| その1)虫愛ずる姫君
平安時代の「堤中納言物語」に納められた一編に、「虫愛ずる姫君」があることをご存知の方も多いと思います。
「蝶が美しいと言うのに、なぜ、毛虫をきらうのか。その毛虫こそが美しい蝶になるというのに」といって、毛虫を手に這わせたり、カゴにいれてサナギから蝶になるのを見たりするという、一風変わった女性を、ややおもしろがりながらも、どこかそんな奔放さを応援しているような一話となっています。袿(うちかけ)も、キリギリスをあしらった緑色でもので、当時の「女性らしい色模様」とは違っていたようです。男の子たちがはしゃぎながらたくさんの毛虫を追い回しているのを見て、「その虫をここにおいて見せてちょうだい」と扇を差し出したので、周囲の人はあきれたというエピソードにも、ほほえましさを感じます。
宮崎駿原作の大ヒットとなったアニメ、風の谷のナウシカのヒロイン、ナウシカがこの「虫愛ずる姫君」をモデルにしていることも有名です。お化粧もせず、眉も抜かず、毛虫が好きな風変わりな女性を描いたこの「虫愛ずる・・」は、結婚や財産にまったく頓着しない、自然の生き物たちの姿に魅せられて自らの生を省みるという、新しい女性像を示したと言え、宮崎監督に何か強いインパクトを与えたのかもしれません。
それにしても、いまだに「女性は虫嫌いで当たり前」という考えが半ば常識のようになっていないでしょうか? そんなときは、ナウシカと虫たちの心温まるやりとりを思い浮かべてみましょう。はい回り、飛び回るたくさんの虫たちに魅せられた子どもたちの中に、女の子が含まれていたとしても、ゆめゆめ「まあ、なんて事!」と顔をしかめることのないよう、心したいものです。
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