重要です。 ・解放の展望を示せない「解同」理論 「解同」は、部落差別の現実を恣意的に過大に評価し、部落排外主義の理論と行動を振りかざし、部落問題解決の流れに逆流の役割を果たしています。「解同」理論は、部落問題解決の展望を遠い彼方へ追いやり、解放への展望が具体的に示せないところに特徴があります。「解同」は、全解連の発展的転換を「解散」と意識的にゆがめ、この運動論における理論的な発展と展望の方向性に論点のすり替えで対応しています。部落問題解決への逆流となる誤った「解同」理論への社会的克服に努めます。 五、要求実現の方法と取り組み 1、旺盛な宣伝活動と生活相談活動の展開 生活相談活動は、広範な住民を対象にし、そのための宣伝活動を旺盛に行い、専門家の協力も得ながら相談者の困りごとに適切に対応し、多くの住民から信頼と安心の期待を得られるものにしていきます。 ・定期的に生活相談活動を繰り広げます。 ・さまざまな制度に熟達し、暮らし、福祉、教育、経営などの活用できる制度を大いに紹介します。 ・大胆に全戸ビラ配布などを行い、日常的に組織の宣伝と普及を行います。 ・生活相談者の実務研修会を計画し、制度の習得と実務能力の向上をはかります。 2、自治体や政府への交渉を積極的に取り組もう 住民の願いや要求を実現するには、広範な住民の支持と共感を得る立場を堅持し、その実現を求める要求内容で一致を勝ち取り、共同の輪を広げながら自治体・政府などと積極的に交渉を行います。 ・練り上げた要求、切実な要求者の組織化を行います。 ・一年に一度すべての自治体で交渉や懇談、申し入れ活動を行います。 ・全国各地の要求を持ち寄り政府各省との交渉を行います。 六、組織運営のあり方と目標 1、組織の取り組みでの3つの原則 組織活動の基本として、3つの原則を堅持して取り組みを押し進めます。 ・中央集権型の組織でなく、地域に根ざした地域重視型の組織にします。 ・構成員の多様性と統一性を包含した統一的な運営をはかります。 ・会員が主人公の運営を貫き、日常的に共同と連帯を培います。 2、組織づくりの目標と取り組み 組織づくりの目標と取り組みの内容は、「数こそ力」「縦続こそ力」「追求こそ力」の三3つの「力」を発揮して、強大な「全国地域人権運動総連合」をつくりだし、民主的な地域づくりを押し進めます。 組織活動の目標と取り組みは、・全国すべての都道府県、市町村に組織をつくる、・一日も早く会員と機関紙を二倍化する、・定期的に会費、機関紙誌料を集金し、安定した財政を確立する、・生活相談活動を軸にして会員拡大をはかる、・活動の中心に女性と青年を大胆に抜てきする、・強大なたすけあい共済をつくる、ことです。 3、活動計画と要求書作成 組織づくりは地域組織の目標と計画からはじまります。上からの目標と計画の押しつけでなく、自らの討論を通じて練り上げた目標と計画こそ、運動を自主的に前進させる土台となります。要求書づくりは人間らしい生活が営める地域を実現する原動力です。 ・各組織は自らの組織目標とそれを実現する計画づくりを行います。 ・アンケートなどのさまざまな形態による広範な住民から要求の結集を行い、これを整理し実現の方法を討論し、地域の要求マップづくりを行います。 ・地域組織の目標と計画を実現していく上で、本部が作成した「全国地域人権運動総連合」紹介リーフレートを積極的に活用します。 4、各機関組織の運営と活動 ・常任幹事会の組織と運営のあり方 常任幹事会は、大会決定及び幹事会決定にもとづき、2ヶ月に1回開催し、出席率を高め、情勢分析、全国的運動課題、年間計画作成、組織建設、全国規模集会、本部運営などに当たります。 ・幹事会の組織と運営のあり方 幹事会は、少なくとも1年に2回開催し、出席率を高め、必要な諸課題に対する方針を討議し、決定します。 ・本部事務所の運営 本部事務所は、運動の全国センターの役割と任務を担い、必要な諸課題を遂行します。また合理的な運営を実現するために諸規定を作成します。 ・機関紙誌の編集と発行 機関紙誌の編集は「全国地域人権運動総連合」創設を契機に抜本的改革を行います。抜本的改革の内容は、地域社会と人権問題を基軸にした記事構成への見直し、会員がたくさん登場する生き生きとした紙面づくり、生活に役立つ制度紹介と情報提供、編集体制の充実と通信員の組織化、大きな活字の使用と写真やイラストで視覚に訴える、ことです。 ・本部開催の行事のあり方 新たに人権問題全国研究集会を毎年1回開催します。その内容は新たな役員体制のもとで具体化をはかります。また、学習・交流の場として全国地域住民運動交流集会を開催し、そこでの運動の経験と教訓を広げます。 |
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